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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【怯える王国】

【怯える王国】


王都・軍務院会議室――


円卓を囲む上層部の男たち。その誰もが顔色を失い、深い沈黙が場を支配していた。


「……状況を整理するぞ」


口を開いたのは、参謀長だった。だが、その声も震えている。


「攻略軍は三部隊すべてが全滅。生存者は……ゼロだ」


空気が凍る。


「どうやって? 敵の規模は、たった一城だぞ!?」


「規模ではない。相手が、異質だったのだ」


老将軍が呟くように返す。


「あの指揮官は、"次はこちらから出向く"と伝えてきた。奴らは明らかに……王国に攻め込む気だ」


「……馬鹿な! この王国が落とされるとでも?」


「では、お前があの城を見てきたらどうだ!?」


怒鳴り声が飛び交い、混乱が増す。


その時――老いた王が静かに手を挙げた。


「……我々は、過ちを犯したのだな」


玉座からの重苦しい一言に、全員が沈黙した。


「威信だの、正義だのと、耳触りの良い言葉に酔った。……そして、虎の尾を踏んだ」


「陛下、それでは降伏するのですか!?」


「では、他に何がある? あの指揮官のように、この城が炎に飲まれるまで抗うか?」


再び沈黙が訪れた。


その中で、軍務大臣が声を絞り出した。


「せめて……使者を送るべきではないでしょうか? 話し合いを求め――」


「話し合いだと……? 今更、何を話す?」


だが、他に案もなく、誰もが押し黙る。


――彼らはようやく気づいたのだ。


自らが踏み込んだ闇が、いかに深く、いかに広いかを。


この先に待つのが、“王国の終焉”かもしれないことを。





重い沈黙の中、軍務大臣が声を絞り出した。


「……もはや、我々に打つ手は一つしかない。使者を送るのだ」


「使者……ですか? あの地獄の城に?」


「降伏ではない。だが、交渉の場を設けねば王都は灰と化す」


玉座に座る老王が頷く。皆が静かに息を呑んだ。


「誰が行く……?」


沈黙が、部屋を支配した。


――誰もが死地に赴くことを拒否したいのは明らかだった。


結局、視線はひとりの若い官吏に集中した。


「……わ、私が……?」


青年の声は震えていた。


「そうだ、お前が行け。使者としての礼儀は叩き込んであるはずだ」


青年は蒼白になりながらも、逃げられぬ現実にうなだれた。



ネザリア城・玉座の間――


漆黒の玉座から、せつなが低く静かな声で告げる。


『じゅぴ、リィナ。攻撃の準備を整えろ』


じゅぴが即座に軽やかに手を挙げる。


「はーいっ、了解っすよ〜♡ 完璧に仕上げてくるっす!」


リィナも瞳を輝かせる。


「ぼくも手伝うよ、せつな♡ 次もいっぱい殺ってあげるからね……♪」


「はぁ? あんた、また"殺す"しかできないんすか? 芸がないっすねぇ〜?」


じゅぴが楽しげに笑いながら煽った。


「殺せば終わりでしょ? それが最適解だよぉ。頭が空っぽの"お飾り"には分かんないかなぁ?」


リィナの笑顔は毒を帯びている。


「……ちょっと待てっす。今、お飾りって言ったっすか?」


「事実でしょ? "後ろで魔法振ってるだけの小動物さん"?」


「ぐぬっ……! この影メイド……」


『――喧嘩はその辺にしておけ』


せつなの一言で、空気がピタリと止まった。


「はーい……」「はぁい……」



王都・東門――


青年官吏は、震える手綱を握って馬に跨った。


(……なぜ私が……)


だが逃げる道はない。後ろから押し出されるように、馬が動き出す。


(私は……殺されるのか……? いや、それどころでは済まないかもしれない……)


吐き気と恐怖に耐えながら、彼はゆっくりと門を出た。


向かう先には、漆黒の城――ネザリアが、不吉な影を落として待っていた。

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