【影の拷問と、命の終わり/影の終焉と、世界の構図】
すいません!区切りにくくてちょっと長くなっちゃいました(汗
【影の拷問と、命の終わり】
「……名も知らない。命令も“選別”と“収集”だけ……もう、何も……知らない……」
男の声が掠れる。
その身体から、反抗の意志も力も、すでに失われていた。
だが――
リィナの手元は、まだ止まっていなかった。
「……そっか。もう、“価値”はなくなったんだね」
ゆっくりと、指をワイヤーに滑らせる。
それはまるで、名残惜しむように、丁寧で繊細だった。
「せつなに“いい子”って言ってほしかったけど……
でも、“後始末”までちゃんとするのが、ぼくのお仕事だもんねぇ?」
男の目が微かに見開かれる。
その恐怖を、リィナは甘く微笑みながら受け止めた。
「ねぇ……“おもちゃ”ってさ、壊れたら捨てるんだよ?
だから――壊してあげるね」
次の瞬間。
ワイヤーが閃き、魔力の糸が男の首を静かに締めつけた。
“音”はなかった。
ただ、淡い紅の軌跡だけが、石床に一筋残る。
リィナは立ち上がり、首をかしげる。
「……これで、ぼくは“完璧”だよね?」
だが――
「はぁ〜い、ちょっとストーップっす!」
背後から、パチンと音が鳴った。
じゅぴが腕を組んで、ふくれっ面で歩み寄ってくる。
「ねぇ!? 殺したっす!? いま普通に“処分”したよね!?
情報がないのはわかるけど、あんまりだと思うっすよ!? じゅぴ的には、ギリセーフで保存しといてほしかったっす!」
「……“おもちゃ”は壊れるまでが、おもちゃ。
中途半端に残すと、“腐る”よ?」
リィナは無表情のまま、冷たく返す。
「それに、せつなの命令は“情報を取れ”だった。
もう喋らないなら、“いらない”よね?」
「こ、こいつぅ〜っ! せつなに告げ口しよっかなぁ……!」
「どうぞ。
でも――“仕事したのはぼく”だから、ちゃんと褒めてくれるのは、ぼくだよ?」
「ぐ、ぐぬぬぬ……!」
「静かにして。うるさいよ。」
その一言に、じゅぴがぷいっと顔を背けた。
「ちぇっ……またリィナに一本取られたっす……」
リィナは淡く笑って、拷問室をあとにする。
振り返らず――でも、確かに満足げな足取りで。
「……せつな、“いい子”にできたよ。ねぇ、ちゃんと見てくれてた?」
【影の終焉と、世界の構図】
「……やりすぎるな。任務は“尋問”だ。
殺しは、最後の手段に留めろ」
せつなの声は静かだった。だが、その一言には明確な重さがあった。
リィナは振り返らず、ぴたりと足を止める。
「……うん。ごめん、せつな。
でも……“情報、もう出てこなかった”から」
言い訳ではない。淡々と、ただ“結果”を伝えるその口調は、どこまでも素直だった。
その背中に、ふっと軽い声が飛んでくる。
「はぁ〜い、出た出た、“やりすぎ影メイドモード”っすねぇ。
これ、じゅぴが止めなかったらエスカレートするパターンだったやつ〜♡」
「……喋らないで。
さっきも言ったけど、うるさいと“せつなの声”が聞こえなくなる」
「むぐっ! そ、それ言われると返せないっすぅ〜……」
小さな口喧嘩が始まるが、せつなが一言だけ、口を開いた。
「……報告に入れ。今回の情報をまとめろ」
「りょーかいっす♡」
「……はい、せつな」
玉座の間。
じゅぴの操作する魔導スクリーンに、文字と図表が浮かび上がっていく。
「今回の尋問から整理すると、こんな感じっすね〜」
選別の基準は“魔力量”や“特殊な資質”に関係してる可能性が高い
捕らえた対象は“どこか”に送られ、再選別 or 研究 or 使役されている
指示を出していたのは、あくまで“この世界の存在”
選別に使われたのは、街の内部にいる協力者 or 組織的な何か
「要するに、“この世界の人間”がやってるってことっすね。
ゲームの名残を模倣した文明で、力のある人間を選り分けてる……それが“誰かの意志”に繋がってるってのが重要ポイントっす!」
せつなはスクリーンを見つめながら、口を開く。
「つまり――
この世界は、かつての《Ark Chronicle Online》に似た構造を持ちながらも、
完全に独立した“異世界”として成立している。
……そして、俺たち以外は“この世界で生きてきた人間”だ」
「うん。“あっち”みたいに、管理者がログインして操作してるわけじゃない。
ここはもう、別の“現実”なんだよねぇ……」
「だとすれば――
この世界そのものに、“選別”を必要とする“何か”が存在する。
……統治者、宗教、古代魔導文明の残滓……何であれ、放置はできない」
せつなは一歩、スクリーンに近づき、静かに言葉を重ねた。
「この街だけではない可能性もある。
“力ある者を回収している”……それがこの世界全体の構造に関わっているとしたら――」
じゅぴが頷きながら、指をカチカチ動かす。
「ね、せつな。これってつまり――
“この世界そのものが、魔力資源のシステム”に近い形で動いてるってことっすよね?」
「可能性はある。
それを裏から操作している存在――あるいは、制度そのものが独立して動いているとすれば……」
リィナがぽつりと呟く。
「ぼくたちの“魔力量”……この世界の人間から見れば、“異質”なんだよね。
……だから、巻き込まれるのも、当然か」
せつなは、ふっとだけ口元を緩める。
「だが、“選ぶ側”がいるということは――
“選ぶ資格を奪える”ということでもある」
玉座の間に、再び静けさが満ちる。
その静けさの中で、じゅぴが小さく笑う。
「ふふっ……それ、聞けて安心したっす♡
せつなはやっぱ、“支配される側”じゃないっすよね〜!」
潜入任務の“終着点”である尋問と処理、
そして、世界の構造についての重大な手がかりが提示されました。
リィナの“完遂主義”と、じゅぴの“情報解析力”、
そして、せつなの“支配者としての覚悟”――
この3人が、それぞれの形で“異世界の構造”に一歩踏み込んだ瞬間だったと思います。




