Save132 アンラは元から期待していない
クレアシオン達にNPCの移動を頼んでから一晩が過ぎた。朝食を全員で摂った俺達は、久しぶりの攻略会議を開くことにした。
議題は、「全てのプレイヤーを同じ場所に所属させるか」だ。
「あの、ふと思ったのですが、冒険者ギルドを取り込むっていうのはできないんですか?」
初めに発言したのはミライだ。小さく手を挙げ、俺達を見回しながら意見を言う。
「できないことはないだろうし、それが一番手っ取り早いだろうが、俺はやめた方が良いと思う」
「なんでですか?」
確かに、冒険者ギルドを取り込んだギルドを作れば、自動的に冒険者登録をしているプレイヤー全てが同じギルドに所属していることになる。だが、ここに俺の持論を入れると簡単には採用できない。
そして、その持論というのが、
「俺は、神帝が冒険者ギルドギルドマスターだと思ってる。だから冒険者ギルドを取り込むことはもっと慎重に考えた方が良い。少なくとも、手っ取り早いからというだけの理由で行動してもしまえば、なにか良くないことが起こるはずだ」
というものだ。俺がこう思った理由は複数あるが、まぁ簡単に言うと勘だ。でもそれで納得するとは思っていないので、それっぽい理由を後付けしよう。
「ミカエル達から報告された神殿の場所、覚えてるか?」
「大体は覚えてるわよ」
「……ばっちり」
「まったく覚えてないよ」
流石カオリとサクラと言ったところか。アンラは元から期待していない。
「その神殿の場所を記した地図がこれだ」
そう言って、空中に一枚のウィンドウを表示させる。それは【始まりの街】を中心とした神殿それぞれの位置に目印を付けた地図だ。
「これから何かわかることはあるか?」
神殿はそれぞれ【始まりの街】から見て北、北北東、東北東、東、東南東、南南東、南、南南西、西南西、西、西北西、北北西に位置している。
「……あっ」
「なるほどそう言うことね。それにしてもキラ、良く気付いたわね?」
「「わかりました!」」
「流石にこれはわかります」
「ここまでヒントだされてわからない人なんていないでしょ」
「えと、あの……キラ君、わからないので教えてください」
サクラ、カオリ、ブルー、レッド、モミジ、シエルが答えにたどり着く中、ミライはよくわからないようで、俺に答えを求めてきた。アンラはうんうん唸っている。そろそろ湯気が出てくるかもしれない。
「アンラのために説明すると」
「ミライさんもわかってなかったよ?」
「この神殿がある場所を隣同士で結ぶんだ。そしてできた十二角形の対角線を結ぶと、一つの交点が生まれる。それで、その交点の場所を見ると【始まりの街】だってことだよ」
「私のツッコミは無視ですかそうですか……でも待って? 【始まりの街】と冒険者ギルドギルドマスターがどう関わってくるのさ?」
これは上から見た地図だからわからないから、もう少し拡大した地図を表示する。すると今度は全員わかったようで「なるほど」というような空気になった。
「この交点が冒険者ギルドにあるってことね」
そう、対角線を引いたときにできる交点の位置が、地図で確認すると丁度冒険者ギルドの中心なのだ。そこから、俺はこのことはゲームマスターからのメッセージだと受け取った。
そして、俺のこの考えが全て合っていると仮定したとき、一番怪しいのがギルドマスターになる。
【始まりの街】にあるギルドが本部と言う訳ではないが、一番巨大な建物を持っている冒険者ギルドがあるのは【始まりの街】のギルドなので、俺はここにいると思った。
「さて、ここまでは俺の持論を説明したが、したからと言って冒険者ギルドを取り込まないと決まったわけではない。どうする? 取り込むか、取り込まないか」
慎重に動けばいいだけで、別に取り込んではいけない訳ではない。
時間はまだある。タイムリミットはクレアシオン達がNPCの移動を終わらせるまで。クレアシオン達は一週間から二週間はかかると言っていた。それまでにどうするのかを決めればいいのだ。
まぁ、早めに動きたいからすぐ決まるに越したことはないが。
「私は、取り込んだ方が良いと思います」
「私もそう思うわ。いくら危険とはいえ、取り込まない方が時間がかかるもの」
「……同じく」
「慎重に行動すればいいだけならそんなに難しくないし、取り込んだ方が良いよ絶対」
「「私も取り込んだ方が良いと思います!」」
「反論はないので、ボクも賛成」
「私も賛成です」
全員が取り込むことに賛成の意を示し、一応今日の攻略会議は終了になった。
具体的な取り込み方の話し合いは、翌日に俺達とカムイ、サナとドーターで行うことにする。そこから各所属ギルドに通達し、俺達は実行に移す、という流れだ。
問題なのは、どうやれば取り込めるのかということだ。Gで解決できるならばいいのだが、そう簡単にはいかない気がする。そこまで甘い話であれば嬉しいのだが……。
「さて、今日も訓練を始めようか」
話し合いが終わったので、俺達は訓練することになった。というか俺が言いだした。今日はカムイ達の訓練がおやすみという名の自習なので、俺達はぶっちゃけ暇なのだ。
「わかってると思うが、【制限】使えよ」
そう言って、俺はブルーレッド特製木剣を持って庭に出た。




