【漆黒の王の声/応接室の対話】
先日、初めて感想をいただきました!ありがとうございます!!
読んでもらえてるって実感できるの、やっぱりめちゃくちゃ嬉しいですね……!
「感想書いてもいいよ~」って方がもし居たら、ぜひぜひお願いします(笑)
ブックマークだけでもめっちゃ励みになります!!
【漆黒の王の声】
ネザリア城・謁見の間――
漆黒の玉座。
その前に立つ一人の軍人。
静寂の空間に、彼の声だけが響いた。
「……王国軍所属、グレン=ロウバルト。
命を賭して、この城の主に会いに参りました」
静寂。
やがて、玉座の影から、重く深い声が響いた。
『……何を求めて来た』
その問いに、グレンは真っ直ぐに答える。
「三日後、王国はこの城への攻撃を決定しています。
私もその戦列に組み込まれる立場にあります」
「けれども私は……あなた方のことを、ただの“敵”として断ずることに疑問を覚えました。
あの日“帰された”意味を、己なりに受け止め――こうして、ここに立っています」
沈黙が落ちる。
玉座の主は、長く視線を注いだ末――
『……侮りはない。
この城を穢す言葉もない。
王国の論理に染まりきらず、己の意志で歩いた』
低く、冷ややかに続ける。
『貴様のような者は、殺すには惜しい』
その言葉の刹那、広間の空気が静かに変わる。
『客人として迎える。』
『――だが勘違いするな。
我が城を侮辱した者、その罪は万死に値する。
……ゆえに、“戦争”は終わらぬ。止めるつもりもない。
これは報いだ。王国が選び取った結末に、我は応じるのみ』
グレンは、一瞬だけ瞳を伏せ、そして深く頭を垂れた。
「……光栄に存じます。
謁見を許していただき、感謝申し上げます」
そのまま一呼吸、間を置いて――
彼は再び顔を上げる。
「――一つだけ、お願いがあります」
せつなは言葉を返さない。
ただ、その気配が“聞いている”ことを示していた。
「私と共に戦ってきた部下たちがいます。
彼らは皆、命令に忠実で、私の信頼に足る者たちです。
どうか、彼らの命も……あなたの判断に委ねていただきたい」
一拍ののち――
『……貴様と共に来た者の中には、我が名を蔑むような目を向けた者がいた』
『許すには値しない。
だが、貴様の振る舞いと、その眼で何を見定めるかによって――改めて判断する』
言葉は冷静に、だが確かに響いた。
それは“客人”にのみ与えられた、ほんのわずかな可能性の提示。
「……承知いたしました」
玉座は再び沈黙を保つ。
謁見は、そこで終わった。
だがその沈黙の奥で、“支配者のまなざし”はなお、鋭く彼を計っていた。
リィナが静かに近づき、くるりと背を向ける。
「案内するよ、隊長さん。……せつなに失礼のないように、ついてきてねぇ」
ルーガは何も言わず、少しだけ口元を緩めてグレンを見送る。
グレン=ロウバルト。
一人の軍人が、今――
漆黒の王のもと、自分自身と仲間を守るため歩みを始めた。
【応接室の対話】
ネザリア城・内部通路――
謁見を終えたグレンは、リィナの後を静かに歩いていた。
「……思ったより、静かだな」
「そうだよ。せつなの命令で、“不要な喧騒”は避けるようにしてるんだよねぇ。
来客があるなんて珍しいから、ちょっとだけ通路も整えておいたんだ」
振り返らずにそう言うリィナの声は、無表情のまま甘やかで、どこか不穏な響きを含んでいた。
通路に並ぶ装飾は、すべてが黒。
壁も床も天井も、艶のある深い漆黒で統一されている。
一見、質素に見えて――その実、完璧に洗練されていた。
壁には人の手では到底再現できない彫刻。
天井や柱には、極細の金糸による刺繍が刻まれている。
どれもあまりに緻密で、どのように作られたのかすら想像がつかない。
「……まるで、異界だな」
グレンの呟きは、誰にも聞かれなかった。
その途中、彼の目に“何か”が映る。
壁際に立ち尽くす、黒く、曖昧な人影。
人型に似ているが、顔も衣も、何もない。
ただ“在る”だけの異形。
グレンが目を向けると、リィナが振り返らずに答えた。
「それ、ぼくたちの“影”だよ。……使い捨ての下位体だけど」
「……あれが“影”……」
「見られても何も返してこないから安心して。……今はねぇ」
「……“今は”?」
「ふふ。案内、続けるよ」
グレンは小さく息を吐き、無言のまま彼女に続いた。
応接室――
漆黒の扉が静かに開く。
中もまた、黒で満ちていた。
艶のある黒木のテーブル。壁には幾何学の紋章が浮かび上がり、足元には沈むような深紅の絨毯。
香るのは上質な茶葉の香り。柔らかな灯りが、静かに場を照らしていた。
その奥、テーブルを挟んで座る二人の姿。
「来たっすねぇ♡ よ〜こそ、黒城の応接室へ!」
最初に声を上げたのは、じゅぴだった。
黒基調の衣装に、華奢な体躯。どこか小動物的な笑みを浮かべた少女が、ひらひらと手を振る。
その隣に座るのは――変わらぬ漆黒の鎧。金の装飾。
そして赤く光る片目を、こちらに向ける存在。
グレンは無言で立ち止まり、視線をまっすぐに向けた。
じゅぴがすっと立ち、手を揃えるようにして言った。
「じゃ、改めて紹介っす♡ こちら、我らがご主人様――このネザリア城の支配者、漆黒の王“せつな”殿っす♡」
その名を、初めて聞いた。
「……“せつな殿”。それが、あなたの名か」
「呼ぶのは自由っすけど、敬意だけは忘れないでほしいっすよ?
せつなは、“ちょっとした無礼”も理由にできるお方なんで」
軽口に見せかけて、じゅぴの声色には確かな“圧”が含まれていた。
グレンはそれを受け流し、静かに一礼する。
「先ほどの謁見……そして、この場を設けていただき、誠に感謝いたします」
せつなは応えない。
ただ、無言のまま椅子に身を預け、じっとグレンを見つめていた。
代わりに、じゅぴがくるりと回って、にっこりと微笑む。
「さてさて。ここからはじゅぴの担当っす♡
情報、質問、取引、ちょっとしたお茶請けの話も含めて、ぜ〜んぶ対応するっす!」
グレンはゆっくりと椅子に腰を下ろす。
緊張はある。だが恐れはない。
この部屋では、言葉の刃が交わされる――それが分かっているからこそ。
応接室。
それは“対話”のための空間。
だがその奥に在るのは、世界の形すら変え得る、“意思”そのものだった。
王国という巨大な体制に飲み込まれかけながらも、自らの意志で“玉座の前に立つ”ことを選んだグレン。
その行動は、たった一人の軍人にすぎない彼を、“選別される存在”にまで引き上げました。
これが未来に何をもたらすのか――




