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【毎日20時更新】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
6/151

【街の門前】

すでに4月末まで予約投稿済み

毎日20時に更新予定です!



乾いた風が吹く大地の上、城壁の前に人々の列が伸びていた。

並ぶのは旅人、商人、傭兵、そしてその中に、ひとりの“少女”の姿があった。


灰色のフードを目深に被ったその少女――セリナ=アルメリア。

その正体は、せつなの命で送り込まれた“潜入ユニット”だった。


(……ふぅ。ここからが本番ね)


列に混じりながら、セリナは冷静に周囲を観察する。

門の前には武装した門番が二人。順番に訪問者の話を聞き、簡易的な身分確認を行っていた。


(入るだけでも審査がある……この世界、やはりゲームの頃とは少し違うわね)


彼女の目的は、街の構造、通貨、装備や魔法体系の現状など、かつての《Ark Chronicle》との違いを探ること。

だがその前に、まず“正面突破”しなければならなかった。


一歩、また一歩と列が進む。

その間にもセリナの脳内では、想定される全質問パターンに対する回答テンプレートが高速で展開されていく。


(身分はない。持ち物は制限済み。……こちらの世界の言語処理、発音、問題なし。

あとは、“演じきる”だけよ)


やがて、自分の番がやってきた。


「次の者、こちらへ」


呼ばれた声に応じ、セリナは静かに顔を上げる。

門番の男は、どこか優しげな雰囲気を纏った初老の騎士風。

敵意は感じられないが、だからといって油断はできない。


「旅人か。名を名乗れ。所属、目的、同行者の有無――答えられる範囲でいい」


セリナは一瞬だけ視線を伏せ、それから、微かに震えるような声を作った。


「……セリナ=アルメリア、です。……旅の途中で、家族を……盗賊に。みんな、殺されました……」


そう言って、フードの影に顔を隠す。

わざと喉を詰まらせるようにしながら、感情の欠片を滲ませる。


「……そっか。辛かったな……」


門番の男は、思いのほか優しい声でそう言った。

そして懐から紙の札を一枚取り出すと、それに何かを書き込んだ。


「とりあえずは一時的な入国許可を出す。身元がはっきりしない者の滞在は制限されるが……ギルドで冒険者登録をすれば、それが“身分証”になる。

無理にとは言わんが、身を守るには悪くない選択だぞ」


「……ありがとう、ございます」


小さく頭を下げるセリナ。だが、その内心では――


(……馬鹿な奴ね。だけど、助かるわ)


一切の感情を顔に出さず、セリナはそのまま紙の札を受け取った。


この“偽りの少女”に門番は気づくことなく、やがて列の外へと彼女を送り出した。


セリナは静かに歩き出す。

その足取りは、道に迷った少女のように見えて――実際は、完璧な任務遂行の第一歩だった。



セリナ、街へ潜入完了!

本格的な“仮面の演技”が始まりました。口調や所作ひとつひとつまで完璧に作り込まれた彼女の動き、いかがでしたか?


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