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はじまりはその指でした。

 はわわ……///


「いい? ここはXに8を代入して……」

 今あたしは数学のお勉強中。

 だけどね、数式を指差すその白くてすらっとした指があまりにも素敵で……説明なんて聞こえません!

 だってさ、こんなにも素敵な指を目の前でちらつかせるなんて。

 絶対に確信犯だよね、この子!

「ね、聞いてる?」

「ふぇっ!」

 いかんいかん。ここはまず勉強に集中しなくては!

「ごめんごめん、ちゃんと聞いてるよ?」

 でもね、由良ユラちゃん。君のせいで集中できないんだってば!

「あっ! ほら、ここも間違ってるじゃん」

 だから指差さないでってば! そんな指近づけたら……もう……



 我慢できないに決まってんじゃん!!



 ――ぎゅっ


「ん?」

 はっ! やってしまった。やってしまったよ。

 あまりにも素敵な指だから、つい……握ってしまった!


 由良ちゃん、お願いだからそんな目で私を見ないで……


「どうした? いきなり人の指つかんで」

 由良ちゃんはそうやって軽く笑い飛ばすけどね、

 なんて言い訳したらいいの!


「な、なんでもない…です///」


 あたしのバカ。

 いま絶対、顔赤いって!

 普通に「あはは~なんとなく?」とか言えばいいじゃんか!!!


「あんず……?」


 由良ちゃんが真っ赤に火照ったあたしの顔をのぞきこむ。

 まるでお人形さんみたいにキレイな顔立ちをしていて、そのくりっとした大きな瞳はしっかりとあたしを捕らえた。

「……///」

 そんなことされたらいくら女のあたしだって照れちゃうに決まってる。

「なんかあるなら言ってみ?」

 由良ちゃんは大事なお友達だから、隠し事はしたくないんだ。だけどね、それとこれとは別のはなし。本当のこといったら由良ちゃんに嫌われちゃうかもしれない。

 それだけは絶対にイヤだもん。

「なんでもない」

「あんず……大丈夫、言ってごらん?」

 由良ちゃんはずるい。

 そうやって優しい声で、優しい顔で言えばあたしが逆らえないって知っててやってるんだもん。

「あ、あたし! じ、実は……ゆ…………」

「ゆ?」

 もう、どうにでもなれっ!

「指フェチなの!」

 ああ、言ってしまった。

 終わった……わたしの青春。私たちの友情……。


「ふーん、そっか」

 えっ……なんか、反応うすくない??

 てか、あれ? こんな変態宣言してるのに引かないの?

「で?」 

 え、いや。で? って言われても。

「あの、あたしのこと嫌いにならないの?」

「はぁ? なんで嫌いになるのよ」

 あきれたようにあたしを見つめる由良ちゃん。

「由良ちゃん、大好きっ!」

 なんていい友達をもったんだ、わたしはっ!

 変態宣言をしてもなお、あたしと友達でいてくれるなんて……



 でも、現実はそんなに甘くなかった。



 だって、次の瞬間にはもう、あたしの唇にやわらかい感触があったんですもの。



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