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逆整形

作者: さきら天悟

「人体への影響は、まったくありません。

それに、失敗はあり得ません」


スーツをきめた男は渡した資料を説明した。


手持ちの資料から男に視線を上げた老人はひとつ頷く。

話の内容に満足しているようだ。

ただ、まだ表情は厳しい。


「もう一つ利点があります」

男は人差し指を立てる。

「交際している相手は絶対に浮気しなくなります」


老人は目尻を下げ、顔を崩す。

その視線の先に女性がいた。

二十歳くらい、色白で頬がふっくらしている。

悪く言えばお多福のようだが、高貴さを漂わせている。



男の顔が真剣になる。

「ただ・・・」

一つ間を置く。

「少々お値段が・・・」


「分かっておる。

1本だろう」

老人は当たり前のように言った。


男は老人の圧に震えあがる。

男は言葉が出ず、大きく頷く。

だが、心配になる。

1本とは1千万円ではなく、1億円なのだが。

本当に分かっているだろうか。

でも、訊ける雰囲気ではない。


「あと、それにちょっとお手をお借りしたいのですか・・・」


「それも、訊いておる」

老人は男の言葉を遮った。


噂ではかわいい孫のためならなんでもやるという噂。

老人は政界のフィクサーと呼ばれ、闇社会とも繋がっているとも。


男は資料を片付け、二人に深く頭を下げた。

色白の女性は、にっこりと微笑んだ。

でも、なぜか、彼の背に悪寒が走った。




一月後、当然、手術は成功した。

その半年後、老人の孫娘は、若手イケメン俳優と結婚した。

プレーボーイと呼ばれたイケメン俳優は彼女にぞっこんのようで、

それから、浮いた話を一切聞かなくなった。

まあ、上手く隠していると噂されたが。



それから一年が経った。

男はまた老人に呼ばれた。

なんでも、礼をしたい、とか。

男は緊張して、前に来た応接間のソファに座った。


老人が入って来た。

その後ろに、女性が。

20代後半、痩せすぎのような・・・


男に緊張が走った。

礼を兼ねて、仕事の依頼のようだ。


老人はニヤリと嫌な笑顔をした。

「実はこの孫娘が、3ケ月後、この男と結婚する」

老人は写真をテーブルに置く。

彼女は恥ずかしそうにうつむく。


男は写真を見て、驚愕した。

手の震えが止まらない。

結婚式で見かけて、一目惚れしたと言う。

その写真は、老人に呼ばれて出席した、孫娘の結婚式で、

男本人が写っている写真だった。

老人は男の目を見据える。

「また、結婚式に出席して欲しい」

と念を押した。


男は小さく頷いた。



男は諦めた。

彼女が嫌いという訳ではない。

ただ、男の好みとは違った。

「しょうがない・・・

俺も逆整形手術を受けるか・・・」


男は直ぐに会社に申請して、手術を受けた。

手術費用は老人が快く出してくれた。


それから男のバラ色の人生が始まった。

でも、会社に行くのが億劫となった。

妻といつも一緒にいたい。

彼はその理由を知っていたが、どうしようもない。

脳に埋め込まれたチップが作用し、

快楽ホルモンのドーパミンが分泌されるのだ。

逆整形とはある特性の異性を見ると、

ドーパミンを分泌させるチップを脳に埋め込む手術。

だから、依頼に来た人物の交際相手の頭にチップを埋め込むのだ。

まれに男のように自主的に・・・

後は・・・


『逆整形、絶対に失敗しません。

費用は一億円。

被手術者の捕獲方法によって、別途費用が生じます』

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