【偵察と接触/帰還】
【偵察と接触/帰還】
「……十分だ。戻るぞ、じゅぴ」
「了解っす。転移ポイント、展開!」
じゅぴが指先で空を切ると、空間に転移陣が開かれる。
事前にセットしておいた帰還座標――
ネザリア城・玉座の間へ直通の魔法ゲートが輝く。
ふたりの姿は、再び風のように溶けて消えた。
【偵察と接触/玉座の間にて】
転移の光が弾け、重厚な玉座の間がふたりを迎え入れる。
その瞬間、控えていた黒衣のメイドたちがひざをつき、頭を垂れる。
「おかえりなさいませ、せつな様、じゅぴ様」
儀礼のように美しく揃った声。
だが、ひときわ目を引いたのは、その列から静かに歩み出たひとりの少女だった。
「……おかえり、せつな」
それはリィナ=シュヴァルツ。
小柄な身体を覆う漆黒のメイド服の裾が、足取りに合わせて静かに揺れる。
表情はほとんど変わらない。でも、その紅い瞳は――まっすぐに、せつなだけを見つめていた。
「今日も、おつかれさまだよ。……ねぇ、膝、貸してあげよっか?」
甘く囁くような声。耳元に届いた瞬間、じゅぴの眉がぴくりと跳ねた。
「うわ、出たっすよ……ぴったり張りつきストーカー……」
じゅぴがこぼすと、リィナは視線を向けず、ただ無表情に呟く。
「せつなの隣は、ぼくの場所……邪魔、しないでねぇ?」
静かに、でも確実に“殺意”を含んだ声。
その柔らかさの裏に、獣のような本能が潜んでいるのは、誰の目にも明らかだった。
「……やっぱ、こわいっすこの子……
でも殺しには来ないんだよねぇ、いつもギリギリで止まるっていうか……」
「せつなが止めるなら、ちゃんと我慢するよ。……だけど、誰にも触れさせない。
せつなは、ぼくだけのご主人様なんだから」
静かに、甘く、執着をにじませる声でそう言いながら、リィナはすっとせつなの隣に立つ。
一ミリも隙を空けない位置取り。あからさまな“縄張り主張”だった。
せつなはその様子に何も言わず、ただ軽く息をつく。
「――幹部たちを、玉座の間へ。状況を共有する」
命じる声に、メイドたちは即座に動き出す。
各部門の幹部NPC――戦闘、情報、防衛を担うエリートたちが、次々と姿を現した。
その中心にいるのは、せつな。
そしてその両脇に――いつものように静かに火花を散らす、じゅぴとリィナ。
戦いはまだ始まっていない。
けれど、“陣形”だけはもう、完璧に整っていた。
偵察任務を終えたふたりが帰還!
そして、張りつきメイドと小悪魔AIのバチバチ火花が始まります。
リィナとじゅぴ、それぞれの“隣の座”への執着にもぜひ注目してやってください。