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【毎日20時更新】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
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【街の影を歩く】

すでに4月末まで予約投稿済み

毎日20時に更新!!



街に入ったセリナは、人々に紛れながら細い路地に身を滑り込ませた。

干した魚と獣脂の混じった匂い。乾いた土。

異世界の生活臭が漂う空気を、一度ゆっくりと吸い込む。


(第一段階、突破っと。うん、思ったよりゆるかったわね)


門番の身分確認は、口頭質問だけ。

魔力検査もなし、持ち物チェックも視線で済ませる程度。


(本気で見逃してくれたと思ってるのかしら。……まあ、おかげで助かったけど)


セリナは壁際に立ち、胸元へと指を添える。

意識を研ぎ澄ませ、魔力を一点に集中――


精神伝達魔法《幻響連絡ファンタズム・コール》起動。

せつなとの間にのみ繋がる、極秘の精神波長チャネルが開かれる。


(――こちらセリナ。街への潜入、完了しました。現在、主要通路にて周辺状況を観察中。

生活インフラは機能。防御は緩いが、住民の視線に不自然な緊張あり。ギルドでの登録を希望。許可をいただけますか)


数秒の沈黙。

やがて、静かに響いてくるのは、せつな――主の声。


『……よくやった、セリナ。登録を許可する。

だが目立つな。言動を制限しろ。……できるなら、信頼も得てこい』


(かしこまりました。せつな様)


通信を終了し、セリナはふっと小さく息を吐いた。


(目立たず、信頼を得る、ね……いつもながら、命令が難しいわ)


けれど、声に出すことはない。

感情は、表に出すべきではない。


彼女はゆっくりと路地を抜け、大通りの石畳に出た。

すぐ先、目に飛び込んでくるのは、石造りの二階建ての建物。

風に揺れる古びた布看板には、剣と盾の紋章。


【アールフェン冒険者ギルド・第七支部】


(ギルドか……この世界の通貨や依頼構造も、ここから探れそうね)


静かに、そしてごく自然に、セリナは扉を開ける。


中には十数人の冒険者たち。

談笑、酒の香り、時折響く軽い怒号。

壁には依頼の掲示板、奥には受付が並んでいた。


一番手前のカウンターにいた若い女性職員が、微笑みながら声をかけてくる。


「ようこそ、アールフェンギルドへ。……登録希望?」


セリナは、表情を少しだけ曇らせ、フードの影からわずかに顔を出す。

声はかすかに震えるように演じられていた。


「はい。“セリナ”です……。あの、ひとりになっちゃって……

この街で……生きていけたらって……思って……」


受付の女性は一瞬だけ眉を下げ、同情の色を浮かべながら手続きを始めた。


「大丈夫。ギルドはちゃんとあなたを保護するからね。

ほら、まずは簡単な質問から……」


(――これで、偽装登録成功。あとは、“ゆっくり”)


感情を押し殺し、少女を演じたまま。

セリナは、もうひとつの仮面を深くかぶる。


仮面の下で微かに笑みながら――

せつなの命令、その一言一句を刻み込んでいた。






仮面の少女、いよいよ“冒険者ギルド”に潜入!

人目を避け、少女を演じ、任務を遂行するセリナの緊張感……伝わったでしょうか?


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