Save126 久しいな
あの戦神との邂逅から既にかなりの時が過ぎた。と言っても数週間だが。
その間に俺達は普通神のところに行ってきた。上級神よりも弱い事はわかっているので、残りの魔神やら悪神は簡単に交渉できた。
俺達が神の所に行っている間に、全飛行可能NPCを使って神殿の場所を探させた。その結果全ての神殿を見つけることができたので、その情報をカムイの【ゴットギャラクシー】とサナの【明誠の誓い】に流しておいた。
カムイ達は着々と力をつけていき、レベルこそ足りないものの連携は完璧に近い程完成されていた。その為、もう【始まりの森】での訓練は意味が無くなった。
現在は俺達の中の誰かがついて【荒れ果て荒野】での訓練に移行している。そのうち【龍神山】や【機械仕掛けの迷宮】などに行くことになるだろう。
中でもカムイは格別だった。カムイだけは既にレベルが160近くにまでなっている。それは偏に彼の寝る間も惜しんだ結果の努力によるもの。
でもだからと言ってこんなにも早くレベルが倍になるとかおかしくないですかね?
カムイはイシスやニケと共に戦っていたので、この二体も同じくらいのレベルになっている。
サナたち【明誠の誓い】の方には、約束通りGや食料を提供している。レベル上げの方はカムイ達と合同で。だが、レベルが頭一つ抜け出ているサナとドーターは、ブルーとレッドがついて【龍神山】でレベル上げをした。
勿論すぐにレベルが上がり始め、今では二人で【龍神山】にピクニック気分で登っている。でも帰ってくるときには既にレッドゾーン近くなので十分に気を付けて欲しい。
さらに、【明誠の誓い】の力や、彼らの力が突発的に戦力が向上したことにより、【明誠の誓い】に入るプレイヤーが続出し、いいペースでプレイヤーが同じ所属になっていっている。
今現在のサナのレベルは172で、ドーターが170。こちらもカムイと同じくすさまじいペースでレベルが上がっている。
その間俺達が何をしていたかというと、毎日ガチャを引いていた。Gが足りなくなると俺がどこか遠い強い敵がいるところに行ってフィールドの魔物を全滅させたりして稼いだ。
何故ガチャを引いていたかというと、装備を作るためだ。それなら鉱山に行った方がいいのだが、それだと時間がかかるためガチャになった。
引くのは運のいいミライとサクラ。それにたまにアンラが引いていた。カオリも勿論引く。
カオリが引いたらGの無駄だと思うだろうが、カオリには才能がある。たわしを引くと言う才能が。そして今回はたわしも必要だった。
何でも、お試しでたわしソードを使ってみたところ、アンデッドの魔物に効果があり、大体が一撃で屠れたそうだ。
さらに鎧にすると直接物理攻撃を受けた時に相手にもダメージを与えられるし、水属性魔法は無効化されたのだとか。
その為、一応たわし装備を作っておこうということになりカオリにもガチャを引いてもらったのだ。
それをカオリに言うと、泣いて喜びながらガチャを引いてくれた。喜んでいたにしては嘆きの叫びしか聞こえなかったが。
そんな中、今日はカムイやサナたちをアンラとブルーとレッドとモミジに任せ、俺達は龍神の所に来ていた。
「久しいな。我に一体何用だ?」
目の前の、巨大な龍から声が発せられる。その声は聞いたものを震え上がらせるような荘厳さを孕んだ声なのだが、今の声はどこか軽く弾み、その荘厳さというものが無くなっていた。
「ちょっとやりたいことがあってな」
「やりたいことだと?」
「ああ」
どことなく嬉しそうな話し方だ。見た目は怖そうな龍なのに、態度との温度差がありすぎる。これじゃあギャップ萌えどころではない。普通に怖い。
そして俺のやりたいこととは、
「龍神、お前をここから出したい」
「ふむ?」
ここ、別ディメンションにいる龍神を俺達の元の世界に連れ出してみる、だ。
方法は簡単で、ミライ達が俺と一緒に【転移】で移動できるように、龍神も俺に触れて【転移】を使用すると移動できるのかどうかが知りたい。
ただ一つ不確定な点を指摘するとしたら、別ディメンションで元の世界に戻るために【転移】を使ったことがない事だ。
もしMPの問題なら何とかなるかもしれないが、システム的に無理なら諦めるしかない。
「まぁよい。どれ、早速やってみるがよい」
「ほいよ。ミライ達は俺につかまっててな──【転移】」
足元にコンマ数秒で魔法陣が展開され、俺達の体を光が包み込む。
その中に龍神は……入っていた。だがまだ安心はできない。いくら【転移】の魔法対象として認証されたとしても、移動できるかどうかはまだわからないからだ。
MPは最大まで込めている。【転移】したら頭痛で頭がゴンゴンと殴られるような感覚になるだろう。どれくらいMPが込められているかというと、元の世界ならマップ中のどこでも移動できる程。
少なく感じるかもしれないが、元の消費MP量が他の魔法と比べて段違いに多いので、一度【転移】を使えるだけでかなり凄い魔法使いである。
しかもそれらはほとんど一番近い街にしか移動できないほどのMP消費なのでどこでも移動できるというのはかなり凄い事だったりする。
【瞬間移動】は少ないMPで短距離を移動する用だな。
閑話休題
果たして、龍神は移動できたのか……
「おお! ここが我がいた世界ではない世界か!」
移動できていた。しかし、大きさは半分ほどになってしまっている。それはそれでマスコットに見えて可愛く感じるのだが。あっちの世界での荘厳さは、きれいさっぱり無くなってしまっている。
「よし、これでめっちゃ強い足確保だな」
「ちょっと待ってそれだけのために龍神連れだしたの!? 私初耳よ!?」
ま、いくら小さくなって可愛くなったからと言って強さが変わるわけじゃないし、大きさも人が乗れないほど小さくなったわけではないので普通に乗れる。
カオリが何かツッコんできたが、ミライやサクラは素知らぬ顔で「かわいー!」「……かわいー」と言いながら龍神の方にかけていった。
カオリが俺を見てくるが、別に今更説明するのもあれなので、俺もちらっとカオリを見て頭痛に顔を顰めながら龍神に近付いた。




