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Save9 ミライは なぞの あつに おしつぶされた!

「ねぇ、これ本当なの?」

「うん。本当だよ」


 八雲にAWOの世界から未だに500人近くのプレイヤーが現実世界に帰って来ていない事を告げられた朝倉薫(あさくらかおり)は、(にわか)には信じがたかった。


 それもそうだろう。いきなり、このAWOというゲームはログアウト不可のデスゲームになってしまった、と言われたのだから。


 デスゲーム、と断言できるのは、もう既に死人が出ているからだ。回線を抜いた者、ゲーム内でHPが尽きた、つまりゲームオーバーになった者など。恐らく、ゲームが配信停止になった場合、アカウントの消失はゲーム上での死亡と見なされ、死に至るだろう。


 それに加え、これからもどんどんログイン数は増えていき、ほぼ全てのプレイヤーがログイン不可のデスゲームという名の牢獄に入れられることになるかもしれない。


 この状態はどうすれば自分は助かるのだろうか。簡単だ。ログインしなければいい。しかし、それならば未来の命は見捨てることになるかもしれない。


「で、どうするの? 行くの? 行かないの?」

「っ……!」

「はぁ、話にならない」


 八雲は上から目線で偉そうに言っているが、もう既に決断はできている。ゲームの中に行くという決断が。しかし、薫は決められないでいた。それはクラス中の人皆同じだった。


 ……まぁ、自分の命を取って、友人を見捨てるか、友人の命を取って、自分の命を危険に晒すかの決断だ。簡単に決められる方がおかしい。


「よし。僕はいくぞ。このまま見捨てるなんてできない」


 クラスの中で八雲に続いて行くことに決めたのは神崎神威(かんざきかむい)。……説明割愛、したいところだが一言だけ。ほぼ全て完璧。以上。


「ごめん。俺はパス」

「私も」

「僕も、ごめん」

「あたしは行くわ!」

「ウチはパス」

「拙者はいくでござる!」


 次々に自分の意見を言っていくクラスメート。……最後のやつは無視しようそうしよう。


「んで? 学級委員様は? どうすんの?」

「……行く」

「ん?」

「行くって言ってんの!」

「よし! 朝倉ならそう言うと思ってた」

「その代わり! もし私がピンチだったり、助けてほしいと頼んだら協力してくれるよね?」

「ん? それくらいいいぞ?」

「絶対だからね?」

「わかった。約束しよう」


 何故か薫を守ることになってしまった八雲だが、この時は後であんなことになるとは想像もしていなかった。




「調子はどうだ?」

「順調ですよ」

「そうか」


 此処は都内某所のオフィスの中。其処で二人の男が話していた。


「今どれくらいだ?」

「サーバー強化してアップデートの準備もしたのでほぼ全てのプレイヤーが対象になりますね」

「よくやった。この調子で頑張れ」

「はい。ところで、プレイヤーたちにプレゼントを与えませんか?」

「プレゼント?」

「ゲームと言ったらガチャですよ、ガチャ!」

「ふむ。良いのではないか? 好きにやればよい」

「ありがとうございます!」


 話が終わったらしく、片方はカタカタとパソコンのキーボードを打ち、もう片方はコップに注いだコーヒーを飲んでいた。



 目が覚める。ここは俺が泊っている宿の一室だ。

 今日も今日とてレベル上げに勤しもうと、体を起こす。


 ……しかし、起きることができない。何故だ? と思いつつ、自分の上を見てみた。……何もいない。右腕が何か柔らかいものに包まれているような感覚がするが、スルー。


 次に、左腕を見る。……何もいない。……右側から「すぅ……すぅ……」と言う可愛らしい寝息が聞こえる。

 仕方なしに右側を見ると、俺と同い年位の少女がいた。……まぁ、ここで慌てたりはしない。何故なら、この状況は簡単に説明が付くからだ。


 ここで、この少女の事を少し説明しよう。

 彼女は明日葉未来(あしたばみく)。このゲームでの名前はミライ。黄道北星(こうどうほくせい)高等学校に通う女子生徒だ。


 容姿は艶のある黒髪を後ろでポニーテールに結っている。端正な顔立ちで、勉強もそこそこ出来る。運動は、まぁ、触れないでおこう。


 そんな彼女がここに、正確には俺の隣で寝ていることについて説明しよう。彼女———ミライは、このゲーム、【Another World・Online】からログアウトできなくなってしまっている。そして、スラム街で倒れているところを俺が助けたのだ。


 そこからは、この宿まで連れてきて、今後のことについて話し合い、ミライの誘惑にも耐えて、俺はログアウトした、と言うところまでは覚えている。


 しかし、しかしだ。何故、ミライは、俺の隣でしかも()()で寝ている!?

 ……まぁ、隣で寝ているのは良しとしよう。このゲームはプレイヤーがログアウトしても、アバターだけは残るので、抱き枕代わりとして使っていたのだろう。一人じゃ寂しい的なことも言ってたし。


 だが、何故全裸? もしかして俺がいない間に既成事実とか作ってないよな? 大丈夫だよな?……まぁ、何はともあれ、ミライを起こすことにした。


「おい、ミライ起きろ」

「ん~。……あと3分48秒……寝かせて…………すぅ」

「やけに現実的な長さだな! おい起きろって! 朝倉たちが来るぞ?」

「!……ふぁ~。……あ、そか。薫たち来るんでしたっけ……?」

「そうだ。取り合えず服着ろ、服」

「え?」


 ミライは一瞬意味が分からないような表情をしていたが、段々自分が今どんな格好をしているのかに気付き、顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「き、キラ君! ほ、本番は、夜がいいな~」

「何言ってんの!? ねぇ、何言ってんの!?」

「え? キラ君が私に欲情しちゃったんでしょう? だから、そういうことするのはいいですけど、夜の方が良いな~、って。別に、今じゃなきゃダメってことなら、今でもいいですよ?」

「よ~し。早く着替えような? ん?」


 キラは むしを した!


「はい! 3秒で着替えます!」


 ミライは なぞの あつに おしつぶされた!


 ミライは本当に3秒で着替えた。着替えた、と言ってもメニュー画面を出し、装備欄に服や防具をスライドしてセットするだけの簡単なことなので当たり前だが。


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