夏祭り
中学一年の山本は柔道部に入っているが小柄で童顔、小学生に間違えられるほど幼く見え仕草も女性的だった。髪を伸ばし気味で女の子と間違えられることが多い。夏祭りに友達みんなと行くことになった。トモ君の家で打ち合わせをするが、トモ君の高校2年生のお姉さんにちょっかいを出されたりからかわれたりした。祭り当日、友達はみんな浴衣を着ていて、山本だけ私服だった。皆にはめられたようだ。お姉ちゃんとみんなは無理やり山本にお姉ちゃんの子供の頃の浴衣を着せ、化粧までさせた。祭りに行くとクラスの女子とか、塾の友達に声をかけられるが、誰も山本と気がつかない。山本はだんだん女の子の雰囲気が出てきて、塾の男の子に声をかけられるとドキドキする自分にきがついた。お姉ちゃんと二人きりで花火を見ていると、本当は妹が欲しかったと言われる。山本は女の子の浴衣を着ていることに抵抗を示さなくなった。
ええ!、僕は浴衣を持っていない。
「お姉ちゃんの、子供の頃の浴衣ならあるんだがなあ。」
「えっ、ヤマちゃん着たいの?いいわよお、あたし、着付けするっし。」
トモ君のお姉ちゃんに、嵌められた。
なんでこんな話しに、なったのだろう。さかのぼれば、一学期の終業式に始まる。
夏休み。僕たち子どもにとっては、一年間で最も重要なイベントだ。盆と正月とアイドルが、一緒に来たみたいな、ワクワクする時間だ。
でも、その前に、学校から渡された計画表を書かなきゃならない。中学生に、そんな先のことまで、分かるわけがないのに。しょうがない、適当に書いて担任に見せた。
「山本は、柔道に、プール開放、塾、名古屋の祖母の家。なかなか充実しているね。」
やったあ、うまくごまかせた。まあ本当のことばかりだけどね。
柔道は、体が小さくても、いじめられないようにと始めた。結構はまってる。軟弱な学校だから、強すぎる部員もいないし、ちょうどいい。
塾は無理やり親に行かされたが、友達ができたから、まあいいって感じの場所だ。
だけど、ほかに何があるんだろう?夏休みらしいこと、無いじゃないか。
プールも、おばあちゃんちも、毎年行っているし。だから、何か中学生の夏休みらしいこと、したいんだ。
ザ・夏休み、何だろうなあ。終業式のホーム・ルームを終え、僕は机にうっぷしながら考えていた。あと十分で、学校を出なきゃいけないのに。
「ヤマちゃん、夏休みどうすんだよ?」
トモ君が聞いた。
「塾が前半と後半あるし、プール開放は学校近いから、毎日行くし。後はおばあちゃんちに行くくらいだよ。」
「そんで、合間に部活かあ。僕もかわりばえしない夏休みだなあ。」
「俺はプールで、バタフライの練習。」
羽柴君が声をかけてきた。いつも面白いことを言っては、皆を笑わせる。ひょうきんな男の子だ。部活は入ってないし、クラスも違う。塾だけは一緒なんだ。
「ないなあ。」
トモ君は両手を頭の後ろで組み、後ろにそり返った。
トモ君はでかい、アメフト選手みたいだ。幼馴染なのに、なんでこんなに違うんだ。
「大きなプール行きたいよなあ。かわいい子いっぱいいるし、ビキニのお姉さんたちも、沢山いるぜ。」
羽柴君は、ニヤニヤしながら言った。ちょいエロ羽柴、皆はそう呼んでいる。
「へへ、いいかもだなあ。」
トモ君、背が高いからもてそうだよね。
「ヤマちゃんもさあ、エロいお姉ちゃん、見てみたいだろ?」
「そんなことないって!」
羽柴君は、いつも僕をからかう。
「ボク、可愛いわねえ。遊ばない?って。」
「よせよお!」
この間僕は、小学生料金で映画館に入ってしまった。中学に入って、学生証もらって嬉しかったから、中学生ですって自信満々に見せたんだけど。なぜか、おつりが多かった。
「僕、小学生料金で入っちゃった。」
て言ったら、クラスで大受けした。でも、なんか悔しい気持ちも、あるんだけど。
「流れるプール、ウォーター・スライダー、いいよなあ。」
「トモ君が流れてきたらさあ、みんな逃げちまうぜ。」
「トモ君、でかいから、迫力あるだろうね。」
「ヤマちゃん、途中でさあ、パンツ脱げちゃうかも。」
プールの授業で、トモ君に担がれ、ふざけて水の中に投げられた。水面で受け身をとって、かっこつけようって思ったんだが、パンツが、半分脱げそうになったんだ。
「女子がチラ見してたぜ。」
羽柴君がニヤニヤしてた。
「吉木さんも見てたよ。」
「ヤマちゃん、吉木さんのこと、ぜってえ好きだし。」
羽柴君たちは、誰が誰を好きだとか、そういう話をよくするんだ。
別に好きでも何でもない。だけどみんなから、からかわれているうちに、意識しちゃって、お話しもできなくなっていた。
とりあえず、家に帰ってから、みんなでトモ君ちに集まることにした。
通知表をお母さんに見せたら、長―いお説教。1と2は無かったが、音楽と体育の4以外はみんな3。僕なりに頑張ったのに。
だって、1と2が無くなったんだもの。小学校の時は、病気したから、学校に行けないことが多かった。補習なんてなかったし、褒めてほしいのになあ。
お母さんは、それなりの進学校出ているから、僕にも自分と同じような学校に、行かせたいと思っているのだろう。
「髪だって伸ばし過ぎよ、そろそろ床屋へ行きなさい。」
うちの学校、あまりうるさくないんだ。運動部だって、長髪OKなんだ。親のいた頃の学校とは違うのに。
ご飯を食べ、トモ君の家に行く。説教食らったから、少し遅れた。でも途中で走ったから、逆に早く着いた。走るのは得意なんだ。
「こんにちわあ。」
「あら、ヤマぴょん。トモちんは、近所のコンビニに、買い出し行ってんよ。でもみんな来るって聞いてたし、あがんなし。」
最近やっと、お姉ちゃんのギャル語にも、慣れてきた。でも時々、ついていけない。
お姉ちゃんは、何かと僕にかまってくる。今年高校二年生、めっちゃギャルになっちゃった。
お姉ちゃんが、タオルと飲み物持ってきてくれた。
「ほら、荷物置いて汗拭きなよ。」
「あ、ありがとう、ございます。」
僕は荷物を置いて、ジュースを飲んだ。
「うーん、ヤマぴょんと二人きり。どう、お姉ちゃんと一緒で嬉しい?」
「だから、そういうのやめてって。勘違いされちゃうからさあ。」
「勘違いって、なあに?」
「ええ、それはさあ。」
「可愛い♡、顔赤いじゃん。」
「走って来たし、暑いし、だからその。」
「ふふ、照れてんの?」
お姉ちゃんは、幼い頃から知ってる。それで、余計に親しみ過ぎるんだけど。
やばい、お姉ちゃん近すぎ。幼稚園の頃は手つないでお出かけしたり、一緒にお風呂も入ったし、てダメダメ、考えちゃ。
「ヤマちゃん来てたんかあ。」
助かった、トモ君帰って来た。
「お姉ちゃんと何話してたの?」
「夏休みのことだよお。」
トモ君は、図体がでかい割には、色々うといんだ。
「ああそうか、今日のテーマだしね。」
「テーマ?あんたたちなにすんの?」
「こんちわあ、羽柴でえす。」
良かった、羽柴君も来た。お姉ちゃんに、あれこれ聞かれるところだった。
「羽柴君、なんかエンタテイナーみたいな、しゃべり方やん。」
「はい、羽柴でございます。」
羽柴君、お姉ちゃんのこと平気だ。
「じゃあ、さっそく俺たちの夏休みについて話し合おうぜ。飲み物も買ってきたし。」
「俺たちの夏休み?略して『俺夏』なんかいいわねえ。」
「アニメのタイトルみたいで、カッコいいっス。」
羽柴君すごい乗り気だ。
「へえ、面白そう、お姉ちゃんも入れて。」
「あっ、お姉ちゃんは無しだなあ。」
「なんでよお。」
「だって俺たちの、なんちゃらかんたらだから、でございますから。」
「そう、そのとうりだねえ。」
僕は、お姉ちゃんがいると、何も言えなくなる。だから、うなずいているだけだった。
さっきだって、近づき過ぎて、Tシャツから胸がちらちら見えちゃって、何も言えなかった。
「分かったわ、あたし、席はずね。」
部屋を出て行く時、チラッと僕を見て、ニヤッとした。なんか嫌な予感がする。
「では、本日の議題について話しましょう。」
羽柴君やっぱし、タレントみたいだ。
「この間の話ではウォーター・スライダーが候補だったよねえ。」
「ちょっと待って。その前にみんなの予定とか、確認した方が良くない?」
「そうだね、みんなのスケジュール言って。カレンダーに書いてくから。」
調べていくと、みんなの予定が合う日って、あまりなかった。
「えーと、八月の十九日から、二十三日、こんなもんなんだ。」
「お盆はそれぞれ田舎に行くしなあ。お小遣い稼ぐ大事な時期だしねえ。」
「大きいプールとかさあ、調べたけど、僕らのお小遣いじゃいけないよ。」
「そっかあ、ナイトプールとか、きれいなお姉さんたち、いそうなのになあ。」
「もうちょっと、僕らのレベルに合うこと考えようよ。」
「八月十九日、近所の大山神社と商店街共催の夏祭りがあるなあ。」
「それだよ!青春て言えば夏祭り!ボーイ、ミーツ、ガール。恋が生まれる日。」
羽柴君は、それしか頭にない。
「その日、花火も打ち上げられるよ。」
「まさに、『俺夏』にふさわしい。」
みんな大げさだなあ。でも、神社だったら近場だし、親も外出許してくれるかも。
「交通費もかからないし、僕らのお小遣いでちょうどいいね。」
ということで、夏祭りに決まった。
羽柴君は夏祭りで、クラスメイトの女の子で、誰が一番浴衣が似合いそうだとか、早くも話題をそちらに切り替えていた。
トモ君の家を出るとき、お姉ちゃんと目が合った。
「夏祭りかあ、いいにやあ。みんなの浴衣姿見てみたいにゃあ。」
お姉ちゃん、聞いてたな。まっいいか。
それからの毎日、僕らはプール開放で会ったり、塾の夏期講習で会ったり、部活の練習で会ったり、中学ってこんなに忙しいんだ、と思いながら過ごしていた。
だから、先生に提出した予定表は、毎日消化していった。おかげで、友達と宿題の教えっこして、お盆が終わる頃には、宿題の大半が終わっていた。
小学校とえらい違いだ。僕は、成長したんだろうか?
部活じゃあ、暑くてたまらなかったけど、いつもトモ君と組みあって、背負い投げがうまくなった。
「女の子が、男の子と練習してる!」
夏期練習中、体育館覗いた女子に、からかわれてしまった。僕の髪は、サラサラで、ショートカットくらいの長さ。
昔から幼な顔で、幼児の頃は、よく女の子と間違えられた。お母さんは、それを喜んでたみたいで、背中ホックの服を着せたり、うさ耳のついた帽子をかぶせたりした。そういうのも嫌で、柔道部に入ったんだけど。
「あの子、見た目可愛いのに強いわねえ。」
まあいつものことだけど。でも、この頃は意識していないのに、女の子に間違えられるようなことしている時がある。
笑う時、手を口に持っていったり、動作が女の子ぽくなって、『やだあ』とか、女の子みたいな口の利き方をしている自分に、気がついたりする。
でも、遊ぶのは男の子とだ。女の子とは、ほとんど口を利かない。
お祭りの前日、僕らは神社の前で会った。
「ああ、もう屋台が出てる。」
「明日回る、屋台のルート考えようぜ。」
「俺、輪投げ得意なんだ。」
「そりゃあ、トモ君でかいもの。手がよく届くものね。」
「そうなんだよ、去年は輪投げ屋のおじさんに、おまけ上げるからそこでストップ、とか言われたよ。」
なんか楽しみになって来たなあ。商店街のはずれの神社、その裏手がちょっとした丘。
「あそこからさあ、花火よく見えるんだ。」
「ついでに、カップルがいちゃついてるの見えるよ。ヤマちゃんも吉木さん見つけたら、アタックしろよ。」
「なんで、そうなるんだよお。」
夜寝る前に、おばあちゃんや親せきからもらったお小遣いを数えた。よし、これなら沢山ゲームや買い物できるぞ。
ピロローン、スマホが鳴った。トモ君からかな?
違う!トモ君のお姉ちゃんからだ。いつの間にアドレス知ったんだ!
『明日お祭りだねえ、楽しみだねえ。』
『アドレスどうして知ってるの?』
『前うち来た時さあ、荷物置いてジュース飲んでたじゃん。こっち向かないで後ろ向きだったからさあ。そん時、アドレス入れといたんよ。嬉しいでしょww♡』
明日お姉ちゃん、なんかありそう。
翌日、屋台のマップが載っている、町内会のパンフレットを、デイバッグに入れた。
「危ないことしちゃだめよ。」
適当な返事をして、トモ君の家に向った。トモ君たちはすでに来ていた、が。
「ええ!なんでえ!。」
そこには、、浴衣姿のトモ君、羽柴君、トモ君のお姉ちゃんがいた。
「ヤマちゃん、浴衣着て来なかったんだ。」
「聞いてないもん!。」
「祭りと言えば浴衣じゃないか。浴衣姿の男女、最後は花火で決まりだし。」
羽柴君、時々意味不明。
「あら、残念ねえ。今日はヤマちゃんと浴衣着て歩きたかったのになあ。」
「僕たちはさあ、昨日お姉ちゃんに、浴衣着たらって言われたんだよ。」
「僕、浴衣なんて持ってないし。」
「そうよねえ、ヤマちゃんの浴衣姿、見たことないわねえ。」
お姉ちゃんのたくらみ確定だ。
「じゃあ、アタシの小さいころの浴衣、貸してあげようかなあ。」
「うん、それがいいねえ。」
「おっいいかも。」
「そうと決まれば、ヤマちゃんお出で。」
「やめてえ!」
お姉ちゃんの部屋に連れ込まれ、その後は見てないからと言われ、服を脱いで浴衣を羽織ったら、ついでに化粧もと、されるがままになっていた。
「お待たせえ、ジャーン。」
「おお、かわいい!」
「お化粧もしてなんか萌える。」
「大変だったのよお、口紅つけるとき動くからさあ、あやうく口裂け女になりかけたわよお。」
顔には白のフアンデ―ション、頬紅、赤い口紅。髪は赤のゴムバンドで、ミニ・ツインテール、おまけに花かんざし。
僕らは神社に向った。僕は、恥ずかしくて下を向きながら歩いていた。デイバッグは、浴衣にはおかしいからと、トモ君の家に置いて、財布だけお姉ちゃんの貸してくれた巾着に、入れて持ってきた。
「ヤマちゃん歩く姿、完璧に女の子だなあ。」
下駄を履き慣れていないから、下を向いてゆっくり歩いてるだけだよ。誰にも会わなきゃいいんだけど。
「トモ君と羽柴君じゃないの。」
まずい、クラスの女の子たちだ。吉木さんもいるじゃん。おまけに、塾で一緒の他校の男子、あれは中原君。
「へえ、トモ君と羽柴君、彼女いたんだあ。」
「違うよ、僕のお姉ちゃんだよ。高二だよ。」
「そうなんだあ、美人さんだねえ。どうりで大人びてると思ったわ。」
「で、そっちの子は?」
「ヤマ、、」
「ヤ、矢島さん!矢島由美。私の従妹よ。」
「へえ、可愛いわねえ。今いくつ?」
「中、、。」
「今小六よ、照屋さんなの。」
お姉ちゃん、うまく遮ってくれた。でも矢島由美って。
「誰かに似てるわね、ん❘、思い出せない。」
吉木さん、こっち見てる。絶対ばれたくない。そのうちみんな、それぞれ話しこみ始めた。
「ねえ矢島さんって、どこの学校?」
塾が一緒の中原君だ。どうしよう、お姉ちゃんも知り合いと話しているし。
「、、、名古屋です、、、。」
「小学生なんだ。浴衣すごく似合うね。」
中原君は、色白のイケメンで、性格も優しい。同じ歴史好きでよく話もする。
「あ、ありがとう、、。」
なんだろう、このドキドキ感は。
しばらく話して、女の子たちは去っていった、吉木さんに軽く会釈された。
「じゃあ矢島さん、またこちらに来た時、会えたらいいね。」
中原君には、うなずくしかなかった。
「ヤマちゃん、やばかったねえ。でも吉木さんに可愛いって言われて、良かったじゃん。」
「中原君、女の子と完全に思ってたね。」
「俺も可愛いって思うぜ。なあ、ちょっと二人でその辺ぶらつかない。」
「やだあ!。」
「ダメ、ダメ、ヤマちゃんはこれから私と屋台巡りするんだから。」
だんだん、お姉ちゃんの策にはまってる。もうなんとでもなれ。
僕とお姉ちゃんは、屋台を回って歩いていた。
「あたし、妹ほしかったんだよねえ。」
途中何度か、ナンパされそうになったが、そのたびに、お姉ちゃんが追い払った。
「てめえら、うぜえ!」
お姉ちゃんの迫力に、みんな圧倒されていた。
「あいつやべえよ、この辺じゃあ、有名なギャル姉だよ。」
なんかかっこいい。子供の頃は、いじめられていると、すぐに助けに来てくれたっけ。
「そろそろ花火の時間ね、丘の上行こっか。」
階段を登ると街が見える。
「時間ね。」
街の上の空いっぱいに、花火が広がった。これ、いい!。
「写メ撮ろうよ。」
お姉ちゃんは、花火をバックにパチリ。
「写メ、ネットに撒いちゃおうかなあ。」
「いいけど。」
中学生、初の夏祭り。
思春期の両性が共存する感覚をテーマにしてみました。作者も幼く見え周囲からからかわれていたことを思い出しながら書いてみました。
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