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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
24/159

【影の爪痕/堕ちた指示者】

☆☆総PV700突破☆☆

☆☆総ユニークアクセス300突破☆☆


読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます!

こうしてたくさんの方に物語が届いていることが、何よりの励みになっています!

もし「続きも読んでみようかな」と思っていただけたら、

ブックマークしてもらえると、とても嬉しいです!(笑)

これからも物語はどんどん進んでいきますので、どうぞよろしくお願いします!

【影の爪痕】

混乱の叫びと衝撃の波が、地下区画を揺らしていた。


壁が砕け、警備が散り、救助に駆けつけた冒険者たちの怒号がこだまする。


セリナは石床にうずくまったまま、目だけを細める。


(……この騒ぎの中なら、“一手”くらい、刺せる)


静かに立ち上がる。

仮面は怯えた少女のまま――だが、その身体から滲む空気が、ほんの一瞬だけ変わった。


気配、ゼロ。

足音、ゼロ。

視界から抜ける“感覚の影”。


セリナはまるで闇そのもののように石室を出て、走り去る一人の男に目を留めた。


(……肩の印、“指示者クラス”ね。反応強度、周囲への指示速度、装備の質。間違いない)


「――ちょっとだけ、付き合ってもらうわ」


音もなく接近。

刹那の動きで喉元へ短剣を当て、魔力の麻痺針を突き刺す。

男は悲鳴を上げる間もなく、くぐもった呼吸とともに崩れ落ちた。


(よし、“せつな様に渡すプレゼント”は、確保)


すぐさま、指先をかすかに浮かせる。


足元に淡く広がるのは、ネザリア城・転移座標印。

魔力コード《夜影指定陣・零式》――影専用、極秘の“送り”転移。


瞬間、光も声も立てず、男の身体が宙に溶けて消えた。


(……送信完了)


その瞬間にはもう――セリナの姿は、元の石室へと戻っていた。


救助に来た冒険者の男が扉を蹴破り、息を切らして叫ぶ。


「おいっ! ここに生存者――! 仮面の少女がいるぞ!!」


セリナは、その声に“怯えたように”顔を上げる。


「た、たすけ……て……っ」


ぐったりと倒れ込むその動作には、一点の隙もなかった。


誰も、彼女がわずか数秒前にこの場所を離れていたことに――気づけなかった。


それは、“この世界”の誰一人として到達していないステータス、

そして、せつなの“影”として仕込まれた存在だけが成せる、真の潜入技術。


(ふふ……また、手がかりがひとつ増えたわね)


仮面の奥、セリナはうっすらと笑う。


助けられる“演技”をしながら、

誰よりも深く、真実へと手を伸ばしていた。




【堕ちた指示者】

ネザリア城――

静まり返った玉座の間に、突如として魔力の揺らぎが走った。


中央の転移陣に、蒼白い光が瞬き、瞬間――ずしりと、重たい音。


「……あらら〜。届いたっすね、これ」


じゅぴが情報卓の背後からひょいと顔を出す。

転移陣の中心には、ひとりの男が倒れていた。魔力拘束の鎖に巻かれ、身動き一つ取れない。


呼吸はある。意識は――まだ戻っていない。


「対象は、“あちらの拠点”の幹部クラスで間違いないっす。セリナが魔力印と反応式転送使って、そっち優先で送ってきたってことは……かなり重要な情報、抱えてるはずっすね」


せつなは玉座に座ったまま、ゆるりと視線を下ろす。


「……セリナらしい判断だ。混乱の中でも“成果”を持ち帰るか」


「それが“せつなの影”っすから♡」


せつなの指がひとつ、宙に浮かぶ魔導ラインをなぞる。

すると、男の意識が魔力刺激で強制的に覚醒した。


「……っ、く……ここは……」


うつ伏せから無理やり顔を上げた男の瞳が、広間の圧倒的な重圧に怯えをにじませる。


「ど、どこだ……おれは、どこに……っ」


「ようこそ。“ここ”が、最後の場所だよ?」


じゅぴが微笑む。だが、その笑みには一切の優しさがない。


「状況はすでに把握済みっす。あなたは“拉致・選別・再利用”を繰り返していた地下拠点の指揮官クラス。セリナの観察によると、“魔力反応選別”ってキーワードが引っかかったらしいっすけど……何を基準にしてるのか、教えてもらえます?」


男の顔が引きつる。

そしてようやく、自分が“ただの尋問”ではない場所にいると理解した。


「……お前ら、どこから……誰だ……っ」


じゅぴが、くすりと口元を吊り上げる。


「ねぇ、“ログアウトできない世界”って、聞いたことあるっす?」


「……な、なん……!? ログ……アウト……? なにを……言って――」


「ふふっ。“ここが現実”だと思ってたんでしょ? かわいいっすねぇ」


じゅぴの声音は、あくまで甘く――それでいて、冷酷だった。


「あなたが今いるのは、かつてゲームだった世界の成れの果て。“我らの玉座”っすよ?

……あなたたちが“管理している”なんて思ってる、その幻想。全部、終わってるんすよ」


「……なにを……お前たち、一体何を言って……!」


男は混乱しきったまま、言葉を探すように視線を泳がせていた。


その姿を見下ろしながら、せつなが静かに立ち上がる。


「……知る必要のあることは、俺が決める。

お前はただ、“知っていることを喋るだけ”でいい」


その言葉に――“何か”を察したかのように、男の顔から血の気が引いていった。

ついにセリナの“潜入任務”が、彼女なりの成果とともに一区切りを迎えました。

混乱の中でも短剣を突き立て、確保対象をネザリア城へ転送――まさに“せつなの影”としての本領発揮でしたね。

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