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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【情報の檻/漆黒王、戦場に降りる】

【情報の檻】


ネザリア城・情報制御室――


膨大な魔導スクリーンが、空間に幾層にも投影されていた。


城の周囲、敵の配置、内部の罠と動線――

すべてが光の盤面に映し出され、ただの“情報”として並ぶ。


その中心に、ひとり。


「っと……はいっ、死亡確認っす♡」


じゅぴが椅子をくるくる回しながら、軽やかに指を弾いた。


一つの画面が赤く染まり、王国軍の中隊がマップ上から“削除”される。


「わ〜お。リィナ、やりすぎぃ♡ 影と一緒に進軍速度、規定の三倍超えてるっすよぉ」


「……ん〜でも、敵側もまだ耐えてるなぁ。

中央に魔導指揮塔と大結界隊か。ほんと、“戦争”って言葉だけは立派なんすよね〜」


スッと魔導スクロールを呼び出し、じゅぴは敵陣全体を俯瞰した。


その瞳に、いかなる“感情”も浮かばない。

あるのは、冷静な演算――と、少しの“遊び心”。


「じゃ、ゲーム開始♡」


次の瞬間、じゅぴの指が滑る。

スクリーンが変化し、敵の魔導結界が点滅しはじめる。


「弱点ね、ここ。補給部隊が一分遅れ、結界接続不全、隊長格が一人負傷中――

は〜い、じゃあここ狙って“影ぶちこみ”決定〜!」


「影くんたち、侵入ルート再構成。

左翼から迂回、崩して、後ろからバクっと♡」


スクリーンに“赤いルート”が描かれ、そこへ影部隊が自動展開されていく。


「ねぇ、せつな。もう“壊して”いいっすよね?」


「うち、まだまだ可愛く遊びたいんすけど、

この敵、“可愛がってくれる気”ないみたいなんで――」


「殺しましょ♡」


じゅぴがニコリと笑った瞬間、戦線の一角が音もなく崩れた。


情報による支配。

それが、じゅぴの戦場。




【漆黒王、戦場に降りる】


王国軍・前線――


リィナと影によって左翼が崩壊し、

じゅぴの演算によって中央の動線が切断された。


戦線はまだ崩れきってはいないが――

誰の目にも、“潮目”は変わっていた。


そして――


ゴウッッ……!


戦場の中央。誰も踏み入れていなかった空白地帯に、黒い魔力の奔流が炸裂した。


地面が抉れ、光が収束する。


そこに“現れた”のは――


漆黒。


全身を覆う漆黒の鎧。

金の装飾がわずかに輝き、片手に携えた大剣が、地面を軋ませる。


“王”だった。


その姿だけで、空気が止まり、兵士の鼓動が狂いはじめる。


「……あれが……」


「……まさか……っ」


敵兵がひとり、震える声で呟く。


「貴様が、“漆黒王”か……ッ!」


別の将官が、叫ぶように声を張った。


「バカめ……! わざわざ出てくるとは、命知らずがッ!!

全軍ッ! 突撃ッッ!! 殲滅せよォォ!!」


敵兵が一斉に動く。


槍、剣、魔法、罵声。

数百の刃が、戦場中央へと殺到する――!


――その瞬間。


ゴゥン――!


世界が揺れた。


空気が震え、大地が悲鳴を上げる。


漆黒の王――せつなは、ゆっくりと剣を横に構えただけ。


だが――


敵の前列が、音もなく消し飛んだ。


「え……?」


後列の兵が、声を漏らす。


だが、前にいた者は、誰もいない。


立っていた場所ごと、削り取られたように。


風もなかった。魔法の詠唱もない。


ただ、“存在しただけ”で――死んだ。


その静寂の中、漆黒の王が歩み始める。


一歩、また一歩。

まるで散歩でもするかのように。


敵兵は叫び、逃げ惑い、魔法を放つ。


だがそのすべてが、届かない。


触れる前に、砕ける。

刃が折れ、魔法が霧散し、盾が裂ける。


ただ、圧倒的な“支配”が、そこにはあった。


敵指揮官の前まで、歩み寄る。


その男は、もはや言葉も出せないまま、後退りをしていた。


だが、せつなは止まる。


そして、低く――静かに告げる。


『……貴様が、指揮官か』


その声に、地が震えた。


紅の一つ目が、すべてを見通していた。

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