【影が選ぶ標的】
皆様のおかげで――なんと昨日!
注目度ランキング92位に入りました!!ぱちぱち
初投稿作品にも関わらず、こうしてたくさんの方に読んでもらえて、
ブクマや評価、感想までいただけて……本当に嬉しい限りです!
これからも全力で執筆していきますので、
応援よろしくお願いしますっ!!<(_ _)>
神聖連合領・交易都市アールフェン
街に静かに影が降りていた。
屋根の上に立つ影、通りを歩く旅人のふりをした影、
そして、神殿の裏門から現れる黒衣の女たち。
全て、ネザリアからの“部隊”。
彼らの標的はただ一つ。
神聖連合と繋がりのある者だけ――
「……見つけました。“証”確認、確保に移行」
黒装束の一人が、目立たぬ路地裏で呟いた瞬間、
光の檻が展開され、標的の男を包み込む。
「な、なんだ……!? ばかな、どうして……!」
「抵抗は不要。」
その瞬間、数人の黒衣が現れ、拘束された男を連れ去る。
――だが、一般市民には手を出さない。
――ギルドの者たちには、一切の干渉がない。
その“線引き”が、静かに浸透していった。
「なあ、さっきの……捕まってたの、見たか?」
「……あれ、聖職者じゃなかったか……?」
冒険者たちは不安そうにざわめく。
その中に立つセリナは――確かに“動きを察知していた”。
(せつな様の指示……“この街は守る”。ならば、騒ぎは最小限に抑えられるはず)
グレンと一瞬、視線が交差する。
彼もまた、既に動きを把握していた。
騒ぎに乗じて何かを仕掛ける者がいれば、それを止めるために配置された影でもあった。
「……ねぇセリナ、あれ……本当に大丈夫なの?」
仲間のひとりが、不安そうに声をかけてくる。
セリナは、少しだけ微笑む。
「大丈夫です。……必要以上の混乱は起こりません」
(そう。“せつな様”は、選んでいる。
この街を滅ぼすのではなく――“必要なものだけを奪う”という判断を)
その頃――ネザリア城、観測室。
一面の水晶壁に映し出された街の映像の前に、
巫女と、その専属メイドが立っていた。
「……本当に、あの子たちは……“敵”じゃないのね」
メイドは静かに頭を下げる。
「お言葉を返すようですが――
我が主は、“敵となる者”を見誤ることなどありません」
巫女はふっと笑った。
「ふふ……やっぱり、変わってるわ、この城の人たち。
戦ってるのに、怖くない。むしろ、あたたかい」
彼女の手元には、一冊のノートがあった。
そこには、今日見た夢の断片が――少しずつ綴られていく。
運命の糸は、静かに紡がれていく。
アールフェン冒険者ギルド・第七支部
昼下がり、ギルドの喧騒はいつもよりやや控えめだった。
静かなざわめきの中、冒険者たちは情報板を見たり、依頼を眺めたりしながら、噂話に花を咲かせていた。
「……それにしても、ほんとに無事だったよな。うちの街」
「だよな。他のとこはもう、壊滅状態とか……何が起きたんだか分かんねえけどよ」
「でもさ、やっぱり“セリナちゃんのおかげ”じゃね? 」
「だな。ギルド長が言ってた。“あいつの助言で何もしなかったのがでかかった”って」
「うわ、マジか……あの子、やっぱ只者じゃねえな……」
ギルド内の一角で交わされるそんな会話が、自然と周囲へと波及していく。
カウンターの奥、セリナはそれを聞きながら、紅茶を手に静かに目を伏せていた。
(……この人たちは、知らない)
(守ったのは“せつな様”……でも、命令を出したのは――私)
手にしたカップの中で、波紋が広がっていく。
(この街は、最初に来た場所。任務で潜り込んだだけの場所)
(それなのに――)
胸の奥に、また、あの小さな痛みが灯る。
(こんなふうに感謝されるなんて、私は……)
その時、ふと視線を感じて振り向く。
そこに立っていたのは、グレンだった。
「……守ったな」
低く、だが確かに感情のこもった声だった。
セリナは戸惑ったように目を見開く。
「……私はただ、任務を遂行しただけです」
「それでも、この街の者たちは君を“恩人”として見ている。……その意味は、大きい」
グレンはそう言って、わずかに口角を上げた。
「……それに。俺たちも、ここの連中を“悪くない奴らだ”と思ってる」
「……そう、ですか」
セリナはそっと目を伏せた。
それは、“影”として生きる彼女の中に芽生えた、ごく小さな、でも確かな“情”への答えだった。
グレンは何も言わず、静かにその場を離れる。
残されたセリナは、カップを手に、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。
(……ほんと、せつな様ったら)
(こんなにも“優しさ”を持ってるなんて――)
外の光は穏やかに、アールフェンの街並みを照らしていた。
守られた街の中で、彼女はまだ“仮面”をつけながらも、その裏にある本心と、少しずつ向き合い始めていた。




