表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
25/159

【リィナ=シュヴァルツ】

【リィナ=シュヴァルツ】

男の手足は、既に魔力拘束具によって床に縫い止められていた。

身体が浮かぶことも、指を動かすことすらもままならない。


その目の前に、コツン、コツン……と軽やかな足音が近づく。


現れたのは――小柄な影。

黒いフリルのついたメイド服に、無表情の少女。


「……こんにちは。ぼく、リィナ。よろしくね?」


男の顔色がさらに悪くなる。

彼女から発される気配が、“人間”の範疇を逸していた。


「せつながね、教えてって言ってるの。だから、ぜんぶ、喋って?」


「だ、誰がお前らなんかに……っ!」


「……うん。やっぱり、そう言うと思った」


リィナは膝をつくと、男の頬にそっと指を這わせた。

それは丁寧で、優しげで、まるで恋人に触れる仕草のようだった。


「ねぇ……知ってる? 舌って、噛み切っても、意外と死なないんだよ?」


男の肩がビクリと揺れる。


「ほら、あなた……いま、考えたでしょ? “どうせ口を割るなら”って。

でもね――もうちょっと我慢してからにした方がいいと思うよ?」


リィナの瞳が、紅く淡く光る。

その瞬間、男の身体から“冷や汗”とは別の、“魔力の拒絶反応”が迸った。


「……ッ! ま、まさか……!」


「……ねぇ、舌、噛もうとしてるでしょ?」


リィナがそっと男の口元へ指を差し伸べる。

だが、次の瞬間――彼の顎が、動いた。


(噛み切る……! )


ガクン!


その瞬間、男の口に小さな衝撃が走る。

リィナの指が、ほんの指先だけで“顎の付け根”を突いた。


骨の動き、筋肉の軸――その全てを見切っていた。


「うん、ダーメ。

“自害”なんて、ぼくの前じゃ通じないんだよ?」


男の口元から、よだれと血が滲む。

舌は、ほんの数ミリで噛み切れず、顎が脱力した状態で固定されていた。


「喉の奥に封魔印、貼っといたから。しゃべることはできるけど、それ以上は何もできないよ? よかったね、“楽”になれないで」


リィナは小さく微笑む。

その口調は、どこまでも甘く、とろけるように優しかった。


「じゃあ、教えて。“反応”ってなに? なにを選別してたの?

……ねぇ、全部、せつなに報告したいの。ぼく、“褒めて”もらいたいの」


男の表情が、ついに崩れ始めた。


口元は震え、目には明確な恐怖が宿っていた。


彼の口から、少しずつ、情報が零れ始める――

セリナによって転送された“指示者”を迎えたのは、ネザリアの影――リィナ=シュヴァルツ。

甘く優しい声で言葉をかけながら、逃げ道も自害の余地も封じ、じわりじわりと情報を引き出していくその様は、まさに“影のメイド”にふさわしい姿でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ