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逆整形

作者: さきら天悟
掲載日:2017/05/05

「人体への影響は、まったくありません。

それに、失敗はあり得ません」


スーツをきめた男は渡した資料を説明した。


手持ちの資料から男に視線を上げた老人はひとつ頷く。

話の内容に満足しているようだ。

ただ、まだ表情は厳しい。


「もう一つ利点があります」

男は人差し指を立てる。

「交際している相手は絶対に浮気しなくなります」


老人は目尻を下げ、顔を崩す。

その視線の先に女性がいた。

二十歳くらい、色白で頬がふっくらしている。

悪く言えばお多福のようだが、高貴さを漂わせている。



男の顔が真剣になる。

「ただ・・・」

一つ間を置く。

「少々お値段が・・・」


「分かっておる。

1本だろう」

老人は当たり前のように言った。


男は老人の圧に震えあがる。

男は言葉が出ず、大きく頷く。

だが、心配になる。

1本とは1千万円ではなく、1億円なのだが。

本当に分かっているだろうか。

でも、訊ける雰囲気ではない。


「あと、それにちょっとお手をお借りしたいのですか・・・」


「それも、訊いておる」

老人は男の言葉を遮った。


噂ではかわいい孫のためならなんでもやるという噂。

老人は政界のフィクサーと呼ばれ、闇社会とも繋がっているとも。


男は資料を片付け、二人に深く頭を下げた。

色白の女性は、にっこりと微笑んだ。

でも、なぜか、彼の背に悪寒が走った。




一月後、当然、手術は成功した。

その半年後、老人の孫娘は、若手イケメン俳優と結婚した。

プレーボーイと呼ばれたイケメン俳優は彼女にぞっこんのようで、

それから、浮いた話を一切聞かなくなった。

まあ、上手く隠していると噂されたが。



それから一年が経った。

男はまた老人に呼ばれた。

なんでも、礼をしたい、とか。

男は緊張して、前に来た応接間のソファに座った。


老人が入って来た。

その後ろに、女性が。

20代後半、痩せすぎのような・・・


男に緊張が走った。

礼を兼ねて、仕事の依頼のようだ。


老人はニヤリと嫌な笑顔をした。

「実はこの孫娘が、3ケ月後、この男と結婚する」

老人は写真をテーブルに置く。

彼女は恥ずかしそうにうつむく。


男は写真を見て、驚愕した。

手の震えが止まらない。

結婚式で見かけて、一目惚れしたと言う。

その写真は、老人に呼ばれて出席した、孫娘の結婚式で、

男本人が写っている写真だった。

老人は男の目を見据える。

「また、結婚式に出席して欲しい」

と念を押した。


男は小さく頷いた。



男は諦めた。

彼女が嫌いという訳ではない。

ただ、男の好みとは違った。

「しょうがない・・・

俺も逆整形手術を受けるか・・・」


男は直ぐに会社に申請して、手術を受けた。

手術費用は老人が快く出してくれた。


それから男のバラ色の人生が始まった。

でも、会社に行くのが億劫となった。

妻といつも一緒にいたい。

彼はその理由を知っていたが、どうしようもない。

脳に埋め込まれたチップが作用し、

快楽ホルモンのドーパミンが分泌されるのだ。

逆整形とはある特性の異性を見ると、

ドーパミンを分泌させるチップを脳に埋め込む手術。

だから、依頼に来た人物の交際相手の頭にチップを埋め込むのだ。

まれに男のように自主的に・・・

後は・・・


『逆整形、絶対に失敗しません。

費用は一億円。

被手術者の捕獲方法によって、別途費用が生じます』

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