【鎖の輪の中心へ】
二人目の感想頂けました!ありがとうございます!!!
やっぱり文字で頂けるとかなりうれしいですね...♪
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神聖連合領・交易都市アールフェン
神殿・夜の回廊
白銀と黒の影が、並んで歩く。
ひとりは神に仕える者。
もうひとりは、神をも欺く仮面の使者。
巫女は、ぽつりぽつりと話し始めた。
「ご存知でした? この回廊、星の動きに合わせて設計されてるんです」
「……いえ、初耳ですわ。勉強になります」
(会話で気を逸らそうとしてる? それとも、これは“本音”かしら……)
セリナは、静かにその横顔を観察しながら歩く。
(ただの少女には見えない。でも、“完全に敵”とも断定できない)
(予知夢、神の声、特別な存在……それでも彼女の歩みは、妙に脆く見える)
「セリナさん、あなた……自分の“運命”を信じる方ですか?」
「ええ、“任務”を果たすことが、私に課された道ですから」
巫女は小さく笑った。
「……あなたも、“誰かの手の中”にあるのね」
(この子、本当に――見えているの?)
だが、それ以上を探ろうとしたそのとき――
ふたりが歩いていた先の扉が、かすかに揺れた。
そこは――“旧礼拝堂”跡地。
神殿内でも使用が禁じられている、封鎖された儀式空間。
「この先、使われていない場所なのでは?」
「ええ。でも、ここだけは……夢で何度も見たの」
巫女はゆっくりと手を伸ばし、扉に指をかける。
「……セリナさん。よければ、一緒に……」
(……自分から“囮”になるつもり?)
セリナの脳裏に、じゅぴの連絡が重なる。
《そっち、そろそろ範囲に入るっす。封鎖準備完了。リィナも配置済っす♡》
セリナはゆっくりと頷き、巫女に微笑んだ。
「……はい。ご案内、ありがとうございます」
ふたりは扉を押し開き、静かに中へ――
そこは、光の届かぬ黒き空間。 閉ざされた礼拝堂。その奥に、“眠りの縛鎖”が仕掛けられていた。
セリナの視線が、わずかに揺れる。
(……本当に、これでいいの?)
だが、その問いを飲み込むように、背後で音が鳴った。
カチリ――
封鎖結界、展開完了。
“影の輪”は、閉じた。
神殿・旧礼拝堂跡地
石の扉が静かに閉まり、重厚な音が空間を包む。
「……この空気、なんだか変ですね」
巫女が小さく呟く。
(――今だ)
セリナは動かぬまま、目だけで全方位を確認する。
影の結界はすでに展開され、空間の出入口はすべて封じられた。
天井からゆっくりと降りてくる、黒糸のような縛鎖。
礼拝堂の壁面に埋め込まれた封印術式が、淡い光を帯び始める。
巫女の足元――その影が、静かに震えた。
「セリナさん……ここ、何かが……」
次の瞬間。
空間が反転する。
結界内に組み込まれた幻術が起動し、周囲の空間認識を切り替えた。
そして――
「お疲れっす、セリナちゃん♡」
礼拝堂の天井裏から、軽やかな声とともにじゅぴが降ってくる。
「っ……あなたは……」
巫女が驚きの色を見せるより早く、反対側の柱の影から、リィナが音もなく姿を現す。
「ふふっ。やっと会えたね、“神喚の巫女”ちゃん♡」
両側から包囲され、巫女は一歩だけ後退した。
だが、その顔に浮かんだのは――怯えではなく、静かな諦観。
「……そう。これは“私の見る夢”の一つ、だったのですね」
「ふぅん? 夢の中で会ったんすか、うちらに?」
「ええ、何度も。……でも、これは変えられない未来のような気がしていたのです」
セリナが一歩、前に出る。
「……あなたは、まだ自分の“立場”を理解していないようね」
巫女の灰色の瞳が、静かにセリナを見返す。
「立場ではなく、“選択”だと思っています」
(……この状況で、そう返すなんて)
セリナの心に、わずかな乱れが走った。
じゅぴは小さく肩をすくめたあと、封印起動の手順に入る。
「じゃ、さっさと“捕まって”もらうっすよ♡ おとなしくしてれば痛くないから、たぶん」
「……ふふ」
そのとき、巫女が微笑んだ。
「夢の中では、あなたも“笑って”いました。――けれど、それはもっと“後”のこと」
「……?」
じゅぴが不思議そうに目を細める。
そして、リィナが目を細めたまま、殺意の篭った一歩を踏み出す。
「悪いけど……眠っててもらうよ?」
――が、その瞬間。
空気が一変した。
巫女の足元の影が、逆流するように“光”を放った。
セリナが反射的に後ろへ跳ぶ。
「リィナ! 離れて!」
「ちっ、やるじゃん……!」
礼拝堂の中心で、巫女の足元に出現したのは、未知の術式。
まるで“神殿そのもの”と共鳴するかのように発動した、純白の逆封結界。
「……眠りの鎖を、断ち切ります」
その言葉とともに、結界の一部が反転――
空間が砕け、光が爆ぜる。
だが、じゅぴの声は崩れなかった。
「さ~て。ちょっと予想外だったっすけど、想定内っす♡」
「セリナちゃん、プランBいくっすよー!」
「了解」
空間が砕けても、戦略は崩れない。
影の輪は――なお、巫女を逃さない。




