Save121 そう言ってドーターは五本の指を立てた
【明誠の誓い】ギルドハウスに戻ってきた俺達は、早速これからの事をサナたちに伝えた。
「スレの方で呼びかけをしてほしい。できれば今年中を目安に」
「わかった。他の者にも伝えておこう。他には何かあるか?」
「特には無いが……」
「あのね、またきてくれる?」
「ん? あぁ、勿論だよ」
物資など、こちらから不要な物をあげたり、逆に貰うことがあるかもしれないので、ここにはまた来ることがあるだろう。……いや、俺とカムイとドーターで話し合うことがあるだろうから必ず来ることになるのか。
「俺達からはもうないが、そっちからは?」
「最近ギルドの人員も増えてきて、Gがない奴や武器を損失してしまった奴等のためにいくらかのGや防具があったんだが、それが無くなってきてな。どうにかならんか?」
「それってどれくらいいるんだ?」
人数によっては多少援助できる。Gに関しては余裕があるので全員に一定金額ずつあげてもいいかもな。
武器はGがあれば買えると思うので、何もしなくて大丈夫。
「ざっとこれくらい」
そう言ってドーターは五本の指を立てた。
……これは五人なのか五十人なのか五百人なのかわからんな。五千人ということはないだろうが。
「わかった。明日届けにこさせよう」
「頼む」
これで一応話すことは終わったので、俺達は【始まりの街】へ帰ることにする。
なんかカオリがサナとお菓子を持ってくる約束してる。サナ、カオリはやめた方が良いぞ。
お菓子作りはミライとサクラに任せようと、絶対にカオリには任せまいと心に決め、俺達は【転移】した。
時は変わってとある日の昼下がり。俺はクレアシオンの所に一人でいた。
お菓子は無事にミライとサクラの協力もあってカオリに作らせることを阻止することができ、おいしいものを届けることができた。
Gはミカエルに頼んで送ってもらった。大黒金貨5枚。換算すると5億Gだ。絶対多すぎるけど、大は小を兼ねるともいうし、きっと大丈夫だろう。
さて、俺がここに居る理由だが、単に暇だったからだ。
目下の目標だった【明誠の誓い】との接触は完了したので、後はカムイ達や【明誠の誓い】の準備完了まで待つだけ。
スレの方の募集も段々と集まりだしたので、本当にすることがない。なので暇つぶしでここにやってきたのだ。
「汝。ここは暇つぶしで来るような場所ではないのじゃ」
「いいだろ、別に。ミライとカオリとサクラはレベル上げ手伝ってるし、アンラもモミジにつきっきりだし、ブルーとレッドは鍛冶場に籠ってるしで俺だけ暇なんだよ」
「妾知ってるのじゃ。汝の現状をなんと言うか」
「おいやめろ」
「『ボッチ』というのじゃろう?」
「……」
「図星なのじゃ」
ち、違うし!? ぼ、ぼぼぼボッチじゃないしっ! 本当だからなっっ!?
「と、ところでクレアシオン」
「唐突にわかりやすく話を変えおったな。なんじゃ?」
「クレアシオンってさ、スキル創れるじゃん? あれどうやってんの?」
「如何様にスキルを創っておるかと問うているのか? それはの、とっても簡単故、マネするではないぞ? バランスが崩壊してしまうのじゃ」
それなら俺のスキルで崩壊してるので大丈夫です。
「まずこのゲームを制御しておるシステムに介入するのじゃ」
その時点で無理なんですけど。
「それからパパパッと勢いでやればできるのじゃ」
まさかの全略!? まったく創り方がわからなかったぞ。
まぁ、それはともかく、一応前から確認したかったことだけ確認しておくか。
「クレアシオンってシステムに介入できるんだろ? それってどこまで?」
「ふむ……妾にもわからぬ。ちと調べてみるかの。情報塔に接続……回答不可、じゃ。ならば……【神力全開放】──システム接続。介入開始…………ほう……──接続解除」
システムに介入していた時間はたった十秒ほどだが、それだけの時間で何がどこまでわかったのか。
「妾、ほとんどすべてのシステムに介入できるようじゃ。だが、このゲームの中心、ハード操作プログラムには妾だけの力で介入することは難しいのじゃ」
クレアシオンかなり凄い。ほぼ全てのシステムに介入できるのか。……でもそうなるためには【神力全開放】を使う必要がある、と。
さらに本気モードのクレアシオンでもハードを操作するプログラム──つまり、プレイヤーの死を判断しハードを操作してプレイヤー本人を絞殺するためのプログラムへの介入は難しい。
だが、出来ない訳ではないらしい。てことは……。
「なぁ、クレアシオン。もし、クレアシオンと同等レベルの神がいたとしたら、そのプログラムに介入できそうか?」
「やってみなければわからぬが、できぬわけではあるまい。大丈夫じゃ、根拠はわからぬが汝の思い通りに行くと思うのじゃ」
「……ありがとよ、クレアシオン。俺ちょっと行ってくるわ」
「……妾、創造神と同等レベルの神となると、世界神かの?」
「当たりだ」
「汝……キラ、気をつけよ。世界神は妾と同等以上の強さを持っているのじゃ。キラならば勝てるじゃろうが、油断禁物じゃ」
「……わかってる。じゃ、また今度な」
クレアシオンだけじゃ難しいなら、それよりも同等以上の強さの神を。そうすれば多分介入できるはずだ。
ミライ達に内緒で危険を冒すことになるけど、そこは終わってからこってり叱られよう。それくらいの覚悟はできてる。
キラがいなくなり、静かになったその場で、クレアシオンは佇んでいた。
「キラよ……すまぬ。妾、とても重要な事柄を伝え忘れていたようじゃ」
その呟きは、誰も耳にも届かなかった。




