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Save105 レディーファースト

 家に帰ってきた俺は、皆に報告する。


「──と、言う感じの場所だったぞ」

「お疲れ様です」

「お疲れ様」

「……おつ」


 俺に労いの言葉をかけてくれたのはミライ。その後にカオリ、サクラの順で続いた。


「それでそれで? どっちから行くか決まったの?」


 俺を労うよりも先に行き先について聞いてきたのはアンラ。お疲れ様くらい言ってくれてもいいんだよ?


「まだ決まっていない。ミライはどうしたい?」

「私はどっちでもいいです」

「カオリ……じゃなくてアンラは?」

「なんで私を抜かしたのよ!?」

「私もどっちでもいいかな」

「はいはーい! 私! ブルー達からの方が良いと思うの!」


 なんかやけに大きな声で意見を言うカオリ。何故だろうか。


「なんでだ?」

「何となく?」

「はぁ……」


 何となくは理由にならないだろ。流石カオリだな。


「「あ、あのぅ~。私達は後でいいですよ」」

「そっちはなんで?」


 少し遠慮がちにブルーとレッドが声を合わせて言う。


「「わ、私達……実は武器、持ってないんです。というか手入れしなかったので壊れました!」」

「とりあえず、新しいの造ろうな? 素材はあげるから」


 手入れしないと壊れるのか……

 ま、俺達の武器は全てブルー達に任せてるから俺達自身が手入れをすることはないだろうけど。


 ここで豆知識。俺達人間の冒険者が武器の手入れをするよりも、鍛冶職の、それもドワーフだと手入れボーナス的なので耐久値が減りにくくなったり耐久値を回復したりできる。ドワーフの方が効果が高い。鍛冶職に就きたいプレイヤーは大体がドワーフを選ぶので、これは常識的な豆知識。


「「私達は武器を造っているので、先に皆さんの神殿の方に行ってください」」


 ブルーとレッドに有り余っているオリハルコンを渡し、俺は【転移(テレポート)】を唱えた。


 移動した場所は、神殿の真ん前。少し離れてしまうと、蔓が保護色となって見つけづらくなってしまうからだ。

 看板にはサクラの時と同じような文言が書いてある。これで統一しているのだろう。

 まず誰から行くか、で話し合いを始めた。


「わ、私が行ってきます!」

「ダメだ。ここはカオリに先を譲ろう。レディーファーストだ」

「キラ、レディーファーストの意味わかって使ってる?」

「ああ知ってるぞ? 淑女としてのマナーであり取るべき行動に対する方針だろ?」

「ちっがうわよ! レディーファーストって言うのは女の子を優先してあげよう、ということよ。そしてこの場合は先に【種族転生】させてあげるね。という解釈もできるけどキラの思惑は私を使ってどれくらいの強さなのか計ろうってことでしょ?」


 間違ってるのはカオリの方だよ……。


「そもそもねぇ! あんた男なんだから一番先にやりなさいよ!」

「……わかったよ。サクラ、俺がいない間の警戒頼んだぞ」

「……わかた」


 サクラの頼もしい返事を聞き、俺は神殿の中に入っていった。

 それと言いたいことがもう一つ。自分が最初が良いときはレディーファーストで一番が嫌な時は男なんだから先にやりなさいは理不尽じゃね?




 場面変わってここは【オーネスト】にあるキラ達の家、に隣接している鍛冶場の中。大きな溶鉱炉が置かれ、見るからに重そうな金床。壁には何種類もの工具がびっしりと並べられ、その様は圧巻。

 地面には試作したのであろう武器や防具、遊び道具の数々。最後のに至っては部屋の一角に山のように積み重なっている。木の他に石やガラスも使って作ってみたようだが、上手く造れなかったらしい。

 そんな部屋の中に、二つの人影があった。ブルーとレッドだ。二人はどのような武器を造るかで討論しているのだ。


「私はやっぱり戦槌が良いと思うな。鍛冶師なんだし」

「それ賛成! でもただの戦槌じゃつまらないよねぇ……」


 ブルーが意見を出し、レッドがそれに賛成する。この姉妹の中では幾たびも見られてきた光景だ。

 普段二人は一緒に話しているが、誰もいない空間だとしっかりと二人で話す。理由は単に暇なのと寂しいからだ。


「そうだ! キラさんが使ってるみたいな剣になるって言うのはどう?」

「いいね! それじゃあサクラさんの弓も入れたいよね」

「それならカオリさんの細剣もだよ!」


 どうやら仲間の武器を取り込むらしい。キラからは剣を。ミライからは魔法を。カオリからは細剣を。サクラからは弓を。アンラからは……


「アンラちゃんから何取り込もう? 全部他の人で埋まっちゃってるし……」

「そんなことより大変だよ! これ一つの武器に全部入らない!」


 アンラはどうしようかとブルーが悩んだいるが、レッドはそうではないらしい。というかブルーより大きな問題を抱えていた。

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