どうして数学を教えてくれるのっ?
今、この光景を他の生徒に見られたら、あいつらはどう思うだろうか。
碧彩はそんなことを考えていた。
きっと、誰かに笑われるのだろう。
どうして私が1位なのだろうと疑問に感じる人もいるだろう。
別に、そこまでして1位を取らなくてもいいだろう、と言う人もいるだろう。
そう言えば、どうして結亜は私に数学を教えてくれるのだろうか。
教えなければ、容易に1位を取ることも出来るはずだ。
それほどまでに私は数学が苦手なのだから。
そんなことを考えながら、碧彩は問題を解いていた。
すると、結亜に思いっ切り背中を叩かれた。
「だーかーらー!そこは違う!そもそもグラフが間違ってる!」
「そこも違う!ここはsinじゃなくてcos!」
「結亜ー、もう休憩しない?ほら、1回休憩した方がきっと解けるようになるよ!」
見込みがないのを知って、碧彩は結亜ち言う。
案の定、
「休憩ならさっきしたでしょ!まだあれから5問しか解いてないよ!もー、碧彩ったらまだ寝ぼけてんの?」と言われてしまった。
「違うけどぉ、だってさー、できないのにやっても・・・ってなるじゃん、私は数学を嫌ってないのに、数学が私を嫌うんだもん。そりゃあでk」
「そういうこと言うから碧彩は数学出来ないんだよ!ほら、そこの雑草たちも応援してるよ!」
碧彩は必死に反論する。
「うぅ・・・あれは雑草じゃなくてカタバミにハルジオンにオオイヌノフグリだもん!」
「今話してるのはそこじゃないでしょ!このままじゃ一生数学できないよ?」
「・・・ガンバリマス」
すると、結亜が
「さっきからぼーっとしてるけどどうしたの?何か悩みとか?」
・・・そんなに私はぼーっとしていただろうか。
驚いて結亜に問う。
「私、そんなにぼーっとしてた?」
「うん、してたよー、何かあったの?」
「うーん、そういう訳じゃないんだけどね・・・」
と前置きながら、碧彩はさっき思ったことを結亜に聞いてみた。
「どうして結亜は私に数学を教えてくられるのかなって。・・・ああ、別に嫌なわけじゃなくて、私が数学出来なかったら結亜は1位でしよ?何で結亜は1位撮ろうとしないの?」
「ああ、それは・・・」
結亜は言葉を濁す。
「ん?どうしたの?」
「いや、何でもない。碧彩には話してもいいかなって思ってさ。」
そう言って、結亜が話してくれたのは、こんな話だった。
「うち両親が相当頭良くて、だから自分の子供たちも当然頭良いだろうって思ってて、うち妹がいるんだけど、妹はそんなに頭が良い訳じゃないから両親は私に期待してるのね。だからテストで100点取って当たり前、1位になって当たり前って。で、私はそれが嫌で、高校いったら自分と同じ学力の人がいっぱいだから、1位取れなくなると思ったの。でも、テストが返されてみると2位で。ああ、所詮こんなもんかーって思ったっていうか。でも、自分の上に名前があって。その人に興味持ったのね。そんな時にその人と同じクラスになって。その人が数学できないって知って、その人が数学の点数低いと自分が1位になっちゃうからこれはもう頑張ってもらうしかないなって思ったわけ。」
碧彩はハッとした。
「つまり、結亜が私に数学を教えるのは最終的に結亜のためになるってこと?」
「うん、そういうこと。」
「つまり、結亜は両親に諦めてもらうために私に数学を教えてるの?」
「うん、そうだよ。でも、それだけじゃなくて、普通に友達が困ってたら助けてあげるじゃない?、それとおんなじだよ。」
「結亜・・・」
「さあて、この話はおしまい!早く問題解かないと終わんないよ?」
そう言うと結亜はテキストのページをめくって、
「次はこの問題。今までの復習だから解けるよね?」
と言った。
碧彩は
「う・・・うん!頑張る!」
と言いながらいそいそと問題に取り組むのであった。