宇宙の眼差し
スリー、ツー、ワン、ファイヤ。
衝撃波が空間を切り裂いた。大気が波打つほどの轟音が地響きとなって全方位に放たれる。
スペースシャトルは、全人類が見守る前で夜空を駆け上がっていく。美しい青い炎は垂直に機体を押し上げる。
輝く眼差しで見つめる少年。祈るように目をつぶる女性。呆気にとられた表情で眺める老人。さまざまな想いが、この一点に交差していた。
宇宙は、それを見つめた。
軌道は安定していた、そして夜空の黒に機体はゆっくりと溶けていった。それを見て、誰もが成功に歓喜し、地上のざわめきは大きな喝采へと変わった。
だが、管制塔から見守る一人の青年だけは、青ざめていた。スペースシャトルは確かに宇宙に飛び立った。警告も異常も一つもない。通信も良好。しかし、宇宙飛行士たちの鼻歌も聞こえてきそうなほど、静かだった。
飛行状態を表す、ありとあらゆる数値は不自然なほど理想の値に見えた。通信に混ざるはずの、機械の呼吸のようなノイズすら消えていた。
「本当に……宇宙に溶けた……?」
思わず息を漏らした。映し出すはずの通信衛星は夜空の星を映していた。間違っているのは、自分の視界の方なのではないか。頭の中で何かが静かに外れていった。他の誰も問題視していない。確かに、全部問題ない。……問題ない。
ドアの外からは鳴り止まない歓声が、かすかに聞こえてくる。青年は、歓声の波に身を投げなければ、自分だけ別の軌道に外れてしまう気がして、勢い良くドアを開けた。そして両手を振り上げて、高らかに飛び上がってみせた。
その瞬間、世界の輪郭がわずかににじんだ。
管制塔が、音もなく星屑へほどけていく。
青年は制御室の仲間と肩を抱き合い、歓喜に酔いしれた。しかし、次第に違和感が彼を襲った。何に酔いしれているのか、すでにわからなかった。隣の仲間の鼓動が、青年の胸の鼓動と同じ周期で脈打ち始めた。
人々の群れはいつまでも歓喜に揺れていた。
歓声はなぜか、同じ方向を向き、瞬間に同じ高さで揃った。その人々の目の奥には、星のような微かな光が瞬いている。
それはまるで、宇宙が人間たちのかたちを借りて、こちらを見つめ返しているようだった。
人間が宇宙を見ていたのか、宇宙が人間を見ていたのか。人々の思考はすでに、宇宙の中を飛んでいた。




