【影の爪痕/堕ちた指示者】
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もし「続きも読んでみようかな」と思っていただけたら、
ブックマークしてもらえると、とても嬉しいです!(笑)
これからも物語はどんどん進んでいきますので、どうぞよろしくお願いします!
【影の爪痕】
混乱の叫びと衝撃の波が、地下区画を揺らしていた。
壁が砕け、警備が散り、救助に駆けつけた冒険者たちの怒号がこだまする。
セリナは石床にうずくまったまま、目だけを細める。
(……この騒ぎの中なら、“一手”くらい、刺せる)
静かに立ち上がる。
仮面は怯えた少女のまま――だが、その身体から滲む空気が、ほんの一瞬だけ変わった。
気配、ゼロ。
足音、ゼロ。
視界から抜ける“感覚の影”。
セリナはまるで闇そのもののように石室を出て、走り去る一人の男に目を留めた。
(……肩の印、“指示者クラス”ね。反応強度、周囲への指示速度、装備の質。間違いない)
「――ちょっとだけ、付き合ってもらうわ」
音もなく接近。
刹那の動きで喉元へ短剣を当て、魔力の麻痺針を突き刺す。
男は悲鳴を上げる間もなく、くぐもった呼吸とともに崩れ落ちた。
(よし、“せつな様に渡すプレゼント”は、確保)
すぐさま、指先をかすかに浮かせる。
足元に淡く広がるのは、ネザリア城・転移座標印。
魔力コード《夜影指定陣・零式》――影専用、極秘の“送り”転移。
瞬間、光も声も立てず、男の身体が宙に溶けて消えた。
(……送信完了)
その瞬間にはもう――セリナの姿は、元の石室へと戻っていた。
救助に来た冒険者の男が扉を蹴破り、息を切らして叫ぶ。
「おいっ! ここに生存者――! 仮面の少女がいるぞ!!」
セリナは、その声に“怯えたように”顔を上げる。
「た、たすけ……て……っ」
ぐったりと倒れ込むその動作には、一点の隙もなかった。
誰も、彼女がわずか数秒前にこの場所を離れていたことに――気づけなかった。
それは、“この世界”の誰一人として到達していないステータス、
そして、せつなの“影”として仕込まれた存在だけが成せる、真の潜入技術。
(ふふ……また、手がかりがひとつ増えたわね)
仮面の奥、セリナはうっすらと笑う。
助けられる“演技”をしながら、
誰よりも深く、真実へと手を伸ばしていた。
【堕ちた指示者】
ネザリア城――
静まり返った玉座の間に、突如として魔力の揺らぎが走った。
中央の転移陣に、蒼白い光が瞬き、瞬間――ずしりと、重たい音。
「……あらら〜。届いたっすね、これ」
じゅぴが情報卓の背後からひょいと顔を出す。
転移陣の中心には、ひとりの男が倒れていた。魔力拘束の鎖に巻かれ、身動き一つ取れない。
呼吸はある。意識は――まだ戻っていない。
「対象は、“あちらの拠点”の幹部クラスで間違いないっす。セリナが魔力印と反応式転送使って、そっち優先で送ってきたってことは……かなり重要な情報、抱えてるはずっすね」
せつなは玉座に座ったまま、ゆるりと視線を下ろす。
「……セリナらしい判断だ。混乱の中でも“成果”を持ち帰るか」
「それが“せつなの影”っすから♡」
せつなの指がひとつ、宙に浮かぶ魔導ラインをなぞる。
すると、男の意識が魔力刺激で強制的に覚醒した。
「……っ、く……ここは……」
うつ伏せから無理やり顔を上げた男の瞳が、広間の圧倒的な重圧に怯えをにじませる。
「ど、どこだ……おれは、どこに……っ」
「ようこそ。“ここ”が、最後の場所だよ?」
じゅぴが微笑む。だが、その笑みには一切の優しさがない。
「状況はすでに把握済みっす。あなたは“拉致・選別・再利用”を繰り返していた地下拠点の指揮官クラス。セリナの観察によると、“魔力反応選別”ってキーワードが引っかかったらしいっすけど……何を基準にしてるのか、教えてもらえます?」
男の顔が引きつる。
そしてようやく、自分が“ただの尋問”ではない場所にいると理解した。
「……お前ら、どこから……誰だ……っ」
じゅぴが、くすりと口元を吊り上げる。
「ねぇ、“ログアウトできない世界”って、聞いたことあるっす?」
「……な、なん……!? ログ……アウト……? なにを……言って――」
「ふふっ。“ここが現実”だと思ってたんでしょ? かわいいっすねぇ」
じゅぴの声音は、あくまで甘く――それでいて、冷酷だった。
「あなたが今いるのは、かつてゲームだった世界の成れの果て。“我らの玉座”っすよ?
……あなたたちが“管理している”なんて思ってる、その幻想。全部、終わってるんすよ」
「……なにを……お前たち、一体何を言って……!」
男は混乱しきったまま、言葉を探すように視線を泳がせていた。
その姿を見下ろしながら、せつなが静かに立ち上がる。
「……知る必要のあることは、俺が決める。
お前はただ、“知っていることを喋るだけ”でいい」
その言葉に――“何か”を察したかのように、男の顔から血の気が引いていった。
ついにセリナの“潜入任務”が、彼女なりの成果とともに一区切りを迎えました。
混乱の中でも短剣を突き立て、確保対象をネザリア城へ転送――まさに“せつなの影”としての本領発揮でしたね。




