Save110 ……かわいい、は……せいぎ
寝込みを襲われ十分に睡眠をとっていない俺は、今すぐに寝たいのだが、しかし寝るわけにはいかない。
何故なら、カムイから得た情報を伝えたり、ブルー達の方もどうなったのかを聞かなければいけないから。
カムイは、俺が面倒臭くなって帰る直前に情報をくれた。もう少し早くくれなかったのか。
ま、それはともかく。
「このゲームで一番発言力を持っているギルドは、【明誠の誓い】というギルドらしい。ギルド長は謎に包まれており、幹部くらいしかどんなプレイヤーなのか知らないらしい。ギルドハウスは最近【オーネスト】に新しく建てたらしい。以上だ」
「らしいばっかだね」
「全部聞いたことだからな」
そもそも、カムイもよく分かっているわけではないしな。
「あの~【オーネスト】ってことは、この近くにあるってことですよね。行きますか?」
「勿論行くが、それよりも前にギルドハウスの場所を移動しようと思う。特定されたら面倒なことになりそうだからな」
「面倒なこと?」
「例えば取り囲んで罵詈雑言を言い放ったり、放火したり、かな。あぁでもこの家はあらゆる攻撃を無効化する結界をクレアシオンが張ってくれてるから関係ないけど」
その結界を維持するために一日一回MPを注がなくちゃいけないんだが、その量も大したことないからここは最強の家と言えるだろう。
「それで? ブルー達の方はどうだった?」
「「私達の方は全く……ごめんなさい」」
「別に謝る必要はない。俺だってそんなすぐに賛成派が増えるわけがないってわかってたからな。そもそもの話、『レベルも全く上がってないのにもう攻略開始? 俺達を殺す気か?』てな感じだろから」
「だったらブルーちゃん達がやった意味がなくなると思うんですけど、どうなんですか?」
「そこで、発言力のあるギルドが必要なんだよ」
無名のギルドが攻略するから手伝って~、と言っても誰が協力するだろうか?
俺の力が必要なのかそうかならば協力しよう、というような勇者や、面白そうだから参加しようかな~などのごく限られたプレイヤーしかいないだろう。
だが、そこに大手ギルドが参加すると表明すればどうなる? あそこがやるなら自分もやろう、ということになりそうではないか。
さらに妄想を拡大させると、日本人が一致団結してるんだから俺達も団結しよう、みたいな感じになってくれたらなお嬉しい。
「だから、俺達はそのギルドと協力しないといけない訳。その為にはエサがないといけない訳だが、果たしてそれがGで解決できることなのか……」
「ま、やってみないとわからないわよ」
「……案外、上手くいく、かも?」
「そうだよ! とりあえずやってみようよ!」
「そうですね、私はキラ君のしたいことを一緒にします」
「新参者のボクだけどできるだけ協力します!」
頼もしい仲間達を一通り見まわし、俺は今後の計画を告げる。
「よし、まず優先すべきはモミジのレベル上げ。ついでにカムイ達の戦闘力の強化もやろうと思う。場所は【始まりの街】周辺。まぁ、大体が【始まりの森】の深部だろうけどな。そっちはアンラ達に任せる。俺達は新しいギルドハウスを建てる場所の検討。あとついでにクレアシオンの所に行って闘技場を創ってもらおう。色々オプションをつけて。何か意見は?……ないな。ならば行動開始!」
「「「「「「了解(よ)!」」」」」」
「……りょかい」
それから俺達は色々な所を飛び回った。MPの消費量は半端ないけど、今の俺にはあまり関係がないので無視。
クレアシオンの所にも行って、やっぱりバトってから闘技場を創ってもらった。勿論オプション付き。それは魔物のレプリカだった。これで魔物との模擬戦闘が可能になった。クレアシオン様様だぜ。
一方でアンラ達。カムイ達を連れて、【始まりの森】の深部の中でも浅めの方でレベル上げ。手伝いは最小限で、己の力のみで戦わせたらしい。そのおかげで全員が最大の20レベル上がり、今日のノルマはクリアした。
そして、夜。まだどこに移動するか決めていないため【オーネスト】にある家で、俺達は一日の疲れを癒していた。より具体的に言うと、愛でていた、動物を。
カオリがこの前ガチャを引いたとき、たわしだけでなくNPCも出ていた。しかし、そのどれもが猫だったり犬だったりと戦闘には不向きの物だった。それが今現在……
「はぅ~かわいいですぅ~」
「かわいいわねぇ~」
「……かわいい、は……せいぎ」
「かわいいねぇ~」
「「かわいすぎますぅ~」」
「かわいいぃ~」
女子勢全員を骨抜きにしている。眼福ですごちそうさまです!
綿あめのような毛をしている犬を抱きしめモフモフしてるミライに、膝の上に乗ってきた猫を撫でているカオリ。肩や頭の上にハムスターやモルモットを乗せているサクラにカワウソを抱きしめているアンラ。
一匹の兎に頬ずりをするブルーとレッド。そして、あらゆる動物に周りを囲まれたモミジ。もう一度言おう。眼福である。
あ、俺の周りには誰もいないよ? 悲しくなんかないもん。
そしてその夜は、各々が気に入った動物を自室に連れ込み、添い寝したらしい。
そこで唯一気になったのが、何故サクラが俺を連れて行こうとしたのか、ってこと。まぁついて行ったけどさ。一応言っておくね? 俺は愛玩動物じゃないからね?




