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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
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【静寂の号令/街の空気と再会の影】

【静寂の号令】

「じゅぴ、警戒態勢を平常運転まで戻せ。

城内は最低限の自衛モード、誤警報を避けろ」


「了解っす♡ 再起動系ユニット、全部低稼働モードに戻しておくね〜」


魔導端末の光が淡く波打ち、結界ラインと監視魔眼が順次フェードダウンしていく。


せつなは一拍、息を置いてから――


「偵察部隊を周囲に展開しろ。

東西南北に分けて、可能な限り広範囲に散らして調査を開始。

……何かを見つけるまで、戻るな」


じゅぴの指が止まる。


「――最優先事項は?」


「“誰にも気づかれるな”。

発見されたら即座に撤収。

……隠密こそが、この行動の鍵だ」


せつなの声は、冷たく、深く、迷いがない。


「いけ」


その一言で、空間に展開されていたユニット召喚陣が一斉に点滅し、

次の瞬間、無数の影が静かにネザリア城を離れていった。


玉座の間には、再び静けさが広がる。


だがそれは、ただの静寂ではなかった。

“支配の網”が、今まさに世界へと広がりはじめていた――


――そして、場面は再び、城の地下へと降りていく。



(せつなの命令……守ったつもりだったけど、やっぱり……やりすぎ、だったかな)


拷問室の暗がりで、リィナはわずかに目を伏せた。


けれどその表情には、後悔ではなく――

満足げな、甘く蕩けた微笑みが浮かんでいた。


紅い瞳が、かすかに光を帯びる。


「……ふふ、でも。ぼく、“いい子”だったよね……せつな?」


そう呟くようにして、影の中に身を溶かす。


影メイド、リィナ=シュヴァルツ。

彼女の“尋問”は終わった。


けれどその爪痕は、確実に“敵の核”を抉っていた――





【街の空気と再会の影】

朝の陽射しが、静かに石畳の路地を照らしていた。

セリナはギルド寮の玄関を出ると、ゆっくりと歩き出す。


(……まだ“怯えてるふり”は続けなきゃね)


足取りは重く、表情もどこか曇らせたまま。

だがその内心は、まるで別物。


(ほんとは……また面白いこと、起きないかなって思ってるのに)


昨夜の《幻響連絡》で、せつなから新たな指示はなかった。

だから今は、“普通の冒険者の少女”としての時間。


「今日は……ただ、街を歩くだけ。情報は自然に耳に入るし、ついでに雰囲気も見れるし……ね」


仮面の奥で小さく笑い、通りの露店や人の流れを眺める。


(……うん。ほんの少しだけ、緊張が解けてる。街の空気、昨日より柔らかい)


そのとき。


「……あっ! おい、そこの……セリナ、だっけか?」


声に反応し、セリナはびくりと肩を震わせる――ふりをした。


「え……?」


振り返ったその先。

立っていたのは、あの夜、自分を助け出してくれた救助隊の一員だった青年冒険者。


赤茶の髪を後ろで束ね、軽装の鎧をまとった彼は、明るく笑いながら歩み寄ってくる。


「やっぱりそうだ。あの時の……覚えてるか? 無事でなによりだ!」


セリナは、ゆっくりと頭を下げた。


「……あの時は、本当に、ありがとうございました……」


小さな声。伏せた視線。怯えるような仕草。


(ふふ、警戒されない距離感、大事よね。今のは完璧)


「いやいや、礼なんていいさ。むしろこっちが驚いたよ。

お前が残してくれた痕跡、あれがなかったら本当に見つけられなかった。あんな器用な真似、なかなかできるもんじゃないぜ?」


「……え……? わたし、そんなにすごいことは……」


(ばっちり痕跡撒いてたけどね。見つけられたってことは、それだけ“この世界の人間”にも使える奴がいたってこと)


「そうそう、ギルドのほうでも話題になってたんだぞ。“痕跡の少女”ってな。

お前、しっかりしてるなって皆言ってた」


「……ぁ……そんな、わたし、ただ、逃げたくて……」


頬を赤らめ、目を伏せる。

表面上は、まるで緊張して戸惑っているかのように――


(よし、この感じで繋がりを作っておけば……街側の“冒険者たちの輪”にも自然に入り込める)


「……あの、よかったら……また、色々教えてください……。わたし、まだ慣れてなくて……」


「おう任せとけ。こっちはいつでも歓迎だ!」


にこやかにそう言って去っていく冒険者の背中を、セリナは静かに見送る。


(ふふ……“味方”が増えていくの、嫌いじゃないわ)


そして彼女は、再び歩き出す。


仮面の下に、静かな笑みを隠して――

街の深部へと、その“気配”を探しながら。

せつなの指揮により、ネザリアの影は静かに世界へ展開を始めました。

その一方で、セリナは再び“日常の仮面”をかぶり、街の中に自然と溶け込んでいきます。

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