Save10 え゛?
ミライが着替えたので、今一番聞きたいことを聞くことにする。
「んで、ミライ。俺がいない間、変なことしなかったよな?」
「し、してないですよ~。……匂い嗅ぐぐらいしか」
「してんじゃねーか」
「だ、だって! キラ君の匂いを嗅いで少しでも安心したかったんですもん!」
「そ、そうか」
ぐっ、そんなこと言われたら強く言えないじゃないか。
「はぁ、ま、いっか。そんなことよりもうそろここでないと集合時間に間に合わないぞ。準備できてる?」
「はい!」
【始まりの街】転移水晶前広場。ここは〝転移水晶〟と呼ばれる、街と街を一瞬で移動できる水晶がある広場だ。もっとわかりやすく言うと、この世界に初めて入ってきた場合、ここに出る。つまり、リスポーン地点、と言うことだ。そこに俺とミライは来ていた。
「もうそろそろだな」
「何か緊張してきました……」
「なんでだよ」
「いやだって、久しぶりじゃないですか。キラ君と一夜を共に過ごしちゃったじゃないですか」
「誤解を招くような発言をするな」
「あ! 来ましたよ!」
「ごめんね~。待ったかしら?」
「いや。少ししか待ってない」
「そこは今来たところだよ。って言って欲しかったな~」
「今来たところだよー」
「今言っても遅いの! しかも棒読みだし!」
今何かガヤガヤうるさく言っているのは……誰だ? 話しかけられたから反応したけど。
「誰?」
「私よ私」
「詐欺?」
「ちっがーう! 朝倉よ! あ・さ・く・ら!」
「やっぱり」
「分かってたなら聞かないでよ!……あ、因みにこのゲームではカオリだから」
「本名か」
「いつもカオリでやってるからね!」
「ふ~ん」
「興味なさそうね」
うん。興味ないかな。でもそれを言うとまたうるさくなりそうだから言わないけど。
「あの……人前でイチャイチャしないでもらえます?」
「あら、無事だったのね。よかったわ、ミライ」
「キラ君が助けてくれましたからね」
「んで? キラ君とはどこまで進んだの?」
「一夜を共にしました」
おい!? 何勝手に言ってんだよ! しかも何故にドヤ顔? 無い胸も張らなくていいからな?……ミライは貧乳なんだね。さっき知ったけど。
「なにか失礼なこと考えませんでした? キラ君」
「な、なにも?」
「えぇ~! 未来……ミライか。ミライはもう大人になっちゃったんだね」
「ミライが変なこと言うから誤解されちゃったぞ」
「勝手にさせていればいいじゃないですか。別に私は肯定していませんよ? 否定もしていませんけど。っていうかしませんけど」
「否定しようよ」
「イヤです」
「あ~もう! ミライ、カオリ! 宿に行くぞ!」
「えっ! 私だけでは満足できずにカオリにまで手を出すんですか?」
「そうなの!?」
「うるさい! 黙ってついてこい!」
もうヤダ。おうち帰りたい……。
「なるほど~。そういうか」
「分かってくれたか」
俺はミライとカオリを引き連れて俺たちが泊っている宿まで戻ってきた。
それからかれこれ10分も程、今までの事を説明していた。……二人とも静かに黙って聞いてくれたおかげですんなり終わった。
もし邪魔をするようならば能力がバレようがお構いなしに脅しとして【火属性上級魔法・大爆発】を打っていた。
「でも、なんで手出さなかったの? 許可貰ってたじゃん」
「そんな易々とやっていい事とやっちゃいけない事があるだろ。しかも好きでも何でもない男とそういうことをしてはいけない」
「で、でも! 救ってもらったから、そういうことした方が良いのかな~って」
「もしそいつが変態だったらどうする? そのまま結婚までするのか?」
「そこまではしませんけど……」
「ならやめておいた方が良い」
「……わかりました」
「ねぇ、私空気なんだけど?」
「あ、居たのか」
「あ、じゃないわよ! あ、じゃ! 今まで私に説明してくれてたでしょ!」
「そうだったな」
ごめんね? 本気で忘れてた。……嘘だけど。そもそも、そこまで空気じゃなくない?
「さて、ひと段落付いたし、レベル上げに行くか」
「おー!」
「え、ちょっと待って。そんなの聞いてないわよ?」
「当たり前じゃん。言ってないもん」
「教えてくれても良くない?」
「そう言えば、他の奴らは何してんの?」
「話を逸らすなー!」
仕方ないじゃん。カオリには関係ないことだし?
「他の人たちはレベル上げでもやってんじゃない?」
「そうか。なら俺達も早くやるか」
「おー!」
「そうね」
「「え?」」
「え? って何よ、え? って」
「レベル上げ、一緒にやるのか?」
「当然でしょ?」
え? マジで? 本当に? えー。
「ま、いいか。んで? カオリはどういうプレイスタイル?」
「私はねー、魔法使いよ!」
「あ、それもうミライで間に合ってるわ」
「え゛?」
「うん。魔法使いですよ、私」
「ど、どんな魔法を使うのかしら?」
「攻撃系かな?」
「ほっ、なら大丈夫ね! 私、第一職業は回復師にする予定だから!」
職業【回復師】。それは【回復魔法】を覚えられるうえにMPが上がりやすくなる職業。主に後衛にいて、パーティー全体を見て必要ならば回復、蘇生等の補助をする職業だ。因みにミライは【魔法使い】にする予定だとか。
「んで? 今何レべ?」
「5よ!」
「低っく!」
「うるさいわね! これでもしっかりレベル上げしてたんだからね! それに加えてミライ探しもあったし。誰かさんと違ってちゃんと私は探してたんだから!」
「それはお疲れ様としか……」
「まぁいいわ。早くレベル上げに行きましょ。で、どこに行くの? 【始まりの草原】? 【始まりの森】?」
「あ、それ私も気になってました!……でも、どこも人でいっぱいですよね」
「そうね。少なくなっては来てるけど」
レベル上げの場所か……。そんなに考えてなかったな。今の俺のステータスならそこまで危険はないと思うから、ちょっと遠いけどあそこまで行こうかな。
「レベル上げの場所は、【龍神山】の麓の【荒れ果て荒野】にしようかと思ってる」