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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第四章【仮面の再出発】
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【影に託された任務】

【影に託された任務】


ネザリア城・訓練棟・作戦詰所


灰色の石造りの天井に、淡く魔導灯の光が灯る。

詰所の一角、隊員たちが軽い訓練を終え、肩で息をついていた。


「隊長、今日のメニューちょっとキツすぎませんか……」


「文句は鍛え上がってから言え。文官に戻りたいか?」


「いえ、ありがたいです……っ!」


息を吐きながら、グレン=ロウバルトは水筒を置いた。


(今となっては、全員が“戦える”身体になった。……王国じゃ考えられなかったが)


そんな中――カラン、と金属の音。


扉が開き、ゆらゆらと歩いてきたのは、一人の少女。


「おっつかれっす、隊長♡ あ、みんなも元気してたっすか〜?」


「……じゅぴ、か」


彼女が現れた瞬間、場の空気が引き締まる。


グレンたちは、彼女の“本当の実力”を、一度見てしまっている。


「今日は任務の話。ちゃーんと聞いてほしいっすよ?」


じゅぴは軽く手を振りながら、中央の机にストンと腰を下ろした。


「内容は――神聖連合領、交易都市アールフェンへの潜入」


その場の空気が一変する。


「おい、そこって……今、話題の“あの都市”か?」


「情報の中心地の一つ、って噂も……」


「おしゃべりストップっす♡ まとめて説明するから」


じゅぴは指を立てて、ぴしっと周囲を制した。


「目的は、街の空気を掴むこと。あと、向こうにいる“潜入済みの子”との接触」


「……セリナ、か?」


「ピンポーン♡ でもね、これ重要なんすけど――」


じゅぴはグレンにだけ、意味深な目線を送った。


「セリナちゃんには、この作戦、知らされてないっす。完全なる、サプライズ♡」


「……なんだと?」


「驚いて戸惑うだろうけど、それも込みで任務っすよ? “本人の前でだけ”こっそり説明するっす。正体がバレないように、ね?」


グレンは短く息を吐いた。


(つまり、せつな殿からの“仕掛け”ってことか)


「……了解した。うまくやる。セリナを混乱させたり、任務の妨げにはしない」


「ふふっ、それでこそ、隊長♡」


じゅぴは立ち上がり、くるりと一回転して笑った。


「偽装は、王国滅亡時に“逃げ延びた少数兵”って体でいくっす。疲労困憊で、匿ってほしいってストーリーにするっすから、準備よろしくっすよ〜」


隊員たちが頷く中、グレンだけはじっと壁を見つめていた。


(……セリナ、か。確かにあいつがこの街にいるなら、意味がある)


(だが同時に、“新しい始まり”でもあるんだろうな)


静かに、決意を胸に――

影の部隊が、ふたたび表へと姿を変える。


任務開始は、明朝。


アールフェンに、再び影が降りる。


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