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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【報告者の使命】

【報告者の使命】


王国軍・後衛陣地――


「う、うわああああああっ!!」


指揮官が這って逃げようとしたその瞬間――


ザクッ……!


漆黒の剣が、地面ごと容赦なく彼の足を貫いた。


悲鳴が、空に虚しく響く。


血が噴き出し、骨が砕ける感覚。

足に刺さったままの剣から、焼けるような痛みが広がる。


せつなはそのまま、静かに言い放つ。


『――ここで見ていろ』


「な、にを……ッ!?」


『貴様の兵が、“どう死ぬか”をだ』


その一言に、空気が凍った。


戦場――


影が、走る。


黒い異形が、走り出すたびに、王国兵が“消える”。


首を裂かれ、心臓を潰され、背を折られる。


見えない。避けられない。理解もできない。


「ひ、ひいいッ!」


「く、来るな、来るなぁあ!!」


逃げ出した数名の兵が、必死に森の方へ駆け出す。


だが――


「ふふっ……“待って”って言ったのに」


影の中からリィナが現れる。


満面の笑顔で、血に濡れた短剣をひらりと舞わせる。


「じゃあ、“躾”だね♡」


その言葉と共に、逃げた兵の首が順に落ちていく。

切るのではない、“遊ぶように剥ぐ”。


喉を裂き、内臓をばら撒きながら、笑顔のままリィナは囁く。


「死ぬ時は、静かにしようね?」


一方で――


「はい、そこの小隊、ちょっと密集しすぎ♡

じゃ、“爆ぜて”もらおうかな〜?」


じゅぴの声が、空から降り注ぐ。


魔導空間越しに展開された誘導雷撃。

完全に制御された誘爆魔法が、敵兵の上にピンポイントで炸裂する。


「あははっ♡ 何人飛んだっすかねぇ? ♡」


にこにこしながら、次の魔法制御に移るじゅぴの目は、完全に“上機嫌”。


バトルメイドたちもまた、まるで舞うように殺していた。


殺戮を“作法”のようにこなし、血の中に優雅さすら漂わせる異形の女たち。


そして――


静寂が訪れた。


指揮官を除くすべての王国兵が、死んだ。


ただの死ではない。“原形をとどめないほど”の死。


血と肉と骨が、戦場を覆い尽くす。

地面は赤黒く染まり、鉄と内臓の臭いが空を満たす。


その中心で、せつなは動かない。

まるでそれが、“予定された風景”であるかのように。


「ひっ……ひぃ……ッ、あ、ああああ……ッ!!」


指揮官は声にならない声を上げた。


肩を震わせ、歯を鳴らし、目は恐怖で見開かれ、

口の端からは涎が垂れていた。


せつなは、ゆっくりとその前に立つ。


紅の眼が、絶望に染まった男を見下ろす。


『……さて、指揮官よ』


『貴様には、“少しだけ”仕事をしてもらおう』


「……ぁ……」


『王に報告しろ。』


『我が城を攻め、兵を失い、何も得られず、

残ったのは、“地獄のような敗北”だけだと――』


『そして、伝えろ。次は――我が、そちらへ出向く』


その言葉は、死の通告以上の絶望を孕んでいた。


指揮官の体ががくりと揺れる。

意識が遠のきながらも、その言葉だけは脳裏に焼き付く。


――せつなが静かに、指先を動かした。


影が、わずかに指揮官の胸元へ“何か”を滑り込ませる。


魔力も気配も封じられた“封呪式”。

誰にも気づかれないように、“仕掛け”は埋め込まれた。


“報告”が完了した後。

指揮官が全てを語り終えた“その瞬間”――


その身体は、“爆ぜる”。


本人は気づかない。

誰にも、それは防げない。


それは、“口封じ”であり、“火種”でもある。


漆黒の王は、最後に一言だけ告げた。


『……行け』


その命令と共に、影が指揮官の身体を包み、転移魔法が起動した。


血と絶望の地獄を背に、指揮官の姿は掻き消えた。


――そして、戦場に残されたのは、

言葉では表現しきれない“静寂と死”だけだった。

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