第一章:黒き城【覚醒の城塞】
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「――索敵範囲、五キロ圏内に拡張完了っす」
じゅぴの声と同時に、玉座の間の天井に展開された透明な魔法陣が淡く脈動を始めた。
空中に浮かぶ幾何学模様が心臓の鼓動のように波打ち、周囲の空間をゆっくりとスキャンしていく。
「反応、なし。五キロ圏内、生体反応ゼロっすね」
「……荒野、か」
せつなはゆっくりと玉座から立ち上がり、深紅のマントを翻す。
窓の外に広がるのは、果てしなく続く茶褐色の大地――文明の気配など一切なかった。
「じゅぴ、索敵範囲を十キロに拡張。警戒レベルはそのまま維持だ」
「了解っす! 第三層展開、ブースト……フルアクセス!」
再び空間が震え、複数の魔法陣が重なり合う。
今度は遠方の地形が詳細に浮かび上がり、周囲の広域マップが淡く描き出されていく。
「……発見っす。西南方向、約十キロ先に市街地らしき構造物群を確認。規模は中型、城壁あり。この世界の拠点都市っぽいっすね」
せつなは小さく頷き、女幹部たちを再び玉座の間へと招集する。
この城に配置されたNPCたちは、リアルマネーを惜しみなく注ぎ込んで強化されたユニットばかり。
トップランカーには及ばずとも、上位プレイヤーと正面から戦える性能を持っていた。
その中には――メイドでさえ、強力な戦闘能力を秘めていた。
「集まってくれて感謝する。この世界の強さは未知数だ。君たちは最大警戒状態で城を守っていてくれ。俺とじゅぴで都市の偵察に向かう。完全武装で出発するぞ」
玉座の間にどよめきはない。
ただ、一糸乱れぬ跪拝の中から、一人の少女が静かに歩み出る。
「……せつな、じゅぴ。装備、持ってきたよ」
くぐもったような囁き声。
しかしその空気には、他の誰とも違う“異質さ”があった。
彼女の名は――リィナ=シュヴァルツ。
せつなに仕える専属メイドであり、護衛でもある存在。
漆黒のメイド服を揺らしながら近づく姿は、まるで刃を忍ばせた影のように静かだった。
「じゅぴに似合うと思って……ちょっと、えっちだけど」
彼女が差し出したのは、禍々しくも美しい黒のゴスロリ装束。
手の動きには一切の無駄がなく――それは“戦い慣れた者”の所作だった。
せつなの脳裏に、ふと記憶がよみがえる。
(リィナか……こんなキャラになってたんだな)
彼女は元々、せつなが護衛用にカスタムしたアサシン系NPC。
短剣、毒、ワイヤー、闇属性スキル――すべてが暗殺に特化された構成だった。
しかも、リアルマネーを湯水のように注ぎ込み、性能から外見、AIの性格まですべてをこだわり抜いて作り上げたキャラ。
(あの頃、じゅぴと延々試してたな……。「ここは出血特化で」「いや、毒スタック最大の方がロマンあるっす!」って……)
そして今、彼女は“自我”を持ち、せつなに忠誠を捧げて目の前に立っている。
せつなは何も言わず、ただ静かに頷いた。
「ありがとっす……え、リィナって……あの? なんか雰囲気ちょっと……こわ……」
じゅぴがぽそりと漏らすと、リィナはそっと視線を向けて微笑む。
「せつなと並ぶつもりなら、ちゃんと強くならないと……ねぇ?」
その笑みは優しく、甘やかで――けれど、どこか鋭かった。
紅い瞳がじゅぴを射抜いた瞬間、背筋にぞわりとした緊張が走った。
第1話、お読みいただきありがとうございます!
いよいよ探索開始、個性強めなキャラクターも少しずつ登場してきました。
これから徐々に物語が広がっていきますので、楽しみにしていただけると嬉しいです!
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