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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第四章【仮面の再出発】
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【影が照らす光】


神聖連合崩壊から数日後――

その“黒き王”の名が、ついにアールフェンの空に響き渡った。


交易都市アールフェン・中央広場


異様な静寂。

朝の陽光すら、どこか緊張を孕んで差し込んでいた。


そして――漆黒の光と共に、三つの影が現れる。


「っ……!」


街の住民、冒険者、兵士たちが一斉に後ずさる。


現れたのは、ただ立っているだけで威圧感を纏う男――せつな。

その隣に、笑みを浮かべたじゅぴと、赤い瞳を爛々と輝かせたリィナ。


彼らがそこに在るだけで、空気が軋んだ。


「っ……アレが、“ネザリアの王”……!」


「なんで、ここに……?」


ざわつく人々を前に、せつなは一歩、広場の中央に進み出た。


そして――魔力を通した声が、街中に轟く。


『聞け、アールフェンの民たちよ』


誰もが息を呑んだ。


『今この瞬間より――この街は“我の庇護下”に入る』


『我が名は、漆黒の王。神聖連合を葬った者。そして今――この地を守る者だ』


街の人々の顔に、恐怖と困惑、そして疑念が交錯する。


だが、続く言葉は、すべてを変えた。


『……この決定には、理由がある』


赤い瞳が静かに向けられた先――そこに立つ少女。


『“セリナ”に、感謝するのだ』


広場の視線が、一斉にセリナへと向かう。


『彼女がいなければ、我はこの街すら消していた。だが、彼女はこの街を望み、守ると告げた』


『その意思を、我は尊重する』


「っ……せつな、様……」


セリナは、ぎゅっと唇を噛みしめた。


恐怖に震える街の人々の中で、ただ一人、涙を堪えていたのは――

救われた者ではなく、“救わせてくれた”ことに報いる者だった。


せつなはさらに言葉を重ねる。


『セリナ。良くやった』


『お前の潜入任務は、これにて終了とする』


張りつめていた空気が、セリナの胸の奥で、ふっとほどけていく。


『ネザリアに戻ってもいい。ここに残りたければ、残るがいい。お前が決めろ』


まるで、それが“当然”であるかのような声音。


命じるのではない。選ばせるのだ。

支配の象徴であるはずの漆黒の王が、“信頼”という形で手渡した言葉だった。


「……はい」


セリナは深く頭を垂れる。


「少し考えさせていただきます。せつな様」


その返答に、じゅぴはにっこり笑い、リィナは何か企みを含んだ視線を向けていた。


一方、周囲の人々の反応は――


「……セリナ……が、あの王と?」


「待って。じゃあ……あいつ、ずっと私たちを――」


「…………」


セリナに寄せられる視線が変わっていく。

だが、敵意はなかった。

ただ、困惑と驚き――そしてほんの少しの、“理解”の兆しがあった。


広場に再び静寂が戻る。


せつなは、それを確認するように一歩後ろへ下がった。


『……以上だ。街を守ることは約束する』


『だが、邪魔をすれば――容赦はしない』


静かに、漆黒の光が再び揺れる。


ネザリアの影が、アールフェンを覆った瞬間だった。

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