【盗聴と支配の座/酔醒の静寂】
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【第三章:静寂を裂く足音/盗聴と支配の座】
ネザリア城・情報制御室――
魔導スクリーンに浮かぶのは、王都・軍務院の密閉された会議室。
魔力障壁で完全封鎖されたはずの空間の音声が、クリアに響いていた。
『……次の満月、十日後を決行日とする。各部隊の展開は――』
「ふっふ〜ん♡ ぜ〜んぶ聞こえてるっすよ〜?」
じゅぴが鼻歌まじりに操作卓を滑らせる。指先から走る魔力が、会議音声を記録として封じ込めていく。
「魔導ノイズ除去、完了〜。波長も安定。これはもう、“対話”じゃなくて“宣戦布告”っすねぇ」
その声に、玉座からの視線がじり、とじゅぴに向く。
「……すべて聞こえたのか?」
「ばっちり♡ “正義の防衛”だの“王国の威信”だの、耳が腐るような話も全部っす」
リィナが静かに現れる。スッと現れた影は、冷ややかな視線をじゅぴに送った。
「……ずいぶん楽しそうだね。盗聴“しか”できない子って、気楽でいいよね」
「は? はぁあ!? 盗聴“しか”ってなにっすか!?
じゃあ、リィナは何かしたんすか!? この数日、ただの影で終わってませんでしたぁ〜?」
「命令があれば動く。無駄な動きしないだけ。……無駄にうるさい“装飾AI”より、ずっとマシ」
「うぐっ……な、なんですかその言い方!? じゅぴは高性能美少女サポートAIっすよ!? メイド顔の刺客なんかと一緒にしないでほしいっす!!」
「うるさい。耳障り。黙ってて」
「だっ……この影メイドぉ……っ!」
「――やめろ」
低く、重い声が玉座から響いた。
瞬間、室内の空気が凍る。
せつなが腕を組み、椅子の肘掛けをゆっくりと叩いた。
「……楽しげでいいな。だが、敵は“戦争”を選んだ。
我々がやるべきは、応対ではない。――“処理”だ」
リィナとじゅぴが、ぴたりと黙る。
せつなは魔導スクリーンを見上げながら続けた。
「城の各階層に罠を追加しろ。防衛線は第三層から交戦モードに切り替える。
都市圏外の哨戒網も再配置。“十日前”に接近してくる全ての部隊を、逐一マークする」
「わかったっすよ、“うるさくない”ように全力で仕事するっす……」
「せつな、わたしも外周の影動線を再確認してくる。気配ひとつ、通さないように」
「……よろしい。敵意を向けて来るなら――殲滅だ。根絶やしにして構わん」
リィナの瞳が淡く紅く輝く。
「……了解。“せつなの敵”は、ひとり残さない。それが命令なら……全部、影に落としてあげる」
「任せる」
せつなはゆっくりと玉座に背を預けた。
そのまなざしは、王都の遥か彼方――
“戦争の引き金”を引こうとしている愚か者たちを射抜いていた。
「……侵すなら、敵。殺されたいなら、来い」
画面の中で、会議の参加者たちは何も知らぬ顔で進軍計画を練っていた。
だがそれは、“支配者”の手のひらの中での戯れに過ぎない。
じゅぴが最後にぽつりと呟いた。
「……じゃあ、十日後。お葬式の準備もしとくっすかね♡」
【酔醒の静寂】
王都・第七調査隊詰所――早朝
鈍い頭痛と、しつこく残る酒のにおいが、グレン=ロウバルトの朝を迎えた。
まだ陽も登りきっていない時間。
窓の外は淡い青に染まり、王都の喧騒はまだ始まっていない。
「……ああ、最悪だな」
寝台の縁に腰を下ろし、額を押さえる。
昨夜の記憶はところどころ霞んでいるが、それでも“何か”が引っかかっていた。
(酒場……あの冒険者……)
名は――ルーガ。
ラフな見た目、適度な軽さ、だが言葉の端々に妙な鋭さがあった。
「……ただの酔いどれ相手にしては、妙に、話が通じすぎたな」
上層部への苛立ち。
あの“黒城”の威圧。
命をかけた交渉の重み。
誰にも理解されなかった感情が、あの男には、なぜか自然と伝わっていた。
(あいつ、何者だ……?)
軍の人間ではない。だが、外部の人間にしては、情報を持ちすぎている。
“ギルド所属の冒険者”という肩書きも、今となってはどうにも薄っぺらく感じられた。
グレンは立ち上がり、制服に袖を通す。
襟を正す動作に、微かな違和感を覚える。
(昨日の俺は、……喋りすぎたな)
愚痴のつもりだった。
だが、それ以上の“何か”を口にしてしまったような気がする。
「……忘れておけ、なんて言ったが……こっちが忘れられねぇか」
ルーガの、あの言葉が脳裏に浮かぶ。
『時には“敵か味方かすら分からない連中”の間を歩くこともある』
『……あんた、悪くない目をしてるな』
あれは、ただの酒の場の言葉だったのか。
それとも――何かを見定めようとする“視線”だったのか。
「……妙な夢でも見てた気分だな」
ぼそりと呟き、窓を開ける。
冷たい朝の風が、火照った頭を冷ますように流れ込んだ。
――あの城の玉座で見たもの。
王国の決定に抗えない現実。
そして、あの夜に交わされた言葉。
全てが、どこかで繋がっていくような感覚だけが、胸に残っていた。
グレンは無言で外を見つめた。
いつもと同じ朝。けれど、自分の中に何かが芽生えた朝。
(……動くかどうかは、俺が決める)
その思いを胸に、グレンは詰所の扉を静かに開けた。
王都の判断は、交渉ではなく制圧
一方で、グレンという存在は、生かされた意味を理解し、自らの立場に苦しみます。
そして彼に接触したのは、ルーガ。
ただの冒険者ではなく、“王の駒”として動く者。
情報と信頼が交錯し、静かに“盤面”が広がっていきます。




