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Save112 ペガサスって意外と揺れるのね

 俺が候補地として【始まりの街】を選んだのは、やはり一番大きい街だからというものは大きい。

 装備などの品質は落ちるが、ブルー達がいれば問題ないし、他の街から遠いという問題も、俺が【転移】を使えば大丈夫。

 それに、何か起こってもまさか相手が【始まりの街】にいるとは思わないだろうと信じたい。


「とりあえずこれで最後の候補地だ。どこか気に入ったところはあったか?」

「私ここがいいと思う。だってみんなと近い場所にあるもん」

「そのみんなってカムイ達の事か?」

「それもあるけど、このゲーム内に居る私の友達の事だよ」

「あぁ、そうか……」


 そうだった。このゲームには俺のクラスメートもいるんだっけ。それだけじゃない。アンラの友達もそうだし、ブルー達の友達も。

 ま、頑張って攻略すればいいだけだけどな。


「じゃ、一旦帰ってから明日引っ越そう。荷物はそのままでいいはず」


 今日は既にお昼近くになっているので帰ることにする。今日引っ越すのもいいんだけど、ブルー達に一言言ってからの方が良いと思うしな。

 と、言う訳で今は絶賛高速空の旅中でございます。


「な、なんで【転移】じゃないのよ……」

「あれ、カオリって苦手だっけか」

「苦手ではないけど、今は怖いわね」

「なんでだ?」

「キラがそれ言う!?」


 俺とミライとサクラはコートを使って飛行し、アンラはサクラのスレイプニル。カオリは自分のペガサスに乗っている。はて、どこが怖いのだろうか?


「ペガサスって意外と揺れるのね……いたっ!? う~ひはほはんはは(したをかんだわ)


 いくらを舌をかんだからと言ってそこまで言葉にできなくなるか普通? それとペガサスはいつもより多めに揺れております。サービスとして翼を大げさに羽ばたかせてるからね。




 キラ達が家を設置する候補地を見回っている頃、ブルー達は【始まりの森】を進攻していた。先頭をブルーが歩き、殿をレッドが務める。

 それぞれが【種族転生】するときに使用した武器を持ち、敵が弱いにもかかわらず警戒を緩めることはしない。


「今日もよろしく。今日はアンラちゃんはいないの?」

「はい、用事があるので」


 ブルーの後ろを歩くカムイが話しかけるが、話しかけられたブルーは端的に答える。カムイはそれを嫌な顔をせずに受け止め、ブルーから少し離れた。

 今日ブルー達が見るプレイヤーの数は、37名。五人パーティーが五つと六人パーティーが二つ組み合わさった一つのレイドと言えるほどの人数だ。


 現在、カムイのギルドでの最高レベルはカムイで、レベル86。平均レベルはレベル78とまもなく半分を超えそうなほどだ。

 それにはまだまだ時間がかかると思うが、これからサポートし続けておけば一ヶ月もしないうちに【荒れ果て荒野】あたりでレベル上げができるだろう。


「【衝撃(インパクト)】!」


 ブルーの前にオークの集団が現れたが、ブルーが戦槌を横薙ぎにひと振りしただけで爆散する。

 武技【衝撃】。ウォーリアーという(ジョブ)のみが使用できる、斧や鎚が敵にヒットした瞬間にその打撃力を増幅する武技だ。


「……囲まれてる。戦闘準備!」


 直ちに周囲の状況を確認し、囲まれていると気付いたブルーは、オークとの戦闘に備えるよう指示を出す。

 すると、プレイヤー達が円形に固まり始めた。内側に魔法使いや回復師を入れ、外側を剣士などが守る。そうすることで後衛職を安全にしつつ、自分たちに有利なように戦いを進めようとしているのだ。


「喰らえ【二連切り】!」

「●●■■──【火球(ファイヤーボール)】!」


 プレイヤー達が陣形を固め終わると同時にオークの群れが襲い掛かかる。それを武技や魔法で迎撃するが、木の上に登っていたブルーとレッドは危険と判断した。

 連携が問題なのではなく、数が問題なのだ。オークの数はざっと見ただけでも50はいる。今から武技を使っていたのでは、途中で体力が無くなっていしまう。

 さらに、ブルーはオークが向かってくる方向を見やる。その方向とは、


「深部から来てる……」

「お姉ちゃん、大丈夫かな」

「どう考えても大丈夫じゃないよ。さ、少し助けに入ろう」


 木の枝を勢いよく蹴り、ブルーは地面に向かい突撃する。


「【爆風(ブラスト)】!」


 オークの頭上数十センチ上で武技を発動。戦槌の後ろに爆風を起こし、スイング速度を急加速させる。


「さらに【衝撃】!」


 オークを砕き爆散させ、勢いを殺すことなく地面に向かい、そして接地と同時に武技【衝撃】を使い地面に強打を与える。

 地面が激しく揺れ、オークはバランスを崩す。それを見逃すわけがないブルーはしかし、小さなクレータを残し空中へ跳ぶ。

 ブルーが飛んだ先には、既に準備していたレッドが待ち構えていた。


「「【複合】!」」


 その掛け声と同時、ブルーの持っている戦槌と、レッドが持っている戦槌が光輝いた。


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