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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【応接室の対話2】

【応接室の対話】


応接室――


グレンが椅子に腰を下ろしたのを見て、じゅぴはにこにこと笑いながらお茶を注いだ。


「じゃ、まずはご挨拶がわりに一杯っす♡

毒は入ってないから安心していいっすよ? 今のとこはね」


グレンはその言葉にわずかに眉を動かしたが、カップを手に取る。


じゅぴはくるりと回ってソファに腰掛けると、両足をひょいと組みながら言った。


「さて、グレン隊長。さっそくだけど、ちょっと聞いてみたいっす。

……王国って、ほんとに“勝てる”って思ってるんすかね?」


「……それは、上層部の判断だ」


「ふーん? “判断”ねぇ……」


じゅぴはわざとらしく首をかしげてから、指を立てて数え始める。


「ネザリアの規模、位置、構造、戦力不明。

こっちが一切交戦してないのに、兵の一人が死亡。

帰された使者の報告を“政治的に都合が悪い”って理由で揉み消し。

……で、“王国の威信のために殲滅”?」


カップを口元に持っていき、わざとらしく溜めた後、甘い声で言った。


「――バッカじゃないっすか?」


グレンは言葉を選ばずにいた。

だが、じゅぴはその“間”さえも楽しんでいるようだった。


「“威信が傷つけられた”って、勝手に自分の誇りを踏みにじられた気になって、

“国家の正義”って名前つけて殴り返そうとしてるだけっすよ。

やられたからやり返す。何も考えず、ただの感情論」


「……確かに、その通りだとは思う。だが、だからといって国を捨てるわけにはいかない」


「うんうん、それ、わかるっす。

“国”そのものに忠誠があるんじゃなくて、“そこに生きる人”を見てるからでしょ?」


「……」


「でもね、隊長。上の人間ってのは、そういう感情とか現実とか、びっくりするくらい無視して動くんすよ」


じゅぴは軽く笑いながら、指で机の上をトンと叩く。


「“玉座”に座ってるとね、何も見えなくなる。

だからせつなは、ちゃんと“見たうえで決める”。

敵意を向けられたら応じる。“相応の報い”でね」


グレンはカップを置いた。


「……あなた方は、既に“滅ぼす”決意を?」


その問いに、じゅぴはニコリと笑って言う。


「違うっす。“滅ぼされる”って決めたのは、王国のほうっすよ?」


その笑みの奥には、底知れぬ冷たさがあった。


「こっちは“拒否した”。何も求めてない。

でも、そっちが勝手に恐れて、勝手に敵意を向けて、勝手に戦争を選んだ」


「なら、それに応える。それだけっす。ねぇ、せつな?」


沈黙の中で――


重く、低い声が、部屋を満たした。


『……そうだ。』


せつなが、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


『我は現に、貴様らを帰らせている。

対話の余地を残し、刃を交えることなく――

選ばせたはずだ。』


グレンは息を呑んだ。


せつなの声音は静かだった。だがその一言には、明確な事実の提示と、断絶された選択肢の終わりが込められていた。


『それでも、貴様らは我が城を“攻める”と決めた。』


『ならば、その結果は――自ら選び取ったものだ。』


応接室に、再び沈黙が落ちる。


だがその静寂の中には、国家という看板の下で積み重ねられた、

愚かさと、取り返しのつかない選択の重みが、はっきりと漂っていた。

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