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Save113 それ、ずるくね?

 激しく発光する戦槌は、二つが混じりあい、剣でも杖でも、勿論鎚でもない形に変形していく。

 光が弾け、変形した鎚はその姿を見せた。それはブルーとレッドすらも見たことがない三つ目の変形した姿。


「「うわぁ……!」」


 空駆ける鳥の一対の翼のような形をしたそれは、まぎれもなく弓だった。

 [天翔弓]。それがこの弓の名前だ。二人の戦槌が合わさり、この形以外に変形することは不可能だが、特性をそのまま引き継いだ。


「「一気に行くよ! 【疾風】!」」


 通常自身を強化する武技の【疾風】だが、ここで[天翔弓]のスキルが発動し攻撃系武技へと変化を遂げる。威力は低いが、通常の攻撃よりも速い矢を打ちだすことができる。

 さらにMPを消費して矢を造り、サクラには劣るものの神速の域に十分に達している速度で打ち放つ。

 瞬く間にオークの集団は爆散していった。


「ふ~、片付いたね!」

「じゃあここらへんでする?」

「そうだね」


 今まで戦闘をしていたところで訓練をすると決め、ブルーとレッドは呼びかける。


「「ここで訓練しまーす! 準備してくださーい!」」


 すると全員が武器を取り出し、一切の油断なく周囲を見回す。

 一人のプレイヤーの目に、きらりと光るものが映った。そのプレイヤーは回避しようと試みるが、即不可能と判断し防御の体勢に入った。

 

「うっ……」


 小さく呻き、そのプレイヤーは倒れた。すかさず回復師がHPを回復させ、他の同職のプレイヤーが倒れたプレイヤーの隙を埋めるように連携する。

 この訓練は、ブルーとレッドが木の上を跳び回り、不規則に短剣を投擲する訓練だ。反射能力を高めるためだと言う。

 勿論魔物が出てくるが、その時はブルー達以外で対処してもらうことになる。先ほどの多すぎる集団などの場合は手を出すが、基本は傍観だ。

 そうやってレベルとPSを鍛えていく、らしい。本当に鍛えられているのかは疑問だが。




 家に帰ってきた俺達は、暇を持て余していた。


「あいつら帰ってくるまですることないの失念してた……」


 帰ってくるの夕方だし、もうこのまま寝てしまおうか。


「キラ君、久しぶりにみんなで模擬戦しませんか?」

「あ、いいわねそれ」

「……やる?」

「じゃあ私審判やるよ」


 一言もやると言っていないのに何故かやる方向に話が進んでる。いいけどさ。


 と、言うことで新しくできた闘技場まで来た。訓練場だっけか? 正式名称無いから間違えるんだよな。


「ルールは俺対三人。アンラの途中乱入は許可する。HPがレッドゾーンに入ったら強制的に攻撃不可になるルールだ。何か他にあるか?」


 俺の問いかけに首を振るだけで答える。何かしゃべってよ。てかアンラもしてるってことは乱入する気満々かよ。


「それでは! レディー、ファイッ!」


 アンラの掛け声と同時、サクラが矢を三本放ってきた。……いや違うぞ!? その後ろに隠れているから合計六本!? い、いつの間にそんな技能を身に着けて……。


 まぁ同じコースを通るなら対処は簡単だ。その射線から外れればいい。

 が、その行動を読んでいるかのように──実際不可思議なパワーで読んでいるのだろう──左上と右上から鋭い斬撃が襲い掛かる。

 そしていつの間にか後ろに石で出来た壁が出来上がっており、必然的に回避するためには上に逃げるしかなくなった。回避するなら、だけど。


「──【瞬間移動(インスタントムーブ)】」


 サクラの背後に一瞬で移動し、鞘から抜いたままになっている刀を、鞘に戻す。

 するとサクラが先ほどまで俺がいたところに向かい吹っ飛び、盛大な爆音を響かせた。どうやら魔法が発動した瞬間に吹っ飛ばしたお陰で自爆(魔法発動場所)した(に突っ込んだ)らしい。

 煙が晴れたそこには、巨大なクレーターがあるのみで、ミライもカオリもサクラの姿もなかった。ま、場所は特定できてるんだけど。


「──【加重(アップ)】」


 三人にかかる重力を増し、強制的に地に落とす。ゴリゴリとMPが減っていくが、回復も追いついているので使い続けても大丈夫だ。つまらないからやらないけど。


「【擦違】」

「──【反射(リフレクション)】」


 隙を突いたつもりなのだろうが、背後からの高速武技による不意打ちは俺には通じない。多分。

 攻撃を反射され、後ろに仰け反るアンラの横腹に、俺は蹴りを放つ。女性に手を挙げるのはダメだろうが、ここはゲームだし大目に見てくれると信じる。


 アンラは地面と平行に飛び、勢いよく壁に激突した。蹴られる瞬間腕でガードしてたしそこまで大ダメージじゃないと思うけど。

 てか、あ。魔法解いちゃった。


「キラ君! 全力で行きますね!」

「キラ! 全力で行かせてもらうわね!」

「……全力」

「おぉ~と私は審判に戻ろうかな」


 やっぱりアンラは元気だった。

 本気? いいぜやってみろよ。


「「おいで!」」

「……召喚」


 何か小声で言ったようだが、よく聞き取れなかった。が、すぐに何を言ったのかは分からなくとも何をしたのかは分かった。


「それ、ずるくね?」


 あいつらNPC出しやがった。確かにルールに禁止とは言わなかったけど!


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