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Save108 獣人族がいないんだよッ!

「まずどうやってそんな組織造るのさ? 立ち上げたところで絶対誰も入らないよ?」

「そこなんだよな。さてどうしようか……」


 話し合いを始め、既に十分ほど経っている。どのような組織にしようか構想を練っていたところ、アンラが先のようなできれば触れて欲しくなかった問題を出してきた。

 でも全く考えていなかった訳ではない。ただ、そのどれもが現実味の無いものだったので言ってないだけだ。例えば、


「ブルー達が使ってるスレで募集する。今一番発言力のあるギルドに頼む、とかなら思いついたんだが、な」


 これには欠点がありすぎる。

 スレ募集は、全員が使っているわけではないから、時間がかかる。

 ギルドに頼むのは、スレと同じで時間がかかりそうなのと、単純に面倒くさいからだ。今俺達が打診しに行っても、どうせ突っぱねられるに決まっている。それをどうにか対処してからやっと動き出せるのだ。


「じゃあさ、両方やるのは?」

「ま、それしかないだろ」


 当然俺は思いついていた手だ。だが話し合えばもっと良い方法が出るかもしれないと思い言わなかった。もし言ってしまえば、それに似たようなアイディアしか出てこなくなるかもしれないからな。


「じゃあ俺達がカムイの所に行ってくるから、アンラ達はスレに書き込んでおいてくれ。ルール違反として叩かれるだろうが、基本的にどのスレにも、だ。どうしても開きたくないスレがあったら開かなくてもいい。どうせ他のスレにもいるだろうからな、そいつ」


 さてさて? カムイはどこかな~っと。……へ?


「へ?」

「ちょっとどうしたのよ変な声出して」

「あ、あぁ悪い。ちょっと予想外だったもんでな」

「予想外、ですか?」

「……どした」

「いや~まさかカムイが、この次の街にいるとは、な」


 ここ、【オーネスト】の次の街は、ただの宿場町だ。広くもなく、狭くもない。特産品があるわけではないが、常に人が沢山いる。そんな町だ。

 いや~まさかカムイが【オーネスト】を通過して次の街に行くとはな。俺達に挨拶してくれても良かったんじゃないの?


「とりあえず挨拶しに行くか」


 ミライ達の手を取って【転移】する。あ、説明するの忘れてたけど、カムイの所に行くのは一番発言力のあるギルドを聞きに行くためだ。調べる? そんなの面倒くさいし。


 【オーネスト】の次の街、【ファイタウン】。そこにある宿の一室に、カムイはいた。当然魔法で調べましたとも。ディメンション的には別世界だけど、調べるときは同世界だ。


「それで? どこが一番発言力があるギルドなのか教えてほしい、か。勿論知っているけど、教えない。教えて欲しいのなら、取引をしよう」

「取引?」


 カムイが宿泊している宿の一室に、俺とミライとカムイとボクっ娘の姿があった。机を挟むようにソファに座り、話し合いをしている。

 あ、因みにこの宿はカムイ達の貸し切りだってさ。いつの間にそれだけのお金を稼いだのやら。


「何、簡単な取引だよ。何をしようとしているのか説明して欲しい」

「あぁ、それか。それならカムイにも協力してもらうから説明しようと思ってた」


 カムイに俺達の計画を伝える。最初は何を考えているのかわからないようなそれでもイケメンだったが、次第に柔らかな笑顔に変わった。薄っすらとだけど。


「わかった。それなら協力しよう」

「待ってください」

「モミジ? どうしたの?」


 へ~ボクっ娘の名前はモミジっていうのか。


「この方たちが本当にこのゲームを真剣に攻略しようと思っているなどと考えられません。もう一度お考え下さい」


 言葉遣いおかしくない? なんでそんな丁寧なの? 同年齢だよね?


「その口調やめてっていつも言ってるんだけどなぁ。はぁ。ま、今は良いか。それで? 考え直せってことだよね? それは必要ないよ。キラは一度言ったことは絶対にやる人だと信じてる。だからそれに賭ける。キラなら、本当にこのゲームを終わらせることに」


 くぅ~感動させやがるぜ! その期待が重いけどな!


「それともう一つ教えてやろう。【種族転生】できる場所を特定した。全てではないだろうが、一応全ての種族ができる」

「情報ありがとう。それを言うってことは、【種族転生】しないと勝てないって思ってるんだね?」

「当たり前だろ。必要ないならまず【種族進化】をもっと楽にさせるだろ。態々場所まで秘密にしてる時点で攻略には必要な通過点、ってことだろ。それに、創造神の所に行くなら絶対にしていた方が良い。ソースは俺達」


 まあ【種族転生】しても攻略できるかは怪しいところだけどな。あのダンジョンはかなりの人数がいて初めて入ることができるだろう。「それを言ったら【龍神山】もだろ。お前のせいでなぁ!」という指摘は一切受けないのであしからず。


 カムイに神殿の場所を教え、攻略する時のポイントなども話しておいた。今もミカエル達に神殿を探させている。こんなにプレイ人数がいるのにあれだけしか神殿がないとかありえないからな。


「それで最後にお願いなんだが」

「ん?」

「そのボクっ娘、俺に譲ってくれないか?」

「ボク!?」

「どうしてだい? 君にはミライ、カオリ、サクラと綺麗どころが揃ってるじゃないか」

「ミライとサクラは本当に可愛いよな。カオリも──弄っている時が──可愛いのは認める」

「それなのに、モミジが欲しいのかい?」


 ミライ、カオリ、サクラ、さらにアンラ、ブルー、レッドと可愛い女の子に囲まれておきながら、まだ女子を欲するかと、そう問うているのだろう? 答えはイエスだ! 何故なら!


「俺のパーティーには獣人族(ケモミミっ娘)がいないんだよッ! 一人くらい欲しいだろ!?」


 人間は俺やミライをはじめ計四人いるし、森霊族もサクラ、地霊族はブルーとレッドがいる。がしかし! 獣人族(ケモミミっ娘)が一人もいないのだ……。だから一人くらいいてくれてもいいと思うの。

 と、そう考える俺だが、カムイは果たして。ドキドキと胸を高鳴らせる俺の耳に届いた言葉は……


「それならどこかで、例えば【始まりの街】で誘えばいいんじゃないかな?」

「悪いが今からそれをするのは無理だ。俺達のパーティーに入れるにはレベルが低すぎるし、当たりはずれがある」

「つまりそれは、『可愛い娘がいるかもしれないが、いない可能性の方が高い』と言っているのか?」

「ちっげーよ!? 今から低レベルを鍛え上げるほどの時間を持っていないって言てるんだよ! 当たりはずれはPSの事だからな!?」


 何だこいつ。俺を可愛い女の子なら見境なく手を出す屑だとでも思ってるのか?


「思ってるけど何か?」

「開き直ってんじゃねーよ! 俺にはミライがいるから! あとカオリとサクラも!」

「なら僕のギルドから何人かキラと同性の獣人族を派遣しようか?」

「男はダメだ」

「ほら、やっぱり女の子が良いんじゃないか」

「だから違うっつってんだろ!? 大体男が来たらミライ達が何されるかわからねーじゃねーか! 力で負けることはないだろうが心配だろ!? そこらへん察せ!」

「どうしてもモミジがいいのかい?」

「えっ、そうなんですか?ボクが良いんですか?」


 会話の主題なのに全く参加しなかったボクっ娘は、今になって口を出してきた。

 まぁ、口を出すのは良いんだよ。でもね? 今まで一言もしゃべらないミライが一番怖いかな。その『私わかってますよ(キラ君?)キラ君の好きに(帰ったら)していいですよ(どうなるか)その代わり後で(わかってるよ)、ね?』みたいな感じが怖い!




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