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Save119 俺の予想通りの開幕

 断ろうとも思ったが、ここで俺達の強さをわかってもらえば後に起こるかもしれない面倒ごとが回避できるかもしれないので、結局戦うことにした。


 試合形式は2対2。相手はサナとドーターで、俺達からはカオリとサクラを選出した。俺が出て行っても良かったんだが、たまには観戦もしたいので今回は戦わない。


 するとミライも戦わないと言い出したので、カオリとサクラに頼んだ。アンラでも良かったのだが、一番相性がいいのがこの二人だった。ブルー達は生産職のため参加不可だ。


 今は冒険者ギルドにある闘技場で、お互いに間合いを測りながら距離を詰めている。


「どっちから動くと思いますか?」

「サクラじゃないか?」

「え~私はサナちゃんだと思うな」

「「私達もサナちゃんだと思います!」」


 ミライが俺に聞いてくる。これは解説した方が良いのかな。


 カオリは木刀を構え、いつでも攻撃又は対処ができるように気を張り、サクラは一本だけ矢を番えていつでも放てるように準備している。

 対してサナたちの方は、ドーターが後衛職なのかサナが前に出て、ドーターが後ろに引っ込んでいる。はたから見ると、子供に守られてる大人だな。


 で、俺は最初サナが痺れを切らして攻撃してくるかと思っていたが、今は違う。恐らく、サクラが挑発やら牽制やらなんやらで一発矢を放つと予想している。


「……【魔法の矢(マジックアロー)雷牙(らいが)】」


 果たして、俺の予想通りの開幕となった。

 サクラが【種族スキル】の【魔法の矢】を放ち威嚇、そして地面に激突することで砂埃が巻き上がった。


 両者が砂埃によって完全に見えなくなるのと同時、四人が一斉に動き出した。サナ、子供とは思えない動き……。

 サクラは壁を走って背後を取りに行き、カオリは砂埃の中に突っ込んだ。何か策があるのだろう。普通なら入ろうと思わないし。


 サナとドーターは、ドーターが張った障壁の中で攻撃を防ごうとしていた。障壁が破られた場合の事も想定してサナがどこから来ても対応できるように周りをぐるっと凝視する。

 そうしている間にも砂埃は晴れていき、完全になくなった時。そこには、予想外の光景が広がっていた。


「サクラちゃんが、剣を……?」

「カオリさんが、弓……?」


 カオリとサクラの武器が入れ替わっていたのだ。普通ならこんなことはしない。何故なら、というか常識だが、得意ではない武器を使う馬鹿などいないからだ。

 さらに職によるブーストもないので、これは悪手も悪手、大悪手だろう。


 これには、サナもドーターも驚きを隠せないらしく、警戒が緩んでしまった。まさかそこを逃すほどサクラは甘くない。神速の矢が二人を貫くだろう。


 これ早くも勝負あったか? と思ったが、一向にサクラが矢を放たない。どうした? 矢は十二分にあるはずなんだが。……あ、もしかして。いやだけどなんで今……?


 気を取り直したサナとドーターが、二人に攻撃を仕掛ける。

 今まで一緒にレベル上げをしているのだろうと言うことがわかる程、見事な連携。サナが攻撃すれば、それによってできた隙を後衛のドーターがカバーし、反対にドーターに近付かれたらサナが横から猛攻をかける。素晴らしい強力プレイだ。


 というかカオリたちの攻撃に、いつもの切れがない。あぁ、やっぱりそう言うことなのかな。


「これ入れ替わってるな」

「そんなの見てればわかるでしょ」

「いや武器じゃなくて、見た目が」

「見た目?」


 【概念属性魔法・虚像(ビータルイメージ)】。【概念属性魔法】で【空間属性】に類する魔法だ。難易度的には【概念属性魔法】の中ではトップクラスの簡単さを誇る魔法。


 普通はそこにないものを映し出す魔法なのだが、サクラはこれを使って自分をカオリに、カオリをサクラに見えるようにしているのだろう。いつの間に【概念属性魔法】なんて使えるようになっていたのやら。サクラはいつか俺を抜いて強くなりそう。


 だが、これには欠点もある。混乱させる以外にメリットがない事だ。当然、自分と同じ武器が得意なわけではないだろうから、攻撃はあまり期待できない。


「っく、こんのぉぉおお!」


 サナにカオリの攻撃が当たる。弓に慣れてきたのだろうか。


「ぐぁぁぁあああああ!」


 サクラの攻撃も当たるようになり始めた。こちらも武器に慣れてきたのだろう。

 だが、まだ完全ではないため、被弾の数もそれなりに多い。相手が高レベルだと言うこともあるのだろうが。


 と、その時、サクラとカオリの姿がぶれ始めた。魔法の効果が終わるのだろう。それを瞬時に察したサクラが、またもや砂埃を起こす。

 だが、サナとドーターは『二度も同じ手が通ずると思うなよ』とでもいうかのように、ごく自然な流れでドーターが魔法を唱え、瞬く間に砂埃を吹き飛ばした。

 カオリとサクラの姿は元に戻り、得意武器が使える状態になった。サクラは三本の矢を番え。カオリは木刀の切っ先を二人に向けた。


「……そろそろ本気、出して?」

「いい加減手加減しないで戦ったらどう?」


 二人の口から発せられた言葉に驚くものは、この闘技場内に二人しかいなかった。


「……ばれちゃってた」

「……バレてたのかよ」


 観戦している俺達からでもわかるのだから、戦っている本人達にはすぐにわかったのだろう。相手が手加減していると。だからこそ、カオリとサクラも手加減してあげていたのだが。果たして、二人は気付いていたのかな?


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