騒ぎたてるキャンプ場
俺たちはしばらく歩いてキャンプ場の目の前にいた。
もう日が沈みかけている。
このキャンプ場は俺の行きつけのキャンプ場だ。山のふもとに受付がある。
ここは学園へ向かう旅人が必ず立ち寄る、ジャポンエリア最大の野営中継基地である。
受付の先にはそのすぐ側にキャンプ用品店があり、キャンプに関わる道具ならすべてここで揃えられる。
キャンプ用品店の先には祭りの出店や屋台みたいな規模のの八百屋、魚屋、肉屋が並んでいる。キャンプに必要な食料が親切に用意されているってわけだ。
俺たちはこのキャンプ用品店で買い物をして、これからの野宿で必要なものをそろえるつもりだ。
俺はこれを見越してサユリ婆の漢方の材料集めという名のバイトに奔走していたわけだ。
山のふもとから八合目にかけてはずっとキャンプサイトがある。とてつもなく多いキャンプサイトだ。数えてはないが数百とあるな。
ここのキャンプサイトはペグを打ち込むためにきれいに整地されているだけの単純なものだ。
旅人が自分のテントを組み立て設置するってイメージで1サイトの区画の大きさはおよそ5.5メートル四方の正方形であり細道の左右に点在している。
八合目まで続いているのだから当たり前か。
この山を抜けたとしてもまたさらに山が続いている。見渡す限りの山々だ。途方に暮れるほどの山々を越えた先に学園があるらしい。
ジャポンタウンから北北西の山脈の先にあるのだ。
「着いたね、ルイ君」
ミカが左横から上目遣いで聞いてきた。
「ああ、受付すませよう」
俺は受付のアウトローな雰囲気を放っているタンクトップの若い美人の女の前に来た。
ケイシーっていう名の女だ。
「ああ、ルイまた来たのかい?」
「ああ、今日は学園に行くためにな」
「そうかい。ならしばらくは会えないね。」
「そうだな。入場料はいくらだったけ?」
「うーーん、今日は高くつくな。12000[M]だよ。」
「12000[M]っていくらなんでも高すぎるんじゃないか?」
3人家族の食費3日分の値段だ。ぼったくりにもほどがある。
「そこの魚屋の生け簀の魚を全て神経締してくれりゃあタダにしてやってもいいぜ。
それやってくれりゃ、お前が今から買おうとしている、キャンプ道具もすべてタダでいいぜ。但しちゃんとお前の魔力を使ってな。包丁でやるただの神経締めではないからな!」
はぁー、すべてお見通しってわけか。それをやらせるためにあえて高値で吹っ掛けてきたってわけか。
「俺にそんなこと頼むなら、自分で覚えればいいんじゃないか?神経締。」
「お前馬鹿か?あんな神業お前しかできねぇよ!」
神経締がそんなに難しい訳がない。学園に入学する日本料理科専攻の学生は皆できる基本の技だって母さんが言ってた。
おれは落ちこぼれだから8年かかったんだ。学園のエリート学生なら3か月で習得できるはずだ。だからケイシーも元学園生なら頑張ればできると思うんだけどな。
「わかった。それで手を打とう!」
俺が応える。
「みんなぁー!大変だぁ!ルイが魚の神経締をやってくれるらしいぜ!」
ケイシーが今までにない大声で叫ぶように伝える
魚屋の店主「やっべぇーー!っべぇーーよ!マジで!俺の悲願がかなったよ!」
お前、そんなキャラだったけ?喜びすぎだぞ。
…ざわざわ…ざわざわ…
周りの大人たちがざわめき立ってる。
そんなに驚くことか?
魚屋の店主「ルイの神経締済みの刺身は普段の5倍の値段だぁああ!でもお客さん!!買いたいよなぁ!」
「「もちろんだ。当たり前に決まってんだろ!早くその技をみせろぉーー」」
旅人たちがどよめきだした。物好きの客もいるもんだな。
「ルイ君、すごいことになってるよ。」
「ミカ、まぁあいい。ついでだ。これから神経締のノウハウをお前にレクチャーする。」
「なんで?僕ぜったいできないと思うけど…」
「これから俺たちが何ができて何ができないかを把握する必要があるからな。魔物と戦闘になったときの連携のためだ」
「そういうことか!じゃあ、お言葉に甘えて見させていただきます!」
ミカは嬉しそうに言った。
やれやれ、面倒なことになったが、やってみるか。
そう思ってるうちにいつの間にか用意されていた、この受付前広場の中央にある大きな調理テーブル。
解体ショーじゃないんだから。そう思いつつテーブルの前につく。
魚屋の店主「お前のためにずっと前から用意しておいたテーブルだ。準備は整った。早く技を見せてくれ」
やれやれ、やってみるか。神経締。
「ミカ、お前に教えながらやるから見ておけよ」
そういって俺は魔力を放つのであった。




