序曲
「ねえ桜井さん!一緒にバンドやろ!」
「…は?」
―全ては彼の一言から始まった。
僕の歯車が鈍い音をたてた。
1章 序曲
桜の花びらが雨と共に舞う中、着慣れた制服に身をまとい、今日から高校2年生となる桜井天音はいかにも眠そうに目を細め登校していた。
彼女は女だが仲の良い人の前だと1人称が僕になるというなんとも珍しい女子高生だ。
校門でクラス別けの紙を受け取り、近くにいた仲の良い友達と少しの間談笑して、新しいクラスに向かった。
クラスにつくと、いくつかのグループが出来ていた。
たいていの人たちは部活が同じもの同士で集まっている。
そのうち気が合う人と仲良くなれるだろうと考えた桜井はとくに急ぐまでもなく黒板に張り出されている席順を見て自分の席に座り、ボーっと携帯をいじっていた。
クラスも騒がしくなり新しい担任が来て、SHRがはじまり、お決まりの自己紹介が始まった。
17番の桜井は、他の人の自己紹介を参考に、名前、前のクラス、部活、趣味を言った。
部活といっても帰宅部だが。
趣味は普通に音楽鑑賞。
最後にお決まりの「いろいろ迷惑かけると思いますが仲良くして下さい。よろしくお願いします。」と頭を下げ、皆の拍手を耳にしつつ着席した。
その後も自己紹介は続き、時折笑い声が聞こえる中桜井はボーっとなにも考えずに適当に聞き流していた。
先生が明日の予定を伝え終わると起立の声が聞こえた。
今日はもう帰れるらしい。
やっばい先生の話聞いてないから明日の予定わかんないや。
まぁ時間割表配られたしなんとかなるだろ。
どうせ初日は授業の説明だしな。
さっさと帰ってギターでも弾こっかな。
「桜井さん!あのさ、相談があるんだけどちょっといい?」
僕が帰りのしたくをしていると同じクラスの男子が話しかけてきた。
名前はえっと…なんだっけ。
そんなことを僕が考えていると彼は僕には眩しすぎるくらいの笑顔で言った。
そこで冒頭にもどる。
はっきり言って 意 味 が わ か ら な い 。
僕は彼の名前を知らないわけだから当然面識があったわけでもない。
忘れてしまったという可能性もあるかもしれないがたぶん初対面という考え方があっているだろう。
逆になぜ彼がぼくのことを知っているのだろうか。
「俺、パンクロックが大好きなんだ。一緒に曲をつくろう!」
そこから僕の毎日はがらりと変わった。
彼の一言によって。パンクロックという言葉にひかれて。
いや、僕はただ無意識に平凡な日々に飽きて刺激を求めていただけもしれない。
ただそれだけのはずだった。
そう、それだけの…。
読んでくださりありがとうございます。
まだまだ未熟ですが、感想を書いていただけると幸いです。