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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第四章【仮面の再出発】
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【ささやきと命令】



ネザリア城・情報制御室――


淡く光る魔導スクリーンには、交易都市アールフェンのギルド内部が映し出されていた。

その映像に重なるように、音声が流れ続けている。


『……私は“セリナ=アルメリア”。この街で生きる、ひとりの冒険者』

『……でも、“せつな様”が命じるなら――私は、この場所を壊すことも、選ばなければならない』


「……あーあ、めっちゃ揺れてるじゃん、セリナちゃん」


じゅぴが頬杖をつきながらスクリーンを眺め、くるりと椅子を回した。

すぐ背後、壁に寄りかかるようにしてリィナの姿もあったが、彼女は一瞥もくれず黙っている。


「せつなー♡ これ、見てたっす? セリナちゃん、たぶんあの街の空気にちょっと毒されてきてるっすよ〜」


影越しに姿を現す、漆黒の支配者。


せつなは言葉を発さず、ただじゅぴの背後に静かに立つ。


「別に、敵意じゃないっすよ。むしろちゃんと“迷ってる”あたり、可愛いもんっす」


そして、にこりと笑ってから――口を尖らせてみせた。


「だからさぁ、守ってあげたらどうっすか♡? セリナちゃんだけは、あの街にずっといさせてあげてもいいんじゃ――」


「――甘やかし過ぎ。吐き気がする」


リィナの冷たい声が、室内の空気を裂いた。


「“揺らいだ時点”で、弱い。命令に従わないなら、その時点で切り捨てるべき」


「はあ!? それ本気で言ってるんすか!? セリナちゃんは潜入任務の要っすよ!? 貴重な情報源で、性能も――」


「……任務の話なんかしてない。“感情”の話。戦場でそれが邪魔になるの、あなた一番知ってるでしょ」


「はぁあ!? あたしはちゃんと仕事してるし、フォローもしてるし、ちょっとは優しさ見せてもいいって――」


「甘い。脆い。」


「うぐっ……あんたほんっとかわいげない……!」


「黙ってろ、装飾AI」


「誰が装飾だああああっ!!」


魔力がぴしりと空気を叩いたその瞬間――


せつなが、静かに言葉を発する。


『……グレンを使え』


一瞬にして室内の空気が止まる。


じゅぴがぱちくりと瞬き、リィナが眉をひそめる。


「……せつな?」


『第七調査隊の“元指揮官”。既にこちらに属した者だ。情の“共鳴”があるなら、それを利用しろ』


『セリナは感情を演じてきた。だが、今は“受け取ってしまった”。――ならば、近しい者に“預ける”のが最も早い』


「……ふふっ、なるほどぉ……さっすが、せつな♡」


じゅぴは指を鳴らすと、スクリーンにグレンのデータを浮かび上がらせた。


「そっか、じゃあこれをきっかけに、“セリナちゃんとグレン隊長の連携ルート”をつくるってわけっすね?」


『次の動きがある。神聖連合の背後にある動きも、見えてきた』


『情報の継続。それと“覚悟”の再確認。すべて、同時に行え』


リィナが一歩前に出る。


「セリナの保護は認める。でも、それと任務遂行は別。“同情”ではなく、選別のためだと……そう理解しておく」


じゅぴがうんうんと頷く。


「了解っす♡ じゃあ次は、“セリナちゃんとグレンの再会”を演出して……っと。ふふっ、面白くなってきたじゃないっすか♡」


魔導スクリーンには、今も変わらずアールフェンの平穏な日常が映っていた。


だがその裏では、“次の戦い”が、静かに準備を始めていた。

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