2.Lesson!魔術
「まずこの世界にはね、三パターンの人間が存在するの。一つは魔術が使えない人間、二つ目は攻撃魔術を使える人間、三つ目は回復魔術を使える人間。これらは生まれた瞬間に決まっていることだから、ある種の才能みたいなものね。それで、攻撃魔術を使える人が黒魔術師、回復魔術を使える人が白魔術師と呼ばれているの」
ふむふむ。俺はクロエの話をじっくり聞く。
「じゃあクロエは黒魔術師だから、攻撃魔法を使えるってことか」
「そーいうこと」
クロエは人差し指を出すと、その先に炎を灯して見せた。
「おお!すげえ!」
「ちなみに魔術師はそうでない人間よりも人口が少ないの。しかも白魔術師は黒魔術師と比較すると圧倒的に少ないわ。だからあなたはかなり希少な存在なのよ」
興奮する俺を満足げに見ながらクロエは話を続ける。
「じゃあ次に、あなたが感じた紋様について説明するわ。その紋様はクレストと呼ばれるものよ。紋様は世界中に満ちている魔素を象徴としたものだけど…。マシロ、魔素は知ってる?」
「いいや」
俺は首を横に振った。
「それなら魔素についてから説明するわね。魔素は世界中どこにでもあって、目には見えないけれど色々なものを構成するのに役立っているの。私達人間だって魔素を含んでいるわ。」
「元素みたいなものか」
俺が一人で納得していると、クロエが驚いたように言った。
「まあ!そっちの世界にも元素はあるのね。それなら話は早いわ。魔素と元素は似て非なるものだけど、イメージするにはちょうどいいわ。魔素は元素よりも、より超常的な自然の力を含んだものなの。そしてその自然の力、即ち魔素は全部で四種類あるわ。火、水、土、風よ」
「おお!いわゆる属性ってやつだな」
俺が得意げに言うとクロエは頷いた。
「そう。…あなた変なところだけ知っているのね。ますますあなたのいた世界が気になるわ。…まあいいわ。話を続けるわね。魔術は紋様を使って発動するの。紋様単体で使うこともあるけれど、大体は複数の紋様を組み合わせて使うわ。あなたの回復魔術もそうね。頭の中に使いたい魔術の紋様を強く思い浮かべるの。」
俺は回復魔術を使った時のことを思い出した。一番最初に使った時と二回目に使った時は、頭の中に勝手に紋様が浮かんできたが、クロエを治療したときは既に暗記した公式で問題を解くように、当たり前に頭の中にさっきと同じ紋様が浮かんできていた。
「魔術は一度紋様のイメージを掴んでしまえば、いつでも使えるようになるわ。ただし魔術を使うには魔力がいるの。魔力ざっくり言うとは体内の魔素のことを指すわ」
「新しい紋様を覚えるにはどうすればいいんだ?」
「それは、時間の流れと修行あるのみね。魔術を繰り返し使ったり、戦闘経験を積んだり、普通に生活を送ったりしていれば、自然と頭に浮かんでくるものよ。あなたがいきなり二種類の魔術を覚えたのは、おそらく命の危機に瀕したことで、本能的に発現したのだと思うわ」
「二種類?」
俺は確かに頭に浮かんだ紋様が二種類あるが、その違いを認識できていないことに気が付いた。
「おそらく、落下直前に発現したのは『自動再生』、落下直後に発現して私のことも治してくれたのは『回復』ね」
「その二つはどう違うんだ?」
「『回復』は単純に怪我を治療する魔術、『自動再生』は予めかけておいて、ダメージを受けた瞬間に発動・回復する魔術よ」
「なるほどな。地面に着く前に『自動再生』を発動できたから、俺は助かったってわけか」
「そういうことね。…さあ説明もキリ良く終わったところで、もうすぐ町に着くわよ」
気が付くと空には月が上っていたが、俺達のもうすぐ前には石造りの建物とたくさんの明かりが広がっていた。人々の営みを感じた途端に俺はどっと今までの疲れを一気に感じたが、その疲れは不思議と心地よいものだった。




