イケメンと呼び出しメール
昨日はつい了解しちゃったけど、こういう関係ってどうなんだろう?
あんな素敵な指があたしのものになるなんて、夢みたいに嬉しい。
でもね、あたし……正直キスって苦手なんだよ~。
口と口が触れ合うんだよ! 柔らかいもの同士が触れ合うのってなんか苦手。
だからね、ドラマのキスシーンとか見てもなんであんなことするんだろう? くらいにしか思ってなかったんだ。
だけど、だけどね!
昨日の由良ちゃんとのは……イヤじゃなかったかも。
んーでもやっぱり抵抗が……
「…た」
これからまたキスすることになるだろうし……
「…した」
だから、やっぱり慣れなくちゃいけないのかな。でもさ……
「木下!」
「え?」
いきなり大声で叫ぶなんて近所迷惑……って、
「篠原っ!……先生」
げっ! そういや今って授業中だった??
でもね、先生。あたしは今それどころじゃないんだってば!
「この問題といてみろ」
勝ち誇ったようにニヤリと篠原は口元を吊り上げる。
どうでもいいけど、篠原はムダにカッコいい顔をしている。新任教師なんだけど、そのルックスのおかげで先生・生徒ともに彼には一目おいているみたい。
あたしは”先生と生徒の禁断ラブ”みたいなのには興味ないけどね♪
「はーい」
この問題をとけばいいんでしょ。篠原のやつ、絶対あたしには無理だと思ってる。
でもね、あたしはやればできる女よ!
チョークを片手に黒板の数式をにらみつける。
「……」
こ、これはっ……!
ラスボス級じゃないかっ! うん、前言撤回。
「分かりません」
せめていさぎよく負けを認めよう。
「放課後、学習室な」
「イヤです」
「じゃあ、次のテストで100て……」
「分かりました!」
あたしが席に戻ったとき、ちょうどポケットの中で携帯が震えた。
メールだ。誰からだろ?
先生の目を盗んで、こっそりメールを確認。
差出人は由良ちゃんだった。
『今すぐ屋上に来て』
……なんで?
てか今授業中じゃん。
『休み時間でもいい?』
そう返信して再びポケットに携帯をしまう。
だって、あたしただでさえ馬鹿なのに授業サボるなんてしたら、通信簿に恐ろしい数字が並んじゃうもん。
何事もなかったかのようにペンを握ると、またまた携帯が震えた。
やっぱりメールは由良ちゃんからなんだけど、そのメールには何も書かれていない。
かわりにあったのは写メだけ。
そう、ただの写メ……じゃないでしょ、これはぁあああ!
あたしの携帯の画面には…………なんと由良ちゃんの超素敵な指がっ!
「先生、具合が悪いので保健室に行ってきますっ!」
あたしは携帯を握り締めて教室を飛び出した。
「こら、待て! 木下!」
そんな篠原の声が聞こえた気もするけど、気にしない。
欲望には勝てません!
勢いよく屋上の扉を開ける。
「由良ちゃんっ!」
シーン……
「由良ちゃん?」
シーン……
あ、あれ? いないのかな。
そう思って屋上をぐるりと見渡す。
「いたっ!」
すみっこに寝転がってる由良ちゃんを発見。
寝てるのかな。
起こさないようにそぅっと近づく。
すやすやと寝息を立てる由良ちゃんの寝顔はすごく、きれいだった。
でもでも、もっと素敵なのはその指! 屋上に来たんだもん、ちょっとくらい……いいよね?
「失礼しまぁ~す」
そっと指に触れた瞬間。
あたしの視界は反転した。
えーっと、一つ質問してもいいでしょうか。
あたしはなぜ、由良ちゃんに押し倒されているのでしょうか。
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