表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
49/159

【漆黒の王の声/応接室の対話】

先日、初めて感想をいただきました!ありがとうございます!!

読んでもらえてるって実感できるの、やっぱりめちゃくちゃ嬉しいですね……!

「感想書いてもいいよ~」って方がもし居たら、ぜひぜひお願いします(笑)

ブックマークだけでもめっちゃ励みになります!!

【漆黒の王の声】


ネザリア城・謁見の間――


漆黒の玉座。

その前に立つ一人の軍人。


静寂の空間に、彼の声だけが響いた。


「……王国軍所属、グレン=ロウバルト。

命を賭して、この城の主に会いに参りました」


静寂。


やがて、玉座の影から、重く深い声が響いた。


『……何を求めて来た』


その問いに、グレンは真っ直ぐに答える。


「三日後、王国はこの城への攻撃を決定しています。

私もその戦列に組み込まれる立場にあります」


「けれども私は……あなた方のことを、ただの“敵”として断ずることに疑問を覚えました。

あの日“帰された”意味を、己なりに受け止め――こうして、ここに立っています」


沈黙が落ちる。


玉座の主は、長く視線を注いだ末――


『……侮りはない。

この城を穢す言葉もない。

王国の論理に染まりきらず、己の意志で歩いた』


低く、冷ややかに続ける。


『貴様のような者は、殺すには惜しい』


その言葉の刹那、広間の空気が静かに変わる。


『客人として迎える。』


『――だが勘違いするな。

我が城を侮辱した者、その罪は万死に値する。

……ゆえに、“戦争”は終わらぬ。止めるつもりもない。

これは報いだ。王国が選び取った結末に、我は応じるのみ』


グレンは、一瞬だけ瞳を伏せ、そして深く頭を垂れた。


「……光栄に存じます。

謁見を許していただき、感謝申し上げます」


そのまま一呼吸、間を置いて――


彼は再び顔を上げる。


「――一つだけ、お願いがあります」


せつなは言葉を返さない。

ただ、その気配が“聞いている”ことを示していた。


「私と共に戦ってきた部下たちがいます。

彼らは皆、命令に忠実で、私の信頼に足る者たちです。

どうか、彼らの命も……あなたの判断に委ねていただきたい」


一拍ののち――


『……貴様と共に来た者の中には、我が名を蔑むような目を向けた者がいた』


『許すには値しない。

だが、貴様の振る舞いと、その眼で何を見定めるかによって――改めて判断する』


言葉は冷静に、だが確かに響いた。


それは“客人”にのみ与えられた、ほんのわずかな可能性の提示。


「……承知いたしました」


玉座は再び沈黙を保つ。


謁見は、そこで終わった。


だがその沈黙の奥で、“支配者のまなざし”はなお、鋭く彼を計っていた。


リィナが静かに近づき、くるりと背を向ける。


「案内するよ、隊長さん。……せつなに失礼のないように、ついてきてねぇ」


ルーガは何も言わず、少しだけ口元を緩めてグレンを見送る。


グレン=ロウバルト。

一人の軍人が、今――

漆黒の王のもと、自分自身と仲間を守るため歩みを始めた。





【応接室の対話】


ネザリア城・内部通路――


謁見を終えたグレンは、リィナの後を静かに歩いていた。


「……思ったより、静かだな」


「そうだよ。せつなの命令で、“不要な喧騒”は避けるようにしてるんだよねぇ。

来客があるなんて珍しいから、ちょっとだけ通路も整えておいたんだ」


振り返らずにそう言うリィナの声は、無表情のまま甘やかで、どこか不穏な響きを含んでいた。


通路に並ぶ装飾は、すべてが黒。

壁も床も天井も、艶のある深い漆黒で統一されている。


一見、質素に見えて――その実、完璧に洗練されていた。

壁には人の手では到底再現できない彫刻。

天井や柱には、極細の金糸による刺繍が刻まれている。

どれもあまりに緻密で、どのように作られたのかすら想像がつかない。


「……まるで、異界だな」


グレンの呟きは、誰にも聞かれなかった。


その途中、彼の目に“何か”が映る。


壁際に立ち尽くす、黒く、曖昧な人影。

人型に似ているが、顔も衣も、何もない。

ただ“在る”だけの異形。


グレンが目を向けると、リィナが振り返らずに答えた。


「それ、ぼくたちの“影”だよ。……使い捨ての下位体だけど」


「……あれが“影”……」


「見られても何も返してこないから安心して。……今はねぇ」


「……“今は”?」


「ふふ。案内、続けるよ」


グレンは小さく息を吐き、無言のまま彼女に続いた。


応接室――


漆黒の扉が静かに開く。


中もまた、黒で満ちていた。


艶のある黒木のテーブル。壁には幾何学の紋章が浮かび上がり、足元には沈むような深紅の絨毯。

香るのは上質な茶葉の香り。柔らかな灯りが、静かに場を照らしていた。


その奥、テーブルを挟んで座る二人の姿。


「来たっすねぇ♡ よ〜こそ、黒城の応接室へ!」


最初に声を上げたのは、じゅぴだった。


黒基調の衣装に、華奢な体躯。どこか小動物的な笑みを浮かべた少女が、ひらひらと手を振る。


その隣に座るのは――変わらぬ漆黒の鎧。金の装飾。

そして赤く光る片目を、こちらに向ける存在。


グレンは無言で立ち止まり、視線をまっすぐに向けた。


じゅぴがすっと立ち、手を揃えるようにして言った。


「じゃ、改めて紹介っす♡ こちら、我らがご主人様――このネザリア城の支配者、漆黒の王“せつな”殿っす♡」


その名を、初めて聞いた。


「……“せつな殿”。それが、あなたの名か」


「呼ぶのは自由っすけど、敬意だけは忘れないでほしいっすよ?

せつなは、“ちょっとした無礼”も理由にできるお方なんで」


軽口に見せかけて、じゅぴの声色には確かな“圧”が含まれていた。


グレンはそれを受け流し、静かに一礼する。


「先ほどの謁見……そして、この場を設けていただき、誠に感謝いたします」


せつなは応えない。

ただ、無言のまま椅子に身を預け、じっとグレンを見つめていた。


代わりに、じゅぴがくるりと回って、にっこりと微笑む。


「さてさて。ここからはじゅぴの担当っす♡

情報、質問、取引、ちょっとしたお茶請けの話も含めて、ぜ〜んぶ対応するっす!」


グレンはゆっくりと椅子に腰を下ろす。


緊張はある。だが恐れはない。

この部屋では、言葉の刃が交わされる――それが分かっているからこそ。


応接室。


それは“対話”のための空間。

だがその奥に在るのは、世界の形すら変え得る、“意思”そのものだった。

王国という巨大な体制に飲み込まれかけながらも、自らの意志で“玉座の前に立つ”ことを選んだグレン。

その行動は、たった一人の軍人にすぎない彼を、“選別される存在”にまで引き上げました。


これが未来に何をもたらすのか――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ