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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【絶望の使者】

【絶望の使者】


ネザリア城・玉座の間――


じゅぴが玉座の前で楽しげに報告をしていた。


「防衛網も完璧、攻撃準備も万全っす!いつでも王都に乗り込めるっすよ♡」


リィナも傍らで微笑みを浮かべ、満足げに頷く。


「ぼくも城外に影を配置済み。逃げる者は、ひとりもいないよ」


そのとき――


じゅぴがぴくりと反応した。


「ん? ……おやおや、せつな。正面門に“来客”っすよ?」


せつなの視線がじゅぴに向く。


「王国の使者が一人、こっちに震えながらやってきたっす♡ どうするっすか?」


『……通せ』


低く静かな命令。


玉座の間、扉が重々しく開く。


使者の青年は、足元もおぼつかないまま進み出た。


彼の目の前には、漆黒の玉座に座す漆黒の鎧の王――せつな。


青年はその圧倒的な威圧感に膝が震え、頭を深く垂れた。


「お、王国より参りました……!このたびの非礼、大変申し訳なく……!」


声が震えている。言葉も途切れ途切れだ。


「王国は争う意思はありません……!どうか、このまま兵を引いていただければと……!」


必死に言葉を並べる青年を、せつなは静かに見下ろしていた。


一拍の沈黙後、重い声が響く。


『……非礼、だと?』


青年の体がビクリと震えた。


『兵を送り、我が城を攻めた。言葉でごまかせると思ったか』


「いえ、その……我々も愚かでありました!どうか、王国の民をお許しください……!」


せつなはわずかに息を吐く。


『民を許せ、か……』


冷たい視線が、青年を貫いた。


『だが、王国はすでに選択した。我に牙を剥いたのだ』


せつなの言葉は、静かに決定的なものとなっていく。


『許しはない。王国は滅ぶ。それ以外の未来は存在しない』


青年の瞳に絶望が広がった。


「そ、そんな……お待ちください!どうか、話を……」


『話は終わった』


その言葉と共に、玉座の間の空気が一変する。


「じゃ、そういうことで〜♡」


じゅぴが指を鳴らすと、使者の足元に転移魔法陣が展開される。


「――ひっ……!」


次の瞬間、使者の姿は玉座の間から消え去った。





王都・軍務院――玉座の間。


突然、空間が歪み、一人の青年が床に倒れ込んだ。


「これは......使者……戻ったのか!? どうだった!?」


だが青年は震えながら頭を抱え、呻くだけだった。


「ゆ、許されない……王国は滅ぼすと……! あれはもう、交渉できる相手じゃない……!!」


場にいる全員が絶句した。やがて、混乱が玉座の間を覆い始める。


「馬鹿な……! 交渉の余地すらないのか!?」


「では、もはや……戦うしか……!」


老将軍が絞り出すように叫んだ。


「総力を挙げて防衛準備だ! 王都の全兵を城壁に集結させよ!!」


玉座に座る老王は、ただ震える手で顔を覆うのみだった。




ネザリア城・玉座の間――


せつなは漆黒の玉座に座し、静かに言葉を告げた。


『じゅぴ、リィナ』


「はーい♡」「ここにいるよ」


『王都へは我ら三人で攻め込む。残りは全員、城を守り待機していろ』


じゅぴがニヤリと笑い、胸元で拳を握る。


「了解っす♡ 十分すぎるくらいっすね〜」


リィナも微笑みながら小さく頷いた。


「三人だけ……♡ 贅沢で最高の戦争だね」


『行くぞ』


せつなが静かに立ち上がる。漆黒の鎧が小さく音を立てる。


「待ってましたぁ、せつな♡」


じゅぴが軽く跳ねるように続き、リィナも音もなく従う。


ネザリア城内には緊張した空気と共に、畏怖にも似た興奮が広がっていた。


転移の魔法陣が三人の足元に展開される。


光が収まり、そこに三人の姿はなく――

王都を襲う破滅が、いま動き始めたのだった。

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