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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【進軍】

今気づきました。初めてのリアクションありがとうございます!!

ブックマークも11件ありがとうございます<(_ _)>

これからも更新続けていきますので皆さんよろしくお願いしますね!

まだブクマしてないよーとか、評価してないよーって方。もしよろしければブクマだけでもして頂けたら励みになります・・・!(笑)

【影の訓練場・休息区画】


訓練終了からしばらく――

兵詰所に近い黒壁の休憩室では、部下たちが一息ついていた。


蒸気を上げる湯茶、異世界の木から削り出された椅子。

そして、どこか落ち着かない沈黙。


「……あれで“最低難度”だと?」


誰かが呟く。

その声に、皆の肩が微かに跳ねた。


「俺、途中で脚の感覚なくなってたぞ……魔力じゃどうにもならない“感触”があった……」


「どこをどう踏み出せば正解なのか、最後まで分からなかった……」


疲労よりも、“理解できなさ”への困惑が漂っていた。


グレンは壁にもたれ、静かにそれを聞いていた。


「……分からないのは当然だ。あれは、“知識”じゃ超えられない領域だ」


皆が顔を向ける。


「だが、感じたはずだ。“ここ”の空気、“ここ”の死の気配――

あれが、この城での“常識”なんだ」


「……隊長」


「慣れるしかない。だが、今のままでは“見限られる”こともある。

ここでは、手を抜けば命を落とす。それが“当たり前”だ」


重くも静かなその声に、兵たちは無言でうなずいた。


グレンの視線が、影導線の中で可能性を見せたひとりへと向く。


「……お前は、何かを掴みかけていた。続けろ」


「……は、はい!」


短く、それでも誇らしげな返事が返った。


グレンは小さく息を吐き、茶を一口。


(……これはまだ“入口”だ。ここから先、“適応できるか”が全てだ)



【王の間】


ネザリア城・上層・王の間――


静かに広がる漆黒の玉座空間。


「せつなぁ〜♡ ただいま、訓練報告にまいりましたっす」


『……話せ』


低く、重い声。


「はぁい。王国の第七調査隊、初日の基礎訓練と影導線走行を実施。

統率は良好。反応速度は平均的だけど、全体的に“無意識の保身”が強すぎるっすね」


「中に数名、興味深い子がいたっす。

影に適応しはじめてる兵が一人。反応は原始的だけど、本能的に“影の流れ”を感じてたっす」


『ふむ』


「あと……隊長♡」


じゅぴの口元が少しだけ緩む。


「グレン=ロウバルト。やっぱ、見どころあるっすよ。

部下の失敗を即座に見抜いてフォローしたっす。“任せられる目”だったっすね」


『……処理ではなく、導いたか』


「はいっす。部下の目線を“王国”から“こっち”に変えさせたっす。

しかも無理やりじゃなく、自分で気づかせる形で」


じゅぴはくるりと回って立ち上がる。


「初日としては、及第点っすね。これから“影の選別”進めていきますけど、

このまま育てれば、“戦力”として成立する可能性アリっす♡」


せつなは、言葉を返さなかった。


ただ静かに、玉座の奥で沈黙を保つ。


その無言の中に――“裁定者”の意志が、確かにあった。


(さぁて……こっから、どう染まるかなぁ……)


じゅぴの瞳は、いつになく鋭く笑っていた。






王都・軍務院――翌朝


高官たちが詰める軍務院の作戦室に、重く扉が開く音が響いた。


「……報告を」


通達を持ち込んだ補佐官が、静かに口を開く。


「第七調査隊……依然として消息不明。

通信は断たれ、帰還報告もなし。確認された痕跡は、転移痕のみ――」


場に微かなざわめきが広がる。


「……逃亡か?」


「あるいは、敵に寝返ったか……?」


その言葉に、室内の空気が一段と冷える。


その中、重々しく決定が下された。


「侵攻は予定通り。――三日後の満月、出撃とする」


「対象は“反逆的要塞”。国家の敵として――殲滅対象に認定せよ」


書記官が手早く筆を走らせる。


「出撃部隊、王都西門より進軍開始。

全魔術師随伴義務、対魔陣形を最優先で配備せよ」


そして――


「第七調査隊に関しては、“調査中”と記録せよ。

……裏切りの証拠が出次第、軍籍剥奪、反逆者として追認する」




王都西門前――広場に響く軍靴の音。


整列する兵士たち。

武具を抱えた従者と、魔導戦車を牽く魔獣たち。


その列の中――兵士たちは静かに交わす。


「……やっぱ、帰ってきてないんだな。第七隊」


「でも、あの隊長だぜ? 勝手にいなくなるとは思えねぇが……」


「上は“寝返りの可能性”まで言ってる。情報封鎖もされてるし、マジでそうかもな」


「けどよ……“魔王”とか“黒の玉座”とか、噂が本当なら――

一番“寝返りそうにねぇ”のも、あの隊長じゃねぇか?」


「信じるかどうかは、命がかかったときにしか分かんねぇよ」


仲間同士の低い会話。


けれど、その背後に積み上げられる物資と、並ぶ補給兵の数が――

“それでも戦争は始まる”ことを、否応なく伝えていた。


「……これで勝てるのかよ」


誰かが、誰にともなく呟いた。


その声は風にかき消え、

ただ進軍の号令だけが、空に響き渡っていた。


「進軍開始――!」


王都西門が開かれる。

無数の兵と兵器が、ゆっくりと地を進み始める。


その行く先には、ただ一つ。

黒き城、ネザリア。


戦いの幕が――静かに、上がろうとしていた。

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