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Save8 手、出してないよね?

 俺は未来を発見した。――路上に倒れた姿で。しかし、気は失ってないようだ。小さく、助けて、と呟いている。


「大丈夫か?」

「ッ!……いやぁ、こないでぇ……」


 極限状態だったのだろう。ここはスラム。そこら中にヤバいやつらがいる。よく気を確かに持てたと思うよ。俺だったら、多分もう諦めてると思う。


「大丈夫だ。何もしない。朝倉たちが探してたぞ?」

「! か、薫……?」

「ああ、クラスの皆がお前の事探してるぞ」

「み、皆が……」


 そのことを聞いて安心したのか、泣き出してしまった。


「怖かった……怖かったよぉ…………」

「わかった。わかった。よく頑張ったな」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああん!」


 ……よほど怖かったんだろうな。でもね? そんなに大声で泣かないで? 耳が死にそうなんだけど?



「うっぐ……ぐすっ……おえっ」

「吐くなよ!?」

「わかりました。我慢します……」

「とりあえず、俺が泊まっている宿に行くか?」

「……はい。……ごめんなさい」

「これくらい気にすんな。困ったときはお互い様だ」

「ふふ、……ありがとうございます」

「どういたしまして」




「さてと。明日葉、事情を聞かせてくれ。何があった?」


 俺は今泊まっている宿に未来を連れてきて、事情を聴いた。……宿の店主や宿泊者たちにニヤニヤされた。解せぬ。


「……ログアウトが出来なくなったんです」

「……え? それは本当?」

「はい。いつの間にか消えてました。ログインした時はあったのに」

「う~ん……わからんな」

「ですよね……」

「あ、そうだ。明日葉──」

「ミライ、です。このゲーム内での名前」

「わかった。ミライ、宿はどうする? この宿にするか? それとも他の宿?」

「……お金がないです」

「お金は俺が払うから」

「そんな、悪いです……」

「とりあえず、どうする?」

「私は……キラ君と一緒に居たいです!」

「お、おう? 一緒に?」

「はい! 一緒です!」


 この方、頭壊れたのでは?


「俺は男だぞ? 一緒の部屋でいいのか?」

「はい。キラ君になら、その……え、エッチなことされても、いい、ですよ?」

「ふざけてんのか?」

「ふざけてなんかいないです! だ、だって、今まで一人だったし怖かったから、誰かと一緒に居たいんです!」

「なら明日、朝倉が来るからもう平気だな。今日は仕方ないから、一緒に寝るか」

「はい! ……出来ればずっとキラ君と一緒に居たいな」

「ん? 何か言ったか?」

「なんにも言ってないです!」


 そういえば、ミライのステータスってどんな感じだろう。勝手に見れるけど、やっぱ聞いといた方が良いかな。


「そういえばさ、ミライのステータスって、どんな感じ?」

「え、私の、ですか? 私はですね、魔法を使いたかったので、魔法スキルオンリーですよ? 見てみますか?」

「いいのか?」

「キラ君ならいいですよ!」

「ありがと」




ミライ

種族:人

状態:正常

Lv.3

HP:1,800

MP:650

体力:60

攻撃力:21

防御力:24

魔法攻撃力:32

魔法防御力:28

俊敏:29

運:7


〈スキル〉

[コモンスキル]

・火属性魔法Lv.2 ・水属性魔法Lv.2 ・風属性魔法Lv.2 ・地属性魔法Lv.1


〈所持金〉

 32G



「こ、これは……」

「ど、どうですか?」

「宝の持ち腐れだな」

「え?」

「今度から、俺と一緒に魔物を狩りに行くか。レベル上げしよう」

「! はいっ! お願いします!」

「とりあえず俺はログアウトするからな。もう明日まではログインしないと思う」

「そんな……」

「ごめんな。不安だよな。……どうしようかな……」

「大丈夫です! また明日!」

「そうか? じゃあ、また明日」



 翌日。


「未来見つかった?」


 クラス委員長の薫がクラスの皆に向けて問いかけた。しかし、誰からも良い返事は帰ってこない。


「昨日も見つからなかったか……。雲母君、今日から、手伝ってくれんだよね?」

「ああ、そのつもりだったぞ」

「だった……?」

「探す必要がなくなったからな」

「え、それってどういう……」

「昨日、始まりの街のスラムで見つけたんだ。倒れているところを」

「そ、それは本当なの!?」

「本当だよ。で今は俺が泊っている宿で保護している」

「よかった~。……ところで、雲母君。まさか未来に手、出してないよわね?」

「だ、出してないよ。誘われたけど……」

「誘われた!? 未来に!?」

「そ、そうだけど?」


 八雲は事実を話しただけなのに、薫にとても驚かれた。


「で、なんで未来はずっとゲームの中に居たの?」

「それが……ログアウトが出来なくなったらしい」

「そんなバグがあったの!?」

「いや、バグじゃないと思う」

「なんで?」

「これを見て」


 八雲は薫にとある記事を見せた。それはAWOに関するものだった。

 実は八雲、昨日ログアウトした後に未来のようなことになっている人はいないか調べていたのだ。結果、500人近くの人がいまだにゲームの世界から、現実の世界に帰ってこられていなかった。


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