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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【動き出す都市/調査隊出発】

お待たせしました三章突入です!

二章までどうでしたか?感想などもらえたら助かります!

よろしくお願いします!!

【動き出す都市】

「――都市の外壁に魔導結界は確認されず。偵察班は引き続き、警戒を維持したまま観測を継続します」


報告が途切れると同時に、玉座の間に静寂が落ちた。


せつなが短く指示を出す。


「……よし。引き続き“潜伏観測”を継続。敵に存在を悟られるな。必要があれば、その場を離れてもいい。……だが、“気配だけは残すな”」


「了解っす、せつな♡ 潜伏指示、即座に転送っす」


じゅぴが指先を滑らせ、魔導通信を更新する。


せつなは玉座に肘を置き、静かに目を細めた。


そのとき――


「せつな様、追加の報告です!」


再び魔導通信が開かれた。今度は、偵察班の“斥候小隊”からの情報。


「先ほど発見した都市から、馬車数台と十数名の部隊が出発の準備中! 装備は簡易な旅行用、非武装ではありますが……どうやら“調査隊”のようです!」


「……動いたか」


せつながわずかに身を乗り出す。


「隊列は? 先導者の魔力量は?」


「先頭の人物――魔力量、中程度。指導階級の可能性あり。 護衛と思われる者が数名。馬車には文書と器材の積載を確認」


「……完全に“外”を調べる構え。となれば――」


「せつな♡ 盗聴、いっちゃうっす?」


「……じゅぴ、やれ」


にやりと笑ったじゅぴが、即座に展開する魔導式。


「“耳と声の狭間に”――盗聴魔法《無音耳殻シェル・リスナー》、発動っす♡」


同時に、リィナが背後の影に手を差し出し、黒い魔力の布を展開する。


「視線妨害、動線封鎖……準備できてる。どこからでも、近づけるよ」


せつなは短く頷いた。


「調査隊の声を拾え。何を探しているのか、どこに行くのか、情報をすべて持ち帰れ」


「――ラジャ♡ じゅぴちゃん、張り切っちゃうっすよぉ〜!」


「……浮かれないの」


「はいは〜い……でも、楽しそうっすよ? ♡」


「……うるさい」


玉座の支配者は、静かに目を伏せた。


情報――

それは、支配の礎であり、戦いの“初手”となる。





【調査隊出発】

赤茶けた大地に、風が吹く。


西方の荒野地帯――かつて何もなかったはずの地平線の向こうに、“それ”は現れた。


重厚な外壁、黒き尖塔、空に向かってそびえるような不気味なシルエット。


まるで、昨日まで存在しなかった空間に、突然“転移”してきたかのように。


「……問題になって当然か」


ひとりの男が、そう呟いた。


王都より派遣された【調査任務部隊】――

この地に生じた“異常”を調べるために組織された小隊である。


総勢二十名弱。

隊長職に就く中年の騎士は、野営地から前方を睨んでいた。


「王国の正式な領土内に、事前通達もなく築かれた城……それも魔力反応は、並じゃない。

これはもう、ただの“遺構”でも、“迷いの幻”でもない」


副官が、そっと地図を掲げる。


「“あの位置”は、本来なら何もない無人の平原……ですが、現在確認されている魔力圧は、少なく見積もっても要塞級です」


「陛下の判断は正しい。“調査”と銘打ってはいるが、事実上――“敵性存在”への第一対応だ」


「……ですが、兵たちにはそこまでは伝えていないのですよね?」


「不用意な混乱を避けるためだ。だが、いずれは明確になる」


その時、周囲で馬車の準備が整った声が上がった。


数台の輸送車に加え、各種の観測器具、対魔防御の結界装置――

部隊の装備は、“ただの視察”にはあまりに重武装だった。


そんな中、少し離れた兵士たちの列から、ひそひそとした声が漏れる。


「なぁなぁ、聞いたか? 今から行くって城さ、本当は昨日までなかったってよ」


「マジで? じゃあアレか、“転移魔法の遺産”とか、そんな類のやつ?」


「わかんねぇけど……とにかく“異常”らしいぞ。魔力の量がとんでもねぇとか、誰も近寄れねぇとか……」


「へへ……でもよ? そんなの調べに行くってんなら、なんかお宝でも転がってんじゃねぇの? 魔石の一つでも持って帰れりゃ、しばらくは楽できるぜ」


その言葉を、先頭の騎士が鋭く拾った。


「……軽口を叩くな、低俗が」


「ひっ、た、隊長……!」


馬上から鋭い視線を落とすと、兵士たちは一斉に背筋を正した。


「我らの任は、国境内に出現した“未確認構造物”の調査。

それが自然か人工か、敵か味方かを見極めるのが目的だ。略奪や私的取得を目的とする者がいれば――軍法会議にかける。覚悟しておけ」


「は、はっ……!」


その場の空気が一気に引き締まる。


そして。


風のない空に――微かに波打つ“音”。


誰も気づかないその揺らぎは、すでに空間に溶けていた。


音の残響、魔力の震え、兵たちの会話。

それらはすべて、空に潜んだ《隠密盗聴陣》に記録されていた。


その術式は、どんな視線にも気配にも映らない。


それが、今まさに――

“誰かの城”に、確実に届いていることを、調査隊の誰一人、知る由もなかった。

街での仮面の任務を終えたセリナとは別に、

ネザリアの影は、ついに“世界”へと触れはじめます。


突如として現れた都市。

そこから動き出す調査隊。

そして、それらを静かに監視する“支配者たち”――

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