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Save98 なるほど、その手があったか

「で、フィールド破壊して何してんの?」

「魔物の駆除をしてました」

「過剰威力だよね?」

「面倒臭かったので」

「威力弱めの魔法使おうとか、思わないの?」

「一番使いやすい魔法を使った方が楽なので」


 俺は空から降りてきたフィールド破壊犯を問い詰めている。因みに犯人はミカエルだ。

 神殿を発見して俺達に知らせようと【オーネスト】に戻るときにあの魔物の群れを発見したらしい。それで魔物を倒していたら俺達が来たと。

 ……倒してくれたのは良いんだけど地形を破壊するのだけはやめて欲しかった。勝手に直るけどさ。


「もういいや。どうせここに来るプレイヤーは居ないんだ。放っておこう」


 ここは【荒れ果て荒野】に繋がる道なので誰も通らないだろう。通る奴は馬鹿だ。自ら死にに行くようなもんだからな。

 さて、帰るか。俺が魔物を倒すときも同じようなことをしようとしていたことを悟られないうちに。【流星群(メテオール)】使おうとしてたけど【天変(カオス・オブ)地異(・ワールド)】くらいで良かったかな。

 ん? ミライどしたのそんなフラットなジト目なんかして。かわいいじゃないか。


「──【転移(テレポート)】」


 【転移】で【オーネスト】まで戻る。ミカエルには自分で帰ってきてもらうことにした。飛んだらすぐだし【転移】を使う程でもないよね。

 俺も飛べばよかったって? ミライはどうするんだよ。抱えればいい?……なるほど、その手があったか。


 家に帰り、リビングへ向かう。そこには全員が集合していた。ブルーとレッドはパソコンを弄り、アンラはソファで昼寝。サクラはカオリと庭で遊んでいる。少しデジャヴ。

 と、そんな事を思っていると、庭の方からかわいらしい悲鳴がした。ゆっくり駆け付けると、案の定ミカエルがいた。予想以上に早いな。


「ん? 今の可愛い悲鳴は誰のだ?」


 少し棒読みで言う。皆が俺を見る中、一人だけそっぽを向いていた。


「べ、別に私じゃないわよ……?」


 カオリが悲鳴の主のようだ。ま、予想はできてたって言うか確信してたけどな。

 だってサクラは大きな声出さなそうだし悲鳴とか上げなそうだろ? 「……わー」とか一瞬遅れてから驚きそうだろ? しかも抑揚のない平坦な口調(棒読み)で。


 場所をリビングに変え、ミカエルからの情報を聞く。ミカエルはソファに座る俺の足元……ではなく膝の上に座った。をい。


「……」

「……」


 サクラが無言で弓を構え、静かに照準をミカエルに合わせた。番えている矢の数は二本。絶対頭と胸を狙ってやがる。

 それを見たミカエルが素早い動きで俺から離れ、ソファに挟まれているテーブルの横で跪いた。そしてサクラは弓をしまうと俺の膝の上に座り、安定するところを探すためかお尻をぐりぐり。


「で、では報告します。神殿を一つ見つけました。場所は【龍神山】を超えたさらに先にある秘境。敵のレベルも高く、最低でも170以上はあった方が良いかと。私は天使を出したのでギリギリですが攻撃を受けずに辿り着くことができました。そして、そこは深い森の中なので上からの神殿到達は不可能です。逆に中から外に出ることはできます。木々を破壊することはできません。なので必然的に徒歩で向かうことになります。が、そこは暗闇に包まれており魔法やアイテムで光を灯す必要があります。魔法を使うとMPが減ります」

「ん? それは当たり前じゃないのか?」


 魔法はMPを消費して使うのだから当たり前じゃないのか? 【光源】などの発動してから長時間の間効果を発揮する(バフを除く)魔法は、時間に応じてMPを消費するため、ミカエルが今言ったことは態々言うことではない。


「MPの量が減るのではなく、最大MP量が減るのです。森から出れば元に戻りますが。まさに強化イベントにピッタリな難易度ではないでしょうか」


 そういうことか。なんと面倒臭い縛りがあるもので……。でも魔法を使わなければいい話……あぁ、暗いから魔法は使わないといけないのか。松明とかアイテムであるけど耐久力がなぁ。

 ま、俺が明かり付けて魔法で戦うのはミライとサクラに任せるか。俺はカオリと接近戦。アンラ達はどうするかな。


「勿論行くよ!」

「いやでもレベル……」


 今のアンラのレベルは大体100。いくら何でも危なすぎる。ブルーとレッドに関してはさらに低いのだからここで待っていてもらった方が良い。


「「武器造ってます!」」

「仕方ないか。少しでも危険があるならやめた方が良いよね」

「レベル上げしたら連れて行ってやるから。それまで我慢な。多分それまでにはもっと見つかってるだろうから好きな所に行けばいい」

「うん、そうするよ」


 アンラに納得してもらって、俺達は早速秘境の森にあると言う神殿に向かうことにした。


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