登場人物は?
俺は女を殺した。女の名前は永倉 奈々。連続殺人事件の第三の被害者だ。もっとも、警察以外では連続殺人事件だとは思われていないだろうがな。
復讐。
これは無意味な殺人ではなく復讐だ。だから俺は捕まるわけにはいかない。
目標は残り二人。庭先で燃えてる髪の毛には目もくれず、俺はスマホに写る二人の女を睨みつけた。
髪の毛が炭に変わり果てた頃。俺は仕事へと向かうために、車に乗り込んだ。仕事場までは車で十分。余裕をもって到着することが出来る。
その時、不意にスマホが鳴った。
私は名探偵クイーン、一部ではそう呼ばれる有名人である。そんな私は今、ある殺人事件について調べている。
今回もその名前が役に立った。被害者の交友関係を探って連絡を取ってみたところ、事件について証言したいことがあるという人がいたのだ。その人とは明日の昼過ぎに会うことになっている。
今日はそれまでにやることをしないと。
そう考えて、私は探偵社を飛び出した。バイトに行くために。
俺は事件現場の学校に来ている。交番ではなく、いきなり現場に呼び出されるのも珍しいことではない。今回は交番に向かってる途中で連絡があったおかげで、かえって現場に早く着くことが出来た。
それよりも気になるのはーー
「早いですね。飛鳥さん」
考えることを邪魔するかのように、後ろから声をかけられる。
振り返らずとも声の主はわかっている。
「遅いぞ。東」
こいつは、東 甲太郎。俺の後輩の刑事だ。
「すいません。色々あったもので」
「その靴だろ」
明らかに新品の靴だ。事件現場にそんなのを履いてくるとはな。
「いや、家が遠いんですよ。靴は関係ないですから」
こいつの家の場所は知っている。連絡をもらってすぐに家を出たなら、俺より早くついているはずだ。つまり、突然の呼び出しに対応できないということだ。
まだまだ新米と言わざるを得ないな。
話をするのは明日。頭ではわかっていても早く話したくて仕方がない。
そんなことを考えていたせいだろうか、皿を落として割ってしまった。
「大丈夫か? 体調悪いんなら休んどけ」
皿が割れる音を聞いて、店長が駆けつける。彼女は口調こそそっけないがとても優しい店長だ。幼馴染である私が保証する。
「いえ、大丈夫です。すみません」
私は出来るだけ自然な笑顔でそう返して、破片を片付けようとした。
「僕がやるよ」
髪をなびかせて、私と店長の間に入ってくる男性。お金持ちなのになぜかバイトをしている芹沢先輩だ。しかも女性に対してだけ優しく対応し、男性には全く対応しないという困った人である。
「おまえはフロア担当だよな」
言葉は普通だが、店長は明らかにお怒りモードだ。
「フロア、行きまーす」
そのことを目ざとく察知して、芹沢先輩は髪をなびかせながら去っていく。何しに来たんだあの人は。
去っていく男の背中を見ながら、店長は小さく呟く。
「ったく。芹沢さんは」
「そうですね」
髪の毛をなびかせながら去っていく男を、私と店長はしばし見送っていた。