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これ百合小説だからぁ!

 木下あんず 16歳、女の子から「絶対に惚れさせる」宣言をされました。


 忘れたいのに、頭からはなれてくれないのは由良ちゃんの魔法かなんかでしょうか。

 そう、きっと悪魔の魔法だっ! 

 なーんて、いろいろ考えてたらあっという間に放課のチャイムが聞こえてきた。

 

 それと同時に携帯がふるえた。

 まあ予想はしてたけど、由良ちゃんからメール。

『今日は一緒にかえろ♪ いつものとこで待ってるね』

 そんなまるでカレカノみたいな甘いメールが来たわけですよ。でもあたしには

『今日は一緒に帰ってやるから今すぐ来いよ』

 なんていう恐ろしい文に見える。はぁ、こりゃ重症だ。


 仕方ない、行ってあげようかな。いつものとこって屋上のことでしょ、きっと。

 あたしがスクールバックに腕を通したときだった。

 ――あーあー

 スピーカーから聞こえた声、このムダにカッコいい声……これ篠原でしょ。

 ――木下あんず。今すぐ学習室に来るように。

 げっ! そういや、今日そんなこと言われてた気もする。

 最悪だ。

 てか、放送で話すだけで黄色い歓声があがるって……。そこでキャーキャー言ってる子たちと代わってあげたい。憧れの先生と居残りとかいいシチュエーションじゃん、なんて。って、それよりもまず……

「由良ちゃんにメールしなくちゃ」

 きっと放送聞こえただろうけど、一応ね。待たせちゃ悪いし。

『ごめんね>< 今日いのこりで遅くなっちゃうから先に帰ってて』

 よしっ!送信完了っと。

 とりあえず、学習室だ! 


 と、まぁ来てみたものの、篠原と二人っきりで勉強だと思うと気が重い。

 やっぱり、忘れてたことにして帰ろうかな。うん、名案じゃん! そう思ってくるりと体を反転させたときだった。

「うわっ」

 何かにぶつかった。だれ? おそるおそる顔を上げると……げっ! 篠原じゃん。

「どうした、木下」

 こうやって見ると篠原は背が高い。あたしの頭のところに胸があるんだもん。

「いや、なんでもないです」

「そうか」

 篠原はそう言うと学習室の扉に手をかけた。

 うわっ/// コイツ、なにげにいい指してんじゃん。由良ちゃんとは明らかに違うんだけど、男の人特有の骨とか血管とか…正直ちょっと惹かれる。

 思わずガン見してたら「どうした?」なんて言われて、あたしはしぶしぶ席に着いた。


「じゃあ、これやって」

 どさっと目の前に置かれたプリントたち。ざっと10枚はある気がするんだけど。

「はい」

 シャーペンを握ったはいいけど、最初からさっぱり分からない。

「分からないのか?」

 あきれたように聞くけどさ、仕方ないじゃん。分かんないんだもん。

「はい」

「どれ。ここはだな、この公式を……」

 わわっ/// 指! 指、近くないですか?? なにこの状況。そういや前にもこんなことがあったような……。でも、今回は理性に負けたりなんかしないもん。

 そう、絶対に……うう…やっぱり、無理かも。

 

 ――ぎゅっ


 あーほらほら。この前とまったく同じパターン。ついにやってしまったよ。

「なっ! お前、誘ってんのか?」

 ニヤリと微笑む篠原。いやいやいや、断じてそんなことはありません! 何が悲しくてあんたを誘わなくちゃいけないのよ。

「ちがいます///」

「じゃあ、この指はなんなんだ?」

 篠原が指差す先には、しっかりとヤツの人差し指を握るあたしの手が!

「わわっ、す、すみません」

 急いで手を引っ込める。

 うわぁー、何やってんだあたし。にしても、やっぱり男の人の指って握り心地いいな……。

「俺の指、好きなの?」

 いきなり言い当てられて、ふるふると首を横に振るので精一杯だった。

 すると、篠原はいきなりふっと笑って「可愛いやつ」って。え……

「んむっ」

 いきなり唇をふさがれる。

 でもそれはキスみたいなやわらかい感触じゃなくて、もっと固くてあたしの大好きなもの。そう、いきなりあたしの口に突っ込まれたのは篠原の指だった。

「どう? おいしい?」

 ひとを馬鹿にしたような目で言われて、ほんとにむかつく。だけど、指を咥えさせられた今、あたしはあまりにも無力だった。

 抵抗しようとしても力が入らない。

「んっ…ふぁ……んん」

 その指を舌にからめたり、その指でつーっと歯茎をなぞったり。考えるだけでどきどきする。そして何より、篠原は上手い。焦らしたり攻めたり、不覚にもすごく気持ちいいなんて思っちゃった。

「んっ……んぁ…ふぁ…」

「すっげーエロい」

 そういってまた焦らし始めたかと思うと、篠原はそっと指を抜いた。

「ふぇ?」

 予想もしないタイミングでやめられて思わずまぬけな声を出してしまった。

「何? まだ足りないの?」

 篠原はまた意地悪に笑うと、さっきの人差し指をあたしに向けた。あたしの唾液で汚れてしまった指を見てるとなんだか恥ずかしくなる。少しうつむいたとき、篠原が口を開いた。

「あんずちゃん、彼氏とかいるの?」

 とっさな質問にびっくりしながらも、あたしは首を横にふった。でもふとあたまをよぎったのは由良ちゃんの顔。

「でも、彼女なら……」

 はっ! しまった!! なんで言っちゃったんだろう。それにあたし、まだ彼女だって認めたわけじゃないしね!

「ふーん、指フェチでさらにレズ……ねぇ」

「わ、悪いですか。てかまだレズじゃないです」

 どんどん指を近づけてくる篠原に耐え切れずにふいっと視線をそらす。

「まだってことはこれからレズになるってこと?」

「ちがっ……ん」

 また口に入ってこようとする篠原の指をあたしは必死に拒んだ。

「なに? 彼女がいるから我慢するの? ふーん、面白いじゃん」

 そう言って篠原は意地悪な笑顔をつくると教室をあとにした。去り際に「また舐めたくなったらいつでもおいで」なんて言ってたのは聞こえなかったことにしよう。



 いろいろあって頭がついていかない。

 だけど今、ひとつだけ言えるのは「由良ちゃんに会いたい」ってこと。

 なんでか分かんないけど、会いたいって思ったんだ。


 由良ちゃん……

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