【夜訪う影】
今回少し短いので2話上げます!
深夜のギルド寮。
セリナの部屋には、張り巡らされた結界が静かに脈動していた。
空気が歪み、転移の光がほとばしる。
その中心に現れたのは――せつな。
仮面の少女は、音も立てずに膝をつく。
「……お越しいただき、光栄です。せつな様」
せつなは無言で歩み寄り、小さな黒い箱を差し出す。
「よくやった、セリナ。これは報酬だ。受け取れ」
「……恐れ入ります。任務継続のためならば、ありがたく頂戴いたします」
セリナは恭しく両手で箱を受け取り、蓋を開ける。
中には、飾り気のない黒銀の指輪。
「外見は地味だが、気配遮断と能力補助が施されている。目立たずに動くには最適だ。
お前のような“潜入者”には、必要な装備だろう」
「……了解いたしました。以後の任務に、最大限活用させていただきます」
――仮面の声は冷静。表情も、崩れない。
だが、心の奥では。
(……っ。指輪……“わたしのために”……。
せつな様が、わたしのことを考えてくれて……くれたんだ……)
(……すごく、嬉しい……っ)
「以上だ。引き続き、任務を遂行しろ。無理はするな。お前が潰れることは……望まない」
「……畏まりました。せつな様。必ず、応えてみせます」
せつなは静かに魔力を収束し、転移の構えをとる。
一瞬の光――そして、彼の姿は消えた。
「…………」
部屋に戻った静寂の中、セリナは仮面を外す。
ゆっくりと、ベッドの端に腰を下ろし――
「……はぁっ……」
そして、ぽすんと毛布に顔を埋めた。
「せつな……せつな様……っ。ほんとに、来てくれた……。
ちゃんと、“わたしのため”に……考えて、選んでくれて……」
小さな声が、毛布の奥から漏れる。
「うれしい……っ。すっごく……うれしい……っ」
ぎゅっと、指輪を握りしめる。
「……でも、見せちゃだめ……まだ、仮面のままじゃないと……」
そう言いながら、くるりと丸まって毛布にくるまり――
「……ねぇ、せつな様……ほんとは……撫でてほしかったな……」
ほんのりと頬を染めながら、そっと目を閉じた。
その胸元には、彼から贈られた指輪が――
肌身離さず、大切に抱かれていた。
仮面の裏では、常に冷静に情報を集めていた彼女ですが……
“せつなが来てくれた”という事実は、それだけで彼女にとって特別な出来事だったのかもしれません。
渡された報酬の指輪は、ただの道具ではなく、“信頼”の証。
セリナにとって、それがどれだけ嬉しかったか――
その仮面の奥の微笑みが、すべてを語ってくれたと思います。




