【蹂躙の狂宴】
【蹂躙の狂宴】
王都――中心街。
濃密な血の匂いと、響き渡る悲鳴。その中を、影が跳ねる。
リィナ=シュヴァルツは、快楽に頬を染めていた。
「ふふっ、最高っ……! ほら、次っ♡」
まるで狩りを楽しむ猫のように、軽やかに、しかし容赦なく。
影の刃が闇から飛び出し、叫ぶ声が上がる前に喉を裂く。
「ねぇねぇ、もっと足掻いてよぉ? つまんないよぉ……♡」
逃げ惑う影たちに、情けはなかった。
刃は跳ね、血が舞い、リィナの靴音がその上を優雅に踏み鳴らす。
「せつなの道を邪魔するやつなんて、全部、消えちゃえばいいんだよぉ♡」
狂気すれすれの笑顔が、街の奥へと続いていく。
その頃、じゅぴは街の反対側で、ひたすら殲滅を繰り返していた。
「そこっすね? はい♡ まとめてどーんっ!」
展開された魔法陣からは、ありとあらゆる魔術が展開され、抵抗する集団を一息で薙ぎ払っていく。
「次っす、次っす! ほらほら、そっちにもいるじゃないっすか♡」
楽しげな口調のまま、けれど指先から繰り出されるのは超高精度の魔力操作と絶対的な制圧力。
「ぜ〜んぶ潰して道作るっすよ♡ せつなが通るんだから、当然っすよね?」
そして、漆黒の王――せつな。
一人、正面からまっすぐ歩いていた。
その足取りは静かで重く、剣はただ無言で振るわれるだけ。
「うおおおお!止めろおおお!」
怒声が飛び、兵が殺到する。
しかし、せつなが振るった剣閃はただ一度。
その一閃だけで、押し寄せた者たちは何もなかったかのように崩れ去る。
誰の名も呼ばず、誰も見ず。
ただ、城へと向かう一本道を貫き、遅滞を許さず、王城へと進む。
轟音の中に、静かに響く足音。
王都の地は、いま――支配者の歩みに従っている。
そしてついに、せつなの足が王城の門前で止まる。
巨大な門の前に立ち、赤き眼がその上を見据える。
『……到着だ』
それは静かな宣告だった。
王の訪問。世界を終わらせるための、第一歩。
王都・王城正門。
重厚な扉が、轟音を立てて吹き飛ぶ。
魔導強化された防壁すら、せつなの一太刀の前には紙同然だった。
赤き眼が、真っ直ぐに玉座のある最奥を見据える。
その歩みに、誰も立ちはだかれない。
王城・玉座の間――
豪奢な装飾のもと、王と上層貴族たちは、まだ“勝者の余韻”に浸っていた。
「ふん、漆黒の拠点など焼き払ってしまえばいい」
「奴らの言葉に耳を貸す必要などない。我らが正義なのだ」
その瞬間――扉が、爆音と共に破壊された。
「なっ……!? 誰だ貴様――っ!」
漆黒の鎧。赤い眼。静かな足音。
玉座の間へ、せつなが姿を現した。
場が凍りつく。
「……貴様が、漆黒の王か」
王の側近が震えた声で叫ぶ。
「ここまで出向くとは愚か者め! いかに力を誇ろうとも、我らが王国に敵うものか――!」
返答はなかった。
せつなは無言のまま剣を振り上げ、次の瞬間、声を上げた者の身体が天井に向けて吹き飛んでいた。
『言葉を聞く気はない。貴様らは、既に“滅びる”と決まった存在だ』
「ば……馬鹿な……」
王が立ち上がりかけるも、その膝は明らかに震えていた。
『この国は、自ら選んだ。敵意と侮辱を向けた時点で、運命は決まった。今さら嘆くな』
せつなが、ゆっくりと玉座へと歩を進める。
王の背後から、精鋭騎士たちが剣を構えて突撃してくる。
「王を守れえぇえ!!」
その刹那――
黒剣が一閃。
騎士たちは、まるで時間が止まったかのように静止し、次の瞬間、全身が崩れ落ちていった。
剣の届いた空間すべてが、ただ消滅していた。
『“正義”を語る者ほど、愚かだ。貴様らは、何一つ理解せぬまま――死ぬ』
王が、震える手で何かを叫ぼうとしたその瞬間。
せつなは、玉座の台座に立ち、その剣を王の前に構えた。
『ここが終わりだ』
重い一言が、玉座の間全体に響く。
逃げ惑う者たち、怯え震える高官たち。
そのすべてに、救いの言葉はなかった。
そのまま、せつなの剣が――王の胸を、貫いた。
一方その頃、王城の外では、リィナとじゅぴが最終掃討戦を終えつつあった。
リィナは満面の笑みで遊び、じゅぴは魔力演算を止めることなく都市構造を制圧済み。
そして、漆黒の王は――
玉座の上で、敵を葬り、再び静かに立ち上がる。
『……次は“王国そのもの”だ』




