Save127 殺さない、ですよね……？
龍神を外に連れ出してから一晩が経った。
龍神は、一度空を飛んでいきたいと言うので、絶対に魔物以外に攻撃しないでと注意してから許可を出した。今頃はどこに居るのだろうか……
俺達は家に籠り、これからのことを大まかに話し合っている。
「今現在の目標はカムイ君たちのレベル上げと【種族転生】ですが、それが終わったらどうするんですか？」
「その後はプレイヤーの収集状況を見てからじゃないとわからないな。まぁでも、とんとん拍子に話が進むならすぐに神帝の所に向かうかな」
「もし集まって無かったら？」
「その時はその時に考える。今考えてるところだと、各ギルドのギルドマスターを招集して、全員で一つの巨大なギルドを作るって感じだな」
「……ソロ」
「そうなんだよ。ソロでやってるプレイヤーはどうしても所属できないんだよなぁ」
俺の考えに次々と質問が飛んでくる。それらは全て俺の予想の範疇なので、てきぱきとよどみなく答えていく。
「それならもういっそのこと全神を倒すってのはどうですか！」
「それができればいいんだが、果たしてカムイ達にクレアシオンや世界神、戦神を倒すことができるのかってことが問題だし、誰も殺したくない俺らにとっては最もリスクのあるやり方だから却下だな。てか何故おまえがおこに居る」
誰がシエルをうちに入れた？ 少なくとも俺達ではないはずだ。今まで外にいて【転移】で帰ってきたのだから。そこにシエルの入り込む余地はない。
そしてアンラ達でもないだろう。だってあいつらは今ここに居ないし、俺達よりも先にここと発ったのだ。そしてその後に誰かが入ってきた気配はなかった。
うん、改めて整理してみてもこいつがいつどこからどうやって侵入したかわからないぞ？
「いや、昨日たまたまここら辺を通っていたら丁度本を抱えたミライさんがいたのでこっそりと……」
「サクラ」
「……ん」
つまり不法侵入ということだ。
俺がサクラの名を呼ぶと、意図を察したサクラが神速の矢を放った。速すぎて行動した後に返事をしている。そしてその矢は綺麗にシエルの形で壁に矢が刺さっている。
シエルの額から頬にかけてダラダラと汗が流れる。さらにごくりとつばを飲み込むようにのどが動いた。
「ちょ、ちょ……嘘、ですよね？ 殺さない、ですよね……？」
「あぁ、殺さないぞ」
「ほっ。安心──」
「死ぬ方がましなことにするだけだ」
「──できないワードが飛び出してきた！」
殺してしまったら俺達の約束に反することになるから、殺しはしない。誰にも死んでほしくないので自殺もさせない。でも後悔はさせる。つまり死んだほうがましなことをすればいいだけだよなぁ？
「まず服を脱がすでしょ」
「ひぃっ！？」
俺がそう言うとあからさまに怖がってきた。物理的に距離を取り、少しでも俺から逃げようとしてくる。両腕で己の体を掻き抱き、何かを懇願するような目をミライ達に送っている。
「その後に──」
「ひゃう！？」
シエルが逃げようが構わずに近づいた俺は、彼女の両肩を掴むと軽々と持ち上げた。てかこいつ本当に軽いな。
つま先からは雫が落ちている。あとで自分で掃除させよう。
そして俺は庭の方へシエルを投げた。
「ひゃわぁぁぁ！──ひっ！？」
俺も庭の方へ向かい、静かに庭に足を踏み入れる。同時にシエルに向かって【威圧】を使い動けなくする。NPCに向かって使うと、プレイヤーよりも効果がでやすい。
ミライ達は俺のしようとしていることを察しているのか、小さく笑うような声が聞こえる。それはシエルの反応に対してでいいんだよね？
「──【束縛】」
「うぐっ……」
地面から蔦が生えてきて、シエルの手首や足首に絡みついていく。十字架に張り付けられたような姿になったシエルは、３０センチ程地面から浮いている。
彼女の俺を見る目は既に潤んでいて、なんとも背徳感を感じる表情をしている。
ミライ達も庭の方に来て、俺の隣に並ぶ。シエルからは俺達四人にこれからひどい事をされると思っているのだろう。
「俺とカオリは上、ミライとサクラは下な」
「わかりました。フフッ……」
「わかったわ。楽しみね……」
「……わかた……任せて」
不穏そうな雰囲気を出し、シエルに近付いていく。
シエルは身じろぎしながら、必死に俺達から逃れようとしている。叫び声をあげているが、勿論結界が張られている為外に声は聞こえない。
「かかれ！」
「ひゃぁぁぁあああああ！」
途轍もない音量の叫び声をあげ、彼女は蔦に水やりをした。そこまで怖がらなくても……。
俺の延ばす手はシエルの脇を捕え、高速で指をうねらせる。カオリは両手を使い脇腹の方も攻めていた。ミライとサクラは魔法を使って攻める。
そう、こちょこちょだ。
シエルはボコボコにされるのではないかと怯えていたようだが、実際は擽るだけだ。だが安心はできない。擽られ過ぎると呼吸困難になる。NPCに呼吸は関係ないかもしれないが。
それは、アンラ達が帰ってくるまで続いた。幸いだったのは、案外早く帰ってきたこと。不幸だったのは、面白そうだからという理由で数分間全員に全身を擽られたことだろうか。
ま、女子が女子を擽って乱れる姿は何とも眼福だった。全てが終わった後のシエルの顔は、なんというか、その……ヤバかった。
